ポンプの性能曲線の見方とポンプ選定について

投稿日:2022年04月21日

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ポンプを購入する際に、そのポンプの能力を確認していますか?

ポンプがもつ能力は、渦巻ポンプの場合、羽根の直径と回転数によってそのポンプの持つ最大能力(定格)が決まります。

羽根がぐるぐる回ってその遠心力で吐出圧力を生み出しているのです。

しかし、ポンプの能力を測る際は、羽根の直径や回転数では無いのです。ポンプの性能は、吐出量と吐出圧力で評価します。

同じポンプでも使い方によって、吐出量や吐出圧力が変動する為、ポンプの使用条件に合わせたポンプ性能を正しく把握しておかなければいけません。

それはつまり、この性能確認をしておかなければ、あなたがポンプの電源を入れた際に、指定したポンプ能力が必ずでるというわけではないということになるのです。これは意外と勘違しやすいので注意が必要です。

ポンプの購入を検討する際は、ポンプの能力がどのように変動するのかを理解し、ポンプ定格能力(最大能力)を指定することが出来るようになっておかなければいけません。

ポンプの性能は性能曲線で確認する

ポンプ能力は、ポンプを購入する際に性能曲線で確認します。この曲線グラフの1つで様々なことを確認することが出来るので、ぜひ見方を知っておきましょう。

下の性能曲線の図を見てください。

黒い線で書かれた曲線は、ポンプの吐出能力を表しています。ポンプの吐出能力はこの黒い線に従って、決まった吐出量と吐出圧力を出すことになります。横軸が「流量」で縦軸が「揚程」です。

揚程とは、圧力をその液体の密度と重力加速度で割った値であり、流体を持ち上げれる高さを表しています。

流量がゼロの時の圧力は、「締め切り揚程」と呼ばれ、ポンプの吐出側の弁を閉め切って運転している状態です。

ポンプを選定する際は、まず大前提として、この性能曲線(黒い線)より下側の範囲で運転することが条件となります。この黒い線が、全揚程以上となるように、ポンプの選定を行う必要があるのです。

図.ポンプの性能曲線

ポンプの全揚程とは何か?

ポンプの全揚程とは、配管を上に持ち上げる高さと、その流路の圧力損失(圧力損失ヘッド)とその流体の速度圧(速度ヘッド)の合計値の高さです。

つまり全揚程とは、ポンプの必要揚程を示しています。ポンプを設置する際は、配管ルートを確認し、それらの流路の高低差や圧力損失を計算することで、検討することが出来ます。

ここで、抑えておきたい点は、全揚程には「流体が流れていようが一定のヘッド」と「流体の流れにより変動するヘッド」「作為的に変動させるヘッド」の和であることを知っておいてください。

全揚程を3つに分ける 必要ヘッドの種類
流体が流れに関係が無い一定のヘッド 流体を上に持ち上げる為の必要ヘッド
(例)吸入側高低差、吐出側高低差
流体の流れに依存して変動する損失ヘッド 流量が増えると変化する損失ヘッド
(例)流体の摩擦損失ヘッド、
   流体出口部の速度ヘッド
作為的に変動させるヘッド 流量や圧力を調整する為の調整代
(例)調節弁で流量を絞る際の損失ヘッド

実はこの全揚程は、先ほどの性能曲線のグラフに書き加えることが出来ます。この全揚程の値は、先ほどの性能曲線の中で青い曲線で示しています。

この青い曲線との交点がそのポンプの実際の運転点となります。この青い曲線の傾きは、流量によって変動する損失ヘッドが大きくなれば、その傾きも大きくなります。

それによってポンプの性能曲線(黒い線)の流量は下がっていくことがこのグラフからも読み取れます。

又、ポンプ吐出側に弁がある場合は、その弁の弁開度によって弁前後の圧力損失を調節し、流量調整を行っています。

図.全揚程を理解する為の図

調整代はどのように考えればよいか

ポンプを選定する際の悩みとして、「ポンプでくみ上げる際の高低差や配管の圧力損失は算出することができますが、流体の調整代は計算によって事前に求めることが出来ない」という点が挙げられます。

「流量を調整できるように、ポンプ能力に少し余力を持たせておきたい」

「でもどれくらいの余力が必要なのだろうか?」

このような悩みに当たってしまうことがよくあるのです。

特に流量を調整する弁などがある場合は、その弁で圧力損失が想像以上に大きい場合、十分な調整レンジが取れないといったことがあるので注意が必要です。

その為、十分な能力があるポンプを選定する必要があり、以下の考え方で全揚程を求める場合が多いです。

この式は、弁で調節せずに流体を流した場合の、流路の高低差と流路内の圧力損失の和の値に1.8~2.0を乗じることで全揚程を算出しています。

もし、調節弁等の前後差圧をすべて算出すれば、上記の式よりもっと正確な全揚程の値がでるはずです。

しかしポンプの選定は、機器設計の序盤で行うことが多く、十分な設計データが集まっていない状態でポンプ選定を行うことになります。

その際、必要能力(全揚程)をうまく予想しておく必要があるのです。仮に予想が外れて、ポンプの選定からまたやり直すなんてことは、なるべく避けておきたいはずです。

ポンプの最小流量を確認しておくこと

ポンプの性能曲線には、メーカから最低流量を指定している場合があります。安定した流量を維持するための最低液量であるため、その吐出量以下の運転条件では、使用できないことになります。

たとえば下の性能曲線では、最低液量は赤線で6m3/hrになっています。これより表中左側(低流量側)では使用出来ないということになります。この最低液量の表示は、主に遠心式のポンプに記載されています。

図.性能曲線上に最低送液量の記載がある場合

もし、最低液量以下で使用したい場合はどのようにしたらいいでしょうか?

その場合は、液を循環させながら使用すればいいのです。

ポンプ吐出ラインと吸入側のラインにバイパスを設けて置き、吐出された液をポンプ吸入側に送ることで、ポンプを最低流量以上で運転することができるのです。

その際の注意点として、液をポンプで起動すると、液の温度は多少上昇します。その為、ポンプの吸入と吐出で液が循環し、徐々に温度が放熱されずに蓄積されてしまう可能性がありますので、注意してください。

まとめ

ポンプの吐出圧力と吐出量は、性能曲線上を推移して変動しますが、流路の抵抗や高低差から全揚程を求めることで、実際の運転状態を予想することが出来ます。

そして、求めた全揚程の値以上のポンプ性能を有するポンプを選定してください。

さらに、遠心式ポンプ等は、最低吐出量が決まっており、その流量以下の運転はしてはいけないことになっています。

その為、必要に応じてポンプ吐出から吸入側に返送し、循環することで最低液量以下の流量を送り出すことが出来るようになります。

普段あまり意識していなかった人もいるかもしれませんが、ポンプを購入する際は、必ず事前に性能曲線を確認して、性能に問題が無いかチェックするようにしてみましょう。

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