生産設備で使われる樹脂(プラスチック)材料とは? 種類や特徴を解説

投稿日:2022年02月10日

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プラスチックとも呼ばれる樹脂材料は、軽さや着色の自由度などから幅広く使用されています。

そんな樹脂材料ですが、今回のコラムでは生産設備で使われがちな種類をピックアップして解説します。

本コラムを読めば、適切な樹脂材料の選定知識が身につきます。ぜひ参考にしてみてください。

1. 樹脂材料とは?

樹脂材料は、軽量性や透明性が求められるときに使われます。

鉄系材料の比重が7.9程度なのに対して、樹脂材料は1.0程度しかありません。また透明にしたり着色したりできる「自由度の高さ」や、ワークと接触しても傷つけにくい「材料自体の軟らかさ」もメリットです。

このような特徴があるため、生産設備では装置のカバーやワークの治具などに用いられています

他の材料と同じように、樹脂にもさまざまな種類があるので、用途に応じて使い分けてください。

2. 生産設備で使われる樹脂材料の種類

樹脂材料は大きく分けて、以下の3種類に分類されます。

  • 汎用プラスチック
  • エンジニアリングプラスチック
  • スーパーエンジニアリングプラスチック

2-1. 汎用プラスチック

汎用プラスチックは最も使用量が多い樹脂材料で、生活用品などに使われています。機械部品として使われるのは、強度や耐熱性があまり必要とされない箇所です。

一般に汎用プラスチックは、耐熱温度が100℃未満の樹脂になります。

生産設備でよく使われる材料は以下の通り。

  • ポリエチレンテレフタレート(PET)
  • ポリメチルメタアクリレート(PMMA※)
  • ポリ塩化ビニル(PVC)

※アクリルのこと

2-2. エンジニアリングプラスチック

汎用プラスチックでは強度や耐熱性を満たせない場合に使うのが、エンジニアリングプラスチックです。略してエンプラと呼ばれます。

エンプラの定義は明確に決まっていませんが、一般に約100℃以上の耐熱性が目安になります。

生産設備でよく使われるエンプラは以下の通り。

  • ポリカーボネート(PC)
  • ポリアミド(PA、主にMCナイロン)
  • ポリアセタール(POM)

2-3. スーパーエンジニアリングプラスチック

エンプラでも機能を満たせない場合に使うのが、スーパーエンジニアリングプラスチック。略してスーパーエンプラです。

エンプラと同じように明確な定義はありませんが、150℃より高い耐熱性の材料を指すのが一般的です。

生産設備で使うのは、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などが挙げられます。

3. 設備のカバーに使われる樹脂材料

出典: ミスミ

ここでは、主に生産設備の装置カバーに使われる樹脂材料を紹介します。紹介する材料はどれも透明性に優れており、装置内部の目視確認が容易なことから多用されています。

3-1. 基本となるポリエチレンテレフタレート(PET)

ポリエチレンテレフタレートは一般にPET(ペット)と呼ばれる材料で、ペットボトルにも使われています。性能やコストのバランスがいいため、装置カバーの材質を決める際の基本にするといいでしょう

主な特徴は以下の通りです。

  • コストが安い
  • 透明性に優れる
  • 比較的衝撃に強い
  • 連続使用温度は低い(~60℃程度)

3-2. 見栄えに優れたアクリル樹脂(PMMA)

アクリル樹脂の一番の特徴は、ガラス以上の透明度の高さです。装置カバーの見栄えを重視するのであれば、アクリル樹脂を使うといいでしょう。

主な特徴は以下の通り。

  • 透明性が抜群に優れる
  • 硬度が高いため傷つきにくい
  • コストが安い(PETよりは少し高い)
  • 耐候性に優れる
  • 硬度が高いため割れやすい
  • 連続使用温度は低い(~70℃程度)

3-3. 耐薬品性に優れるポリ塩化ビニル(PVC)

ポリ塩化ビニル(PVC)は一般に塩ビと呼ばれ、耐薬品性に優れた材料です。ほとんどの酸・アルカリ類に対して強く、水回りでもよく使われています

主な特徴は以下の通り。

  • 耐薬品性に優れる
  • コストが安い
  • 難燃性に優れる
  • 耐候性に優れる
  • 他の種類より透明性は劣る(内部の目視確認には十分なレベル)
  • 連続使用温度は低い(~60℃程度)

