第1回:【満足度とコスパ最高!】からくり改善の進め方と事例『概要編』

投稿日:2022年03月09日

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1.からくり改善とは

製造現場の作業性、生産性、品質、安全性を改善する手段の1つです。

現状の作業の本質を捉えて改善アイデアを創出することにより、少ない投資金額で最大限の効果を得ることで知られています。

一方、正攻法の現場改善手法としては、IE(Industrial Engineering)という管理手法が有名ですが、こちらはじっくり分析して進めるため、改善スピードが遅くなってしまう欠点があります。

どちらの改善方法にも一長一短がありますので、適材適所で使い分けして取り入れると良いでしょう。

今回のコラムは、からくり改善の概要編になります。

先ずは、からくり改善に適したテーマやからくり改善で実現できること、からくり改善に取り組むことにより得られる成果についてご紹介致します。

2.からくりの歴史

からくりの歴史は、平安時代末期に遡ります。

今昔物語に日本最古の木偶師と呼ばれるあやつり人形師が、神事の行事で操り人形を使ったのが始まりとされています。

その後、16世紀に日本に入ってきた西洋の時計技術から生まれた和時計の技術が組み込まれ、江戸時代にからくり人形の技術が発展しました。

一方、世界的には14世紀の中期から天文学や数学が発展し、多くの機械的な発明がなされました。

この時代には芸術家としても有名なレオナルド・ダ・ヴィンチがいますが、彼が残した建築や軍事利用可能な多くの機構(からくり)が多数有り、発明家としても有名です。

また、18世紀半ばから19世紀にかけてイギリスを始めとして石炭利用による産業(エネルギー)革命が起り、今まで自然エネルギーや人力で行っていた作業が自動化され工業が著しく発展し、また乗り物等も自動化され、画期的に人類の生活が楽になりました。

この際に競うように多くの機械的な発明が成されました。

上記の様にからくりの歴史は、課題を達成するために進化して来ました。

また、日本のからくり技術の歴史は、世界的に見ても古い歴史があることが書物に残っており、江戸末期から昭和初期に掛けて多くの機械的発明が成され、世界に負けず劣らず尽力された先駆者の努力を同じ日本人として誇らしく思うと共に、この技術に興味を持ち、現場改善に役立てていきましょう。

3.改善の必要性

企業は利益を追求し、より安いコストで品質の良い商品をお客様へ提供することが求められます。

他社も当然の如くこの様な努力を続けており、目先の利益に甘んじて努力を持続しないと、競争に勝てなくなります。

このため日常発生する技術課題をしっかりと分析し、改善を進めることが非常に重要になります。

4.改善目標の設定

現場の改善を進める際に、先ずはQCDを意識して計画を立てると良いでしょう。

QCDとは、Quality(品質)、Cost(コスト)、Delivery(納期)の頭文字を並べたものです。

案件によって、QCDのうち、優先的に改善を進めるかを明確にします。

からくり改善は、コストと納期(改善スピード)を優先する場合に適しています。

具体的にからくり改善は既に現物や作業実績があり、作業性を楽にしたい場合、例えば、同じ位置で位置決めする作業の品質改善をする、繰り返し作業を楽に素早く出来る様にする等の改善に適しています。

また、新しい作業においても類似する作業がある場合は、からくり改善を適用可能な場合もありますので、改善に限らず適用が可能です。

一方、大型投資が必要なものは会社の中期計画等に入れ、しっかり予算化や計画的に改善を進める必要があり、この様な案件には適していません。

6.からくり改善は誰が進めるべきか?

からくり改善は良く現場が主導、IEはスタッフ主導で進めるものと言う方がおりますが、それは一概に正しいとは言えません。

簡単なテーマであれば現場側の工作技能や購入品との組み合わせ等で実現可能なテーマがあります。

一方、江戸時代に発明された茶運び人形の様な複雑なからくりや機械的な機構設計が必要な案件を現場側だけで改善することは困難で、テーマによって臨機応変にメカトロ設計者の協力を得て改善を進めると良いでしょう。


引用元: nippon.com

またメカトロ技術者は、仕事の依頼が来ないから何もしないでは無く、時々現場の空気を吸い、現場作業者と気軽にコミュニケ―ションが取れる職場環境を目指し、何でも相談され頼られるメカトロ設計者であって欲しいと思います。

そういう会社では、現場の課題を把握し、からくり改善も円滑に進むことでしょう。

7.からくり改善により得られる成果

からくり改善に取組むことで得られる成果としては、現場の作業性や品質が改善されることは勿論のこと、業務の標準化やルールの定着、作業の3M(無駄、無理、ムラ)の解消や、ルールの定着が進み躾(しつけ)も改善し、人材育成やチーム力の向上に繋がることがあります。

まとめ

さて、いかがでしたでしょうか。

ここまでの説明で、からくり改善に適したテーマや実現できること、からくり改善に取り組むことにより得られる成果についてご理解いただけたでしょうか。

この記事でのポイントをおさらいすると以下の通りです。

1.からくり改善とは

  • 製造現場の作業性、生産性、品質、安全性を改善する手段
  • 改善アイデアを創出し少ない投資金額で最大限の効果を得る

2.改善の必要性

  • 企業は利益を追求し、改善を継続しなければ生き残れない

3.改善目標の設定

  • QCDを意識して優先順位を決めて取組むと良い
  • からくり改善は、コストと納期(改善スピード)を優先する場合に適している

4.からくり改善は誰が進めるべきか?

  • からくり改善は、臨機応変に現場作業者とメカトロ設計者の協力を得て進めると良い
  • メカトロ技術者は作業者と気軽にコミュニケ―ションが取れる職場環境を目指して欲しい

5.からくり改善により得られる成果

  • 製造現場の作業性、生産性、品質、安全性を改善される。
  • 業務の標準化やルールの定着
  • 作業の3M(無駄、無理、ムラ)の解消
  • ルールの定着し、躾(しつけ)が改善される
  • 材育成やチーム力の向上に繋がる

次回以降のコラムでからくり改善の進め方や準備の仕方を事例を用いて紹介していきます。

是非、この機会にからくり技術について興味を持っていただき、目の前にある課題を素早く解決する手法を学び、身近な改善を進めてみましょう。