意外と知らないコンクリートや木材の強度について

投稿日:2022年09月13日

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古くから建築資材として使用されているコンクリートや木材の強度についてどこまで知っていますでしょうか?

普段身の回りにあるにも関わらず、土木建築を専攻としている方やその職種で働いている方で無い限り、その強度を知らない人がほどんどでは無いでしょうか。

機械専攻している著者である私も学生の頃は、金属以外の強度計算はほとんど意識したことがありませんでした。

しかし、木造やコンクリート造の建物に機器を据え付ける際には、この木材とコンクリートの強度は意識しなければいけない場面が意外と多いのです。現場で機器を据え付ける仕事をしている人には、避けては通れない知識となります。

そんなコンクリートや木材の知識をこの記事では紹介します。

コンクリートとは何か?

まず、コンクリートとは何かについて説明します。コンクリートは、セメントに水を加え、かき混ぜながら石や砂を混ぜて作ったモノです。よく勘違いしている人がいますが、コンクリートとセメントは別のモノです。

工事現場で混ぜて使う場合は、下写真のようなコンクリートミキサーを使用して混ぜて作ります。大量に使用する場合は、ミキサー車を利用してすでに調合済みのコンクリートを使用することになります。

コンクリートミキサー

コンクリートには複数の種類がある?

コンクリートの種類は、混ぜるセメントの種類によって異なります。そのセメントの種類について紹介します。

セメント種類名称 性質 用途
普通ポルトランドセメント 灰緑色、焼成した石灰に何も混入していないもの 一般的なコンクリート工事で使用される。最も流通量が多いセメント。
早強ポルトランドセメント 短期強度が高く、寒冷地での強度低下が抑えられるもの 道路工事、短期工事で使用される。
高炉セメント 強度はゆっくりと現れ、化学抵抗や耐摩耗性が高い 下水や海水に接する部分に使用される。
シリカセメント 乾燥収縮が大きい 市場にはほとんど出回っていない。

コンクリートの製法

コンクリートの製法は以下の反応を伴いながら硬化していきます。

➀石灰石を焼いて石灰としたセメント CaO に水を加えると、消石灰 Ca(OH)2 に変化する。

➁さらに、空気中の二酸化炭素と反応して炭酸カルシウム CaCO3 に変化して硬化する。

③硬化する前に砂や石を混ぜることで強度や耐久性を向上させ、コンクリートを打設しやすさを調整する。

砂や砂利を混ぜる比率は、下の表の調合で行うのが一般的です。よく使われるのが、セメント:砂:砂利の比率が1:2:4となる配合が一般的であると考えられおり、用途に合わせて比率を調整して使用されています。

又、コンクリートに含まれる水分量も日本建築学会のJASS5※によると、コンクリート1m3に含まれる水分量を185kg/m3以下として決められています。材料費を安く済ませるために水分を多くすると、コンクリートを打設した後の乾燥収縮による割れが発生する原因となるため、コンクリートの品質を大きく落としてしまうことになります。

※コンクリートに関しては、「建築工事標準仕様書・同解説JASS5 鉄筋コンクリート工事」に規定されています。

表.コンクリートの配合※比率は容積比を表す

セメント : 砂 : 砂利 特徴・用途
1 : 1 : 2 圧縮強さ・水密性(水漏れの無い施工が可能)が大きい。
1 : 1 : 3 前者より少し圧縮強さを落としたもの。
1 : 2 : 4 標準的な配合。鉄筋コンクリートの場合に一般的に使用される。
1 : 2 : 5 機械基礎や橋脚のほか床部に使用される。
1 : 3 : 6 大きな荷重がかからない場所に使用される。
1 : 4 : 8 自重のみを受ける箇所に使用される。

コンクリートは完全に硬化し強度が出るまでに時間がかかるのですが、一般的に表面硬化に24時間掛かり、本来のコンクリート強度が出るには28日と言われています。その為、この28日を基準としてコンクリートの設計基準強度が得られると考えられています。

以下の表にセメント硬化時間で圧縮強さが変化しているのが分かるかと思います。

表.セメントの硬化時間と圧縮強さについて(JIS R 5210~5213)

セメント種類 圧縮強さN/mm2
1日 3日 7日 28日(Fc値)
普通ポルトランドセメント 12.5以上 22.5以上 42.5以上
早強ポルトランドセメント 10以上 20以上 32.5以上 47.5以上
高炉セメント 10以上 17.5以上 42.5以上
シリカセメント 10以上 17.5以上 37.5以上