3-4. 耐熱性・耐衝撃性に優れるポリカーボネート(PC)

ポリカーボネートはエンプラの一種であり、略してポリカなどとも呼ばれます。他の透明樹脂プレートに比べて耐熱性が高く、特に耐衝撃性に関しては樹脂材料の中でもトップクラスです。

そのため高温環境だったり、ワークが外に飛び出す危険がある場合の安全カバーとして用いられたりします

主な特徴は以下の通り。

  • 連続使用温度が高い(~120℃程度)
  • 自己消火性がある
  • 耐衝撃性に優れる
  • 透明性に優れる
  • 耐候性に優れる
  • コストが高い(目安としてPETの2倍くらい)

4. 設備の機械部品に使われる樹脂材料

ここでは、主に生産設備の機械部品(治具や搬送用のパレットなど)で使われる樹脂材料を紹介します。

4-1. 基本となるMCナイロン

出典: プラスチック切削加工.com

MCナイロンは、ポリアミド(PA)すなわちナイロン材の一種であり、「三菱ケミカルアドバンスドマテリアルズ株式会社」の商標登録名になります。

バランスのとれた性能を持つ汎用的なエンプラ材料なので、機械部品に使う樹脂材料の基本になるでしょう

主な特徴は以下の通り。

  • 強度に優れる
  • 耐摩耗性に優れる
  • 各特性を高めたグレード品が揃う(剛性・耐熱性、対候性、摺動性など)
  • 連続使用温度が高い(~120℃程度※)
  • 加工性に優れる(後述するPOMよりは劣る)
  • 耐薬品性に優れる(酸には弱い)
  • 寸法精度は劣る(吸水性が高く寸法変化を起こしやすい)

※耐熱グレードなら150℃まで使用可能

4-2. 精度が必要な部品にはポリアセタール(POM)

出典: プラスチック切削加工.com

ポリアセタールはPOM(ポム)とも呼ばれ、MCナイロンと同様によく使われるエンプラ材料です。企業によっては「ジュラコン」や「デルリン」と呼ばれることもあります。

MCナイロンと似た性質を持つため、どちらを使っても問題ないことが多いですが、吸水性に大きな違いがあります。POMは吸水性が低いことから、寸法精度の点でMCナイロンより有利です。

そのため、精度が必要な機械部品にはPOMを使うといいでしょう

主な特徴は以下の通り。

  • 寸法精度に優れる(吸水性が低く寸法変化が小さい)
  • 強度・耐摩耗性に優れる(MCナイロンよりは劣る)
  • 各特性を高めたグレード品が揃う(耐衝撃性、対候性、摺動性など)
  • 加工性に優れる
  • MCナイロンより少しコストが安い
  • 耐薬品性に優れる(酸には弱い) 
  • 連続使用温度が少し低い(~95℃程度)

4-3. さらに耐熱性や耐薬品性が必要な場合はPEEK

出典: 平特精商店

ポリエーテルエーテルケトンすなわちPEEK(ピーク)は、スーパーエンプラの代表的な材料です。

各特性に優れており、特に耐熱性や耐薬品性が樹脂の中でもトップクラスなので、前述したエンプラ材料では対応できない場面で使うといいでしょう。

ただし材料コストが非常に高いので、十分に検討した上で選定してください

主な特徴は以下の通り。

  • 連続使用温度が非常に高い(~250℃程度)
  • 耐薬品性に非常に優れる(酸にも強い)
  • 寸法精度に優れる(吸水性が低く寸法変化が小さい)
  • 強度・耐摩耗性に優れる
  • 加工性に優れる
  • コストが高い(目安としてMCナイロンの10~30倍くらい)

樹脂材料の使い分けまとめ

樹脂材料には装置カバーや機械部品に適した種類があり、使用条件に応じて使い分けるようにしましょう。使い分け方をまとめると、以下のようになります。

今回紹介した内容が、ご参考になりましたら幸いです。

なお、「機械材料について全般的に学習したい!」という方は、MONO塾の機械材料入門講座をおすすめします。実践で役立つ材料選定の手法を身に付けていけます。

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