投稿日:2021年10月16日
産業機械において重要な要素の一つに、回転機械というものがあります。
回転機械とは、別名「軸もの」とも呼ばれており、一本の軸とそれを支える2つの軸受からなる構造体を示します。
軸受とは、回転をなめらかにするため、ハウジングなどに取りつける機械要素の一つで、高速回転機械を扱う上では欠かせない部品です。
ここでは、身近にある回転機械や、共振、危険速度について解説していきます。この記事を読めば、回転機械についての概要を理解することができるでしょう。ぜひ最後まで、ご覧いただければと思います。
身近にある回転機械
前述した通り、回転機械とは、一本の軸と2つの軸受がセットとなる構造体です。
回転機械が使われている例としては、航空機エンジンの軸流コンプレッサや、石油プラントで使われる圧送用の遠心コンプレッサ、医療で利用されているCTスキャン、発電所で使われる発電機や、ミニ四駆のモーター、自動車のターボチャージャーなど様々なものがあります。
回転機械という言葉を聞いたことが無い人もたくさんおられると思いますが、実は身近なところで使われています。
固有振動数と共振
回転機械には、様々な負荷がかかります。その中でも、注意しなけばならないものに振動があります。物体には、外部から力を加えなくても、振動を起こす現象があり、この時の振動を「固有振動」と言います。
例えば、楽器の音のチューニングで使用される音叉というものがあります。
この音叉をたたくと、一定の高さの音がでます。この音叉を2つ用意して、一つの音叉から音が出ている状態で、もう一方の音叉に近づけると、もう一方の音叉も振動し始めます。
このように、物体が持つ固有振動数と同じ振動を外部から与えられると、それ自体も 振動する現象を「共振」と呼びます。この共振という現象が、回転機械にとっては危険な現象となります。
危険速度とは
危険速度とは、別名「危険回転数」とも呼ばれてています。
この危険回転数で回転機械が動いていると時には、共振が発生してしまいます。
ただ振動するだけなら別に問題ないじゃないかと思われる方もいるかもしれませんが、回転機械にとってこれほど厄介な現象はありません。共振を起こすと、大きな振動が起き、軸に対して、多大な負荷がかかります。
また、回転数を上げてくと、軸中部の偏心が大きくなり、遠心力が発生するため、軸の破壊が起こったりもします。
さらに共振により、製品全体に振動が伝わるため、ボルトで締結した箇所の締め付けがゆるんで、構造体が分解してしまうことも考えられます。そして、共振による振動で、強度の弱い部品に負荷がかかり、部品の破壊に繋がることもありえます。
回転機械にとって、危険速度とは、その名の通り、製品が破壊してしまうこともある、危険な回転速度のことを指します。
危険速度を回避する方法
危険速度はどの回転機械にも存在します。前述したとおり、物体には固有振動数が必ずあるからです。では、危険速度に対して、どのように対処すればよいのでしょうか。
それは、危険速度を定格運転速度よりも低くするかあるいは、定格運転速度よりも高く設計することです。
つまり、危険速度が起きる時間を短くすることで、回転機械に掛かる負荷をできるだけ小さくすることがもっともスタンダードな対処方法です。
では、どうすれば危険速度をコントロールできるのでしょうか。
それは軸の形状を調整することで、危険速度をコントロールできます。具体的に言えば、軸を細くするか、あるいは太くするかです。
軸の剛性を調整することで、固有振動数を調整できます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
回転機械が身近な生活に使われていることや、回転機械にとって危険速度に配慮することが大切であることが分かっていただけたと思います。
この記事でのポイントを整理すると以下の通りです
- 回転機械とは、軸と軸受からなる構造体。
- 回転機械は航空機、産業機械、おもちゃなど様々なところで利用されている。
- 危険速度とは、共振が発生してしまう軸の回転速度。
- 危険速度の調整は、軸の太さや長さを変更することで固有振動数を変更することにより可能。
以上の情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。最後までご覧いただき、ありがとうございました。
なお、次のコラムでは「回転軸の危険速度の求め方」を詳しく解説します。詳細は次のコラム(*無料会員限定コンテンツになっています)へお進みください。