コンクリートの許容応力はこの28日を基準としたコンクリートの設計基準強度Fcの値を以下の2つの式に当てはめて、値が小さい方を許容圧縮応力としています。

【式1】 許容圧縮応力=設計基準強度Fc/30

【式2】 許容圧縮応力=0.49+(設計基準強度Fc/100)

※コンクリートには引張応力には耐えられないと考える為、引張応力は記載していません。代わりに、付着強さと呼ばれる応力があります。

表.コンクリートの許容応力度

区別 長期荷重 短期荷重
圧縮強さN/mm2 せん断強さN/mm2
普通コンクリート 6~9 圧縮の1/10 長期の2倍
軽量コンクリート 6~9 圧縮の1/10 長期の2倍

(余談)コンクリートの歴史について軽く触れる

コンクリートの歴史は以外にもかなり古く、9000年前の新石器時代にイスラエルガラリア地方のイフタフ遺跡が最古とされています。その他、2000年以上前の古代ローマやエジプトのピラミッドの石の接合部に使われており、世界ではかなり古くから使用されていました。

一方日本では、建築物は木造が主体なのでコンクリートの登場はかなり現代に近く、1903年明治時代に建設された琵琶湖の水を京都に流す水路の橋が最初のコンクリート造の橋と言われています。

その頃は、建設現場でセメントと水、砂や石を混ぜて作ったコンクリートを建設資材として使用していました。その後1950年代に、生コンと呼ばれるコンクリートが、直接工場から出荷されるようになったおかげで、日本でも建築物にコンクリート造が取り入れられるようになったのです。

日本最古のコンクリート造の建造物である橋「琵琶湖第一疎水の橋」

引用元:https://kyotopi.jp/articles/Kduof

生コンのコンクリートミキサー車が登場し、コンクリート出荷が可能となった

木材は種類によって強度が異なる

続いては木材についてです。

天然の木材は、当然ですが性質が均一では無く、節(ふし)や割れ、そり等の欠陥があるため、一概に統一した機械強度が無いと思われがちですが、そういった欠陥が無い部分の木材の強さも建築基準法で決まっています。その値は木材の種類によって異なります。

さらに、木材の見た目や使用用途によってその木材の強度が細かく分かれています

日本で頻繁に使用されていますスギ、ヒノキ、エゾマツの3つを例にその強度を以下に示します。

表.木材の強度例(無垢の木材に対しての値)

樹木種類 気乾 比重 目視等級区分 圧縮強さFc N/mm2 引張強さFt N/mm2 せん断強さFs N/mm2 曲げ強さFb N/mm2
スギ 0.39 甲種 構造材 1級 21.6 16.2 1.8 27
2級 20.4 15.6 25.8
3級 18 13.8 22.2
乙種 構造材 1級 21.6 13.2 21.6
2級 20.4 12.6 20.4
3級 18. 10.8 18
ヒノキ 0.46 甲種 構造材 1級 30.6 22.8 2.1 38.4
2級 27 20.4 34.3
3級 23.4 17.4 28.8
乙種 構造材 1級 30.6 18.6 30.6
2級 27 16.2 27
3級 23.4 13.8 23.4
エゾマツ 0.41 甲種 構造材 1級 27 20.4 1.8 34.2
2級 22.8 17.4 28.2
3級 13.8 10.8 17.4
乙種 構造材 1級 27 16.2 27
2級 22.8 15.6 22.8
3級 13.8 5.4 9

※甲種構造材や1級から3級までを記載しています。これは、日本農林規格での目視等級区分による用途と木材の状態に対して区分分けをして用いることが決まっています。

木材の許容応力度の計算方法

木材の許容応力度の計算は、木材の強度(上表の値)を用いて、以下の計算で算出することになっています。

木材は水分による湿潤状態になると強度が低下しますので、使用環境によっては、許容応力度の70%程度とする場合もあります。

【式】許容圧縮応力=1.1×圧縮強さFc÷3

許容引張応力=1.1×引張強さFt÷3

許容曲げ応力=1.1×曲げ強さFb÷3

許容せん断応力=1.1×せん断強さFs÷3

まとめ

機械設計で用いる金属の材料強度と、コンクリートや木材の強度に関する考え方の違いについて理解できましたでしょうか?

コンクリートは強度出るまでの期間が必要であり、その調合によって強度と性質が異なる一方で、木材はその使用条件や木材の品質(見た目)でその強度が変わる為、強度がブレることを想定した設計を行うことが必要となります。

手配した材料の強度がばらつくことも想定しておかなければいけませんね。

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