強度設計の経験を短縮する方法

投稿日:2021年12月13日

こんにちは、MONO塾講師の赤尾です。

さて、これまで
複数回にわたってお届けしてきました
このコラムですが、本日が最後となりました。

本日は、
強度設計の経験を短縮する方法
というお話をさせて頂きます。

あなたは、これまでに
設計者のキャリアについて考えたことはあるでしょうか。

一般に、設計者というのは
計算経験を積み重ねていくことで、
できることが増え、任される仕事が増えていきます。

強度計算でいえば、
一人前の設計者になるためには、様々なケースを経験し、
強度計算の経験を積む必要があるわけです。

もちろん、経験を積む過程で
計算の仕方がどうしてもわからない
という時もあります。

そのような場合は、先輩設計者に相談し解決していきます。

以前のコラムでお伝えしたとおり、私も、会社に入りたてのころは
わからないことがわからない」というような状態でした。

それでも、新人の頃から「航空機構造強度の計算」を任されていましたので、
本当に計算が正しいかどうか、心配でたまらなかったのを思い出します。

私が入社した当時は、
人手不足ということもあり、開発設計の技術者は大変忙しく、
気軽に先輩に聞くこともなかなかできない、という状況でした。

ですので、できるだけ仕事の時間以外を使って、
先輩にわからないところを聞く。

また、書店や図書館へ通い、
仕事に役立ちそうな本を探し回る、ということをしていました。

今であれば、検索で調べるということもできますが、
当時は、まだインターネットが世に出たばかりで、
本屋や図書館のほうが情報が多かったように思います。

そして、自分なりに調べた情報をもって、
業務の合間をぬって、先輩へ質問しにいきます。

どうしてこのような下準備をするの?
と、疑問に思われる方もいるかもしれないですね。

それは、下準備せずにただ聞きにいくだけでは、
先輩からのアドバイスを正しく理解することができないからです。

聞いたことがない「真新しい」用語が入っている場合、
脳がフリーズしてしまい、肝心なことを聞き漏らし、
何回も何回も同じことを聞くことになってしまう、ということになってしまいます。

そうすると、先輩からは
「こんなことも知らないの?大学で何を勉強してきたの?」
と、心がズタズタになる一言が返ってくるわけです。

このようなことを何回と繰り返したことでしょうか。

このようなことにならないためにも、
先輩技術者に聞くときは、返答に耳慣れない技術用語が出てきても、
対応できるよう事前準備をします。

時間をかけてでも、
本屋さんや図書館で事前準備をしておくのです。

以上のようにして、
私は、強度計算や設計スキルを身につけてきた経緯があります。

しかし今は、インターネットやスマホが普及して、
技術用語などの情報を調べるスピードは格段に上がっています。

休日を使って仕事の下準備に活用していた
20数年前を思うと、情報の取りやすさに雲泥の違いがあります。

20年前の私と同じように、
アナログチックな方法で調べてもいいですが、
時間がかかりすぎますので、あまりお勧めはできません。

今ではあれば、
もっと現代にマッチした方法があると思っています。

例えば、
過去に使用実績があるものについては、
計算式のテンプレートやプログラムが存在しますね。

ですので、まずはこちらを活用することで、
実践ではスピードアップにつながります。

中身の計算式についての理解も重要ですが、
まずはテンプレートやプログラムを使ってみて
慣れていくことが大切です

その上で、あらためてテンプレートの中身を見て
計算式で分からないことがあれば、社内標準やマニュアル、
ネットの技術情報を検索し理解していきます。

これでもきっとわからないことが、たくさん出てきます。
その時は、先輩や同僚に聞いてみるといいでしょう。

今は、昔に比べて
デジタル化やプログラム化された信頼性の高いテンプレートが活用できます。

ですので、私のように
わからないことがわからない」という状態になる、
ということにはならないはずです。

過去の技術者が残した遺産である
プログラムやテンプレートは、ある程度の計算過程を理解するところまで導いてくれるからです。

そして、プログラムを使い、流れに任せて理解を進めると
「わからないところ」と「わかるところ」が判別しやすくなるメリットがあります。

▼これからの時代の仕事のやり方

これからの時代、生き残って行くために最も重要なことは、
変化に柔軟に対応できることだと思います。

1つのことを時間をかけて身につけることは大切です。

ですが、かけた時間以上に成果を出すこと
もっと業務の実践においては重要な時代になってきました。

今あるものを上手に活用し、
過去の技術者が残した考え方をプログラムから読み取り、
自分の技術にしていくスキルがとても重要になります。

そして、さらにプログラミングやテンプレートを進化させるのです。
技術の進化に合わせて、技術教育も進化する必要があると思います。

私は、時代にマッチした技術教育を学ぶことで、
より新しい、信頼性が高い素晴らしい技術が、
世の中に生まれてくると思っています。

MONOWEBでも、

  • 断面特性テンプレート
  • 自動梁計算ツール、

など便利なツールを無料公開していますので、
まずばこちらを活用してみるのも良いでしょう。

さて、本日まで複数回にわかってコラムを執筆してきました。

楽しくお読みいただけてましたら、大変嬉しく思います。

それでは、今後皆様が設計者として
大きく飛躍されることを心より願っております。

 

- このコラムを書いた専門家 -

赤尾 信広

S45年4月16日生 機械工学専攻修了
中型旅客機、国産ヘリコプタ構造解析
スペースジェット(MRJ)主翼・前縁・SLAT構造解析
専用機開発設計等などを経験
現在、もの塾講師 機械設計技術アドバイザー