歯車・チェーン・ベルトの使い分けや選定法を紹介

投稿日:2021年10月27日

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「機械要素が多すぎてよくわからない!」という設計初心者の方はいないでしょうか?

機械設計において、機械要素の知識は非常に大切です。機械要素の知識がないと、設計ができないといっても過言ではないからです。実際、世の中の多くの機械は、さまざまな機械要素の組み合わせでできています。

しかし機械要素の種類は豊富です。そのため、「どの機械をどういった場合に使えばいいかわからない」という方もいると思います。

そこで本コラムでは、回転運動を伝える機械要素である歯車・チェーン・ベルトに絞って、それぞれの特徴や使い分けを紹介します。まずは少しずつ知識を広げていきましょう。

またそれだけでなく、

「この型式・サイズで強度的に問題ないか不安…」
「強度を満たす型式を選ぶには、何を見ればいいんだろう?」

という疑問のある方に向けて、選定時に押さえるべきポイントもあわせて解説します。ぜひ参考にしてください。

回転運動を伝える機械要素の特徴

回転運動の動力としては、主にモータが使われます。その力を伝える重要な機械要素は、歯車・チェーン・ベルトです。まず、それぞれの特徴について解説していきます。

1. 歯車の特徴

歯車は、歯のかみ合いによって動力を伝える機械要素です。歯車を使った動力伝達には、以下の特徴があります。

 

  • 金属製で強度が高いので、大きな動力を伝達できる
  • 高速運動に適する
  • 動力の伝達効率に優れる
  • 軸間距離が短い場合に有効な伝達手段

 

  • 軸間距離が長いと動力伝達が難しくなる(多くの歯車を使用する必要があるため)
  • 金属製で潤滑が必要なので、メンテナンス性に劣る

 

2. チェーンの特徴

チェーンや後述するベルトは、巻き掛け伝動装置と呼ばれます。チェーンの種類としては、「ローラーチェーン」が代表的で、スプロケットと組み合わせて使います。チェーンを用いた動力伝達には、以下の特徴があります。

 

  • 金属製のため大きな力を伝達できる
  • すべりがないため伝達効率に優れる
  • 軸間距離が長い場合に有効な伝達手段

 

  • 時間が経つと伸びが発生するため、張力の調整機構が必要
  • 精度が必要な回転運動の伝達には向かない
  • 金属製なので潤滑が必要

 

3. タイミングベルトの特徴

ベルトの種類には、「タイミングベルト」「平ベルト」「Vベルト」があります。ここでは、設計現場において使用頻度の高いタイミングベルトについて解説します。タイミングベルトとは、内側に歯の付いたベルトのことです。以下のような特徴があります。

 

  • すべりがなく伝達効率が良い
  • 回転の位置決め精度に優れる
  • 材質が樹脂なので、騒音が少ない
  • 潤滑剤が不要のため、メンテナンス性に優れる

 

  • 材質が樹脂なので、歯車・チェーンに比べて強度が低い

 

各機械要素の使い分け

歯車・チェーン・タイミングベルトを使い分ける際のポイントは、「軸間距離の長さ」「伝達動力の大きさ」です。まとめると以下のようになります。

選定時のポイント

ここでは各機械要素を選定する際に、押さえておくべきポイントを紹介します。紹介するポイントを参考にして、壊れない部品を選んでください。ただし、実務においては感覚的に部品のサイズを決めることも少なくありません。経験に基づいた直感でも選べるよう、感覚もあわせて磨いておくのがオススメです。

1. 歯車の選定ポイント

歯車選定でのポイントは、負荷トルクが「許容曲げ強さ」「許容歯面強さ」を下回る型式を選ぶことです。曲げ強さとは、歯車同士がかみ合っているときに、歯の根元に加わる曲げに対する強度のことです。歯面強さとは、歯面に作用する面圧に対する強度です。

負荷トルクが、以下の表の許容トルクより小さくなる型式を選んでください。負荷トルクがわからない場合は、モータの出力トルクを参考に選定しましょう。

参考:小原歯車工業 平歯車のカタログより抜粋

2. チェーンの選定ポイント

チェーンを選定する際は、許容張力に注意すればOKです。チェーンにかかる負荷張力が、以下のメーカーカタログに記載されている許容張力を超えないようにしましょう。

参考:椿本チエイン ドライブチェーンのカタログより抜粋

3. タイミングベルトの選定ポイント

タイミングベルトを選定する際は、いくつかの式を用いて何度か計算する必要があります。ベルトの形や長さ、正確な軸間距離、ベルト幅などを決めないといけないからです。なので、慣れないうちはわかりにくいかもしれません。

しかしやることはシンプルです。まずは、以下の前提条件を明確にしましょう。

  • 伝達動力 [kW]
  • 小プーリの回転速度 [rpm]
  • 速度比(大小プーリの歯数)
  • おおよその軸間距離 [mm]

 

上記の数値を使って、メーカーカタログに記載されている手順に従えば、タイミングベルトを選定できます。主な手順としては以下の通りです。

以上が、タイミングベルト選定時の基本的な流れになります。実際に選定する際は、メーカーカタログの設計手順などを参考にしましょう。

上記の流れが頭に入っておけば、スムーズに選定作業を行えるはずです。以下に三ツ星ベルトのカタログを添付しますので、参照ください。

参考:タイミング伝動 設計資料 P64-P70

まとめ

今回は、歯車・チェーン・タイミングベルトの特徴や使い分け、選定時のポイントについて解説しました。使い分けのポイントは、「軸間距離の長さ」「伝達動力の大きさ」です。また選定時のポイントをまとめると、以下のようになります。

  • 歯車:負荷トルクが「許容曲げ強さ」と「許容歯面強さ」を下回ること
  • チェーン:負荷張力が許容張力を超えないこと
  • タイミングベルト:前提条件を明確にして、カタログの設計手順通りに行うだけ

歯車・チェーン・タイミングベルトは、使用頻度の高い重要な機械要素です。本コラムを参考に各機械要素の知識を深めて、実務に役立ててもらえたら幸いです。

なお、「機械要素の種類や選定法をしっかり学びたい」という方は、MONO塾の機械要素入門講座がおすすめです。よく使う機械要素を中心に32種類を動画で学習して頂けます。