【簡単にできる!】ボルトサイズの決め方、強度計算のやり方を紹介

「この部品のボルトサイズはどれくらいが適正なのだろう?
「ボルトサイズを決めるには何を根拠にしたらいい?安全率の目安は?
「ボルトの強度計算のやり方を知りたい

今回は、このような悩みに答えていきます。ボルトサイズを決める際、何を目安にしたらいいか分からなかったり、強度計算に苦手意識があったりする方もいるかもしれません。

そこで本コラムでは、ボルトサイズを決めるために必要な前提知識や、実際の強度計算のやり方を解説します。紹介するのは簡単にできる計算方法なので、設計初心者の方もぜひ参考にしてみてください。

1. 【必要な情報は2つ】ボルトサイズの決め方


ボルトサイズは、加わる力に対してボルトがその機能を果たせなくなる限界値に、安全率を考慮して決定します。ここでは、ボルトサイズを決めるために必要な2つの情報、「安全率」「強度の限界値」について解説します。

1-1. アンウィンの安全率を用いる

強度計算においては、実際にボルトにかかる荷重を大きめに見積もる必要があります。つまり、実際の荷重に安全率を乗じるわけですが、その数値としてはアンウィン(Unwin)によって提唱された値を用いるといいでしょう(下記の表を参照)。

厳密には、多くの条件を考慮して詳細な計算を行います。しかし少し過剰な設計が許されたり、受ける荷重の大きさが正確に分からなかったりする場合は、この安全率を用いて簡易的に選定するのをおすすめします。

応力集中係数などさまざまな因子を考慮する必要がなくなり、手間をかけずに強度計算を行えるようになるからです。

アンウィンの安全率

静荷重 動荷重
片振り繰返し荷重 両振り繰返し荷重 衝撃・変動荷重
3 5 8 12

※上表は材料が鋼の場合の数値を示す。

1-2. 強度の限界値は降伏点にする

ボルトサイズを決める際、アンウィンの安全率を乗じた荷重が、強度の限界値を超えないようにしなければいけません。強度の限界値としては、引張強さや降伏点が挙げられますが、後者を選ぶようにしましょう。

アンウィンの安全率は経験的に決められた推定値のため、理論的な根拠に乏しいという欠点があります。そのためアンウィンの安全率を使うときは、降伏点を選ぶほうが安全です。

下記の表は、ボルトのサイズ・強度区分ごとに降伏荷重をまとめたものです。強度計算の際に活用してください。

※強度計算を簡単にするために、降伏点(単位:kN/mm2)ではなく、降伏荷重(単位:kN)の数値をのせています。

並目ボルトの降伏荷重(単位 kN)

ねじの呼び 有効断面積(mm^2) 強度区分
4.6 6.8 8.8 10.9 12.9
M4 8.78 2.1 4.2 5.6 8.3 9.7
M5 14.2 3.4 6.8 9.1 13.3 15.6
M6 20.1 4.8 9.6 12.9 18.9 22
M8 36.6 8.8 17.6 23 34 40
M10 58.0 13.9 28 37 55 64
M12 84.3 20 40 54 79 93
M16 157 38 75 100 148 173
M20 245 59 118 162 230 270

表の参考文献:『機械設計: 機械の要素とシステムの設計(第2版)』オーム社出版 P78 表3.10

2. 【計算例を紹介】ボルトの強度計算のやり方

これまで説明してきた内容を押さえた上で、実際のボルトにおける強度計算のやり方を解説します。

今回の計算条件は下図のように、側面へ2本のボルトで取り付けた部品の先端に、500Nの静荷重がかかった場合を想定します。

基本的な計算手順としては、下記のような流れで行うといいでしょう。

手順①:ボルトにかかる荷重を確認する
手順②:荷重に安全率を乗じて降伏荷重と比較する

2-1. 手順①:ボルトにかかる荷重を確認する

まずやるべきは、ボルトにかかる荷重を確認することです。ねじ部にかかる荷重の種類や大きさを明らかにしないと、ボルトサイズを決められないからです。

今回の条件であれば、ボルトにかかる荷重はモーメント計算によって求めます。モーメント計算のポイントは、部品に力が加わったときに動かない点を見ることです。

上図のように部品の先端に垂直荷重F1がかかると、A点を支点にして部品が回転するように動き、ボルトを引き抜く力F2が働きます。

この引き抜く力に対して2本のボルトは抵抗するため、A点を中心にしたモーメントのつり合いを考えると、下記の式が成り立ちます。

F1×120=F2×30×2

この式を整理すると、ボルト1本にかかる引張力F2は、

F2=(500×120)/(30×2)=1000N=1kN

と算出できました。

2-2. 手順②:荷重に安全率を乗じて降伏荷重と比較する

今回は静荷重のため、安全率は3になります。ボルトにかかる荷重に安全率を乗じると、

F2×3=3kN

となり、降伏荷重の表から、
適切なサイズのボルトは「強度区分4.6のM5ボルト」であると分かりました。

以上がボルトの強度計算のやり方になります。

まとめ

今回はボルトサイズの決めたについて解説しました。紹介した安全率や強度の考え方によって、安全に効率の良い強度計算ができるようになります。

今回紹介した内容が、ご参考になりましたら幸いです。

なお、強度設計に苦手意識があったり、もっと学びたかったりする方には、MONO塾の強度設計入門講座がおすすめです。実務に役立つ強度設計の知識を、ムダなく効率的に学習して頂けます。

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