機械系と電気系の設計者で衝突する理由

投稿日:2022年12月23日

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社内での技術力を担う設計部門は、より高い専門性を活かす為に、機械系設計者と電気系設計者に分かれて、それぞれの分野で設計を進めるのが一般的です。

もっと部門を細かくしている企業もありますが、逆に大雑把に機械はハード面、電気はソフト面と大枠で設計をしている企業もあるかもしれません。

もしこれを読んでいる設計部門の方がいれば、機械系部門と電気系部門に分かれた部門の間で、いつもどのように装置設計を進めているか考えてみてください。

次の様な衝突やトラブルが起きていないでしょうか?

「機械設計側で電源の仕様変更されているのに、電気設計側で気が付かず、変更前の設計で電源盤を製作してしまった」

「機械設計だけで装置を作ってしまい、電源装置を取り付ける場所が無い」

機械装置を設計する際に、機械設計者と電気設計者との間で、お互いの意思疎通が上手くいかず、両者が衝突してしまうといった場面が、たびたび起こります。

なるべくはそんな言い争いは避けて、お互いが切磋琢磨と設計できるようにしたい、と思うエンジニアがほとんどだと思いますが、どうしても避けられずに悩みを抱えている人もいるでしょう。

(誰でも言い争いになるような事はしたくないものです。)

しかし、そう願っていてもかなかな衝突は避けられない場面はあるのです。人によっては、毎度衝突してしまう人もいます。

この設計業務中に起きる衝突には、必要不可欠な衝突と、無くすべき衝突の2つがあるのです。

必要不可欠な衝突とは?

必要不可欠な衝突とはどういったケースでしょうか?

例えばターボファンの設計をする際に必要な性能を担保できるようにと、機械屋はなるべく大きめなモーターを選定しておこうと考えます。

しかし、電気屋からすると必要な電力(電流値)が大きくなると、電源装置が大型になり、設計が大掛かりになってしまいます。

そこでお互いに議論し合って、最適な電源の仕様を決定する事になります。その時にどちらの要求を優先させるのかと、議論がヒートアップしてしまう事があるのですが、これは必要な衝突だと考えてよいでしょう。

より効率的な装置を作る上で、必要な議論が部門間でなされているからです。

ついつい議論が深まって、ヒートアップしてしまうこともモノづくりでは欠かせないのかもしれません。

大抵の衝突はお互いの連絡忘れである

その一方で、1番避けておきたい衝突は、部門間での連絡不足による、設計ミスです。

もしあなたの部署でこれが頻発する場合は、その原因を考えた方がいいかもしれません。

原因1:若手とベテランで起こりうる連絡不足

業務フローを完全に理解出来ていない若手エンジニアと、ベテランエンジニアでは、ちょっと違った原因が考えられます。その原因となる意識の違いが、連絡を取る相手ごとにどのように変わるかを以下の表にまとめています。

ベテランと若手の間の連絡不足になりやすい意識の違い(例)

連絡相手 ベテランエンジニアの気持ち 若手エンジニアの気持ち
ベテランエンジニアと若手エンジニアでやり取りを行う場合 ベテラン同士なら伝わる事でも、若手には細かく指示しないとうまく伝わらない。 どうしてもベテランの意見に反論出来ずに言い負かされる。
若手エンジニア同士でやり取りを行う場合 自部門の設計のことで頭がいっぱいで、相互に何を連絡すべきなのかが分からない。 部門を超えて連絡するには、まず上司を通さないといけないので面倒。
ベテランエンジニア同士でやり取りを行う場合 お互いの仕事の進め方に違いがある事を知っているので、連絡を遠慮してしまう。 例え議論が必要だと思っても、相手から相談してもらうまで、まだ連絡しなくても大丈夫と思ってしまう。

若手やベテランの双方が、議論をすることに戸惑いが無いように、普段からのコミュニケーションだけでは無く、定期的に連絡する時間と場所を確保しておくことが大切です。

原因2:専門性を共有できるマネージャがいないことによる連絡不足

多くの機械専門の設計者は、電気専門の設計者が普段どのように設計をしているのか分かりません。その為、どういった設計条件を機械設計者側から電気設計者に提供しないといけないか、又はどういった情報を伝えておかなければならないか、をきちんと把握が出来ていない場合が多く、これが連絡ミスの原因となっている場合もあるのです。

そこで機械設計と電気設計の情報伝達を円滑に行う為のマネージャが

  • この機器設計条件に電源工事のことが考慮されていない
  • この部分の設計は電気設計ではなく、機械設計で行う方が効果的

等の指示を、各設計部門に適時行うことで、連絡すべき事の取りこぼしを防止することができるでしょう。

しかし、会社組織上、そのマネージャがいない組織である場合は、機械設計者又は電気設計者のどちらかがマネージャを兼ねる場合もある為、自分の専門以外の部門がどのように設計を行っているのかを普段から理解しようとすることが大切です。

原因3:ベテランではない人に対して、図解やメモを用意せずに、会話のみでのやりとり

コミュニケーションのやり方にも注意が必要です。特に、連絡はすべて口頭のみで済ませてしまう人は、要注意です

相手の経験年数や専門性の違いに応じて、図に示すことや、メモを使用する等なるべく理解しやすい議論を行うことに務めておかないといけません。この情報伝達を上手に他部門に伝えることもエンジニアとして必要なスキルなのです。

なるべく口頭で済ませず、図や表を見ながら議論した方が伝わりやすい。

とはいえ、機械部門と電気部門の連絡を円滑にするには、お互いの意見交換を積極的に行わなければならず、時には会話や議論によって、設計を一気に進めることも大切です。ただし、議論が深まると、だんだんその内容についていけない人が現れてしまうので、注意しておきましょう。

下の絵の様に、機械系と電気系で知識量の勝負をするような議論はあまり良いとは言えないですね

お互いの知識を身に付け、相手の仕事の流れを理解することで衝突は起きない

機械系と電気系の双方の設計者が、どのように設計を行っているかを、お互いが理解し合っている部署では、衝突はほとんど起きません。

相手の仕事を理解する前と後で、考え方は以下の様に変わるはずです。

例1:電気設計者の▲▲さんは、一緒に働く機械設計者〇〇の仕事がいつも遅いと思っている。

理解前:「機械設計の〇〇さんは、いつも電気設計への連絡が遅くて困る」

↓↓↓

理解後:「機器の仕様が決まるまでに検討することが多く、意外と時間がかかるのだな」

例2:機械設計者〇〇さんは、一緒に働く電気設計者▲▲は、コロコロと電源仕様の変更をするため、その変更による機械設計側への影響を、全く考えていないのではないかと思っている。

理解前「電気設計の▲▲さんは、電源装置の改造内容の変更が多いので、機械の図面修正が度々起きて困る」

↓↓↓

理解後「機械部門からの機器仕様変更やユーザー操作法などの追加変更の度に電源装置を変更しなければならず、その対応が大変なんだな」

一緒に仕事を行うメンバーが、いつもどのように悩んで苦労しているかを理解することで、相手にはどんな連絡手段が適切なのか、情報連絡はいつまでにしておく必要があるかなどを考えることが出来る様になります。

その様にすれば、機械部門と電気部門はうまく連携が取れる様に、自然と動きまわるようになるのです。