どんなポンプを選定すればよいか迷ったら

投稿日:2022年04月08日

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新たにポンプを新規で設置する際に、どのようなタイプのポンプを購入すればよいか、判断に迷いませんか?

もともと存在している既設の装置や設備があれば、それを参考に選択できますが、そういう真似が出来ない新規の装置や設備に組み込むポンプである場合は、設計者の判断に委ねられます。

実務でそういう時は、ポンプメーカの各社に問い合わせながら、機器選定をすることになりますが、あらかじめポンプの特徴を知っておくと選定がぐっとしやすくなるはずです。

ポンプの根本原理は2つ「容積式」「遠心式」しかない

液体を輸送するためのポンプの構造は、大きく分けると2つしかありません。「容積式」「遠心式」です。市場に出回っているポンプは、必ずその2つのどちらかに分類されています。以下にその特徴を示します。

容積式のポンプ

容積式のポンプは、液を溜める部分を押し出すように動くことで液を輸送できる構造となっています。構造は、ビストンやギア、スクリューといった機構を利用し、流体を加圧出来るようになっています。

その為、性能としては、高い吐出圧を生み出すことができ、高粘度の液体を輸送することも得意ですその一方で、構造上、液をためる部分の容積に限界がある為、吐出量は比較的低くなります。

容積式ポンプ内の構造は、精密な隙間管理が必要な機器が多く、機械摩耗を生じるのが特徴です。その為、比較的メンテナンス周期は短く設定されていることが多いです。

しかし、その接液部の隙間管理が精密である故、流量の乱れは少なく、適切に流量管理したい場合には向いていると言えます

遠心式のポンプ

遠心式のポンプは、羽根車(インペラ)が回転することで生じる遠心力によって、流体の圧力を高め、輸送する構造になっています。

その為、回転数と羽根のサイズによって性能が大きく変わり、幅広い流量レンジがあります。

内部構造は主に、主軸、軸受け、メカニカルシール、オイルシール、インペラによって構成され、部品点数は容積式に比べると少ないです。

又、容積式との違いとして、接液部の隙間は比較的広く、機械摩耗がかなり少ない為、メンテナンス周期は長めに設定されています

表.各ポンプの特徴まとめ

形式 構造 ポンプ名称 特徴
容積式

機械的に液が溜まる部分を押しだすことで圧送する。

往復動式と回転式がある。

【往復動式】

定量式ポンプ

ダイヤフラムポンプ

「低流量・高揚程」

「精密な駆動」

【メリット】

常に定量を吐出し続ける為、流量を管理しやすい

【デメリット】

機械摩耗が多く、メンテナンス周期が短い

【回転式】

チューブポンプ

ギアポンプ

ロータリーポンプ

スクリューポンプ

遠心式 羽根(インペラ)が回転することによる遠心力で圧送するポンプ

渦巻ポンプ(片吸込/両吸込)

カスケードポンプ

キャンドポンプ

マグネットポンプ

「広い流量レンジ」

「シンプル構造」

「運転しやすい」

【メリット】

メンテナンス周期が長い

幅広い流量に適用できる

カスケードポンプ以外は締め切り運転※が可能。

【デメリット】

回転数に応じた流量が吐出されるが、流量の誤差は大きい。

吸入側でキャビテーションが起きる場合がある。

※締め切り運転:吐出側の弁を閉めてポンプを起動させ、流れを安定させる運転。

ポンプの種類について強みと弱みを知る

➀往復動式ポンプについて

引用元:ダイヤフラム式定量ポンプ イワキ製 IX-Dシリーズ(イワキHP)

ピストンとクランク機構により、液体を押し出す構造になっているのが、プランジャーポンプであり、プランジャー(ピストン)と流体の間にダイヤフラムがあるポンプをダイヤフラムポンプと呼びます。

この往復動式ポンプの強みは、高い揚程を得られ、安定した流量を維持できるという点です。さらに、ストロークの調整が可能である為、流量の調整も可能な機種が多く存在します。

又、プランジャーによる直接液を圧縮するタイプ、オイルを介してダイヤフラムを動かし圧縮するタイプがあり、機械保護のため、後者をおススメします。

しかし、ダイヤフラムが疲労により破断した場合、プロセス側の液にオイルが混入してしまいますので、万が一の混入を嫌う場合は、前者である直接プランジャーで流体を押し流すタイプにしておきましょう。

ちなみに、往復動式ポンプの吐出圧は、激しく脈動をする為、必ずアキュームレータをポンプ吐出側に設置しておいてください。

※最近は無脈動型の容積式ポンプも出ている為、必ずしもアキュームレータが必要とは限りません。

図.ダイヤフラムポンプの動作原理

➁回転式ポンプ

高揚程であり流量が高いレンジまで網羅できるポンプです。クリーンな薬品を送付するチューブポンプや、固形物の混ざった流体や粘度の高い流体を移送させたい際に使用します。

容積式の中でも特に、流体摩耗(エロ―ジョン)や機械接触摩耗が起きやすく、定期的なメンテナンスが必要である為、仕様条件等はメーカとよく協議して決めておく必要があります。

流量のレンジで小さい順に並べると「チューブポンプ」「ギアポンプ」「ロータリーポンプ」「スクリューポンプ」の順で吐出量が大きくなる傾向があります。

図.スクリューポンプの動作原理(ヘイシン社製 NY-NYT)

引用元: ヘイシンHP

渦巻ポンプ

ポンプの中でも、一番設置台数多く、ポンプ=渦巻ポンプと認識している人もいるかもしれません。流量や揚程のレンジは他のポンプに比べ広く、扱いやすいのが特徴です。

その為、ポンプを導入する際は、まず渦巻ポンプで支障がないかを検討してから、他のポンプで検討することになるかと思います。

その判断材料として、渦巻ポンプの弱点についていくつか触れておきます。

【渦巻ポンプの弱点】

  • 1m3/hr程度以下の流量は、対応できない場合がある。
  • 数百CP以上の粘度がある流体では、対応できない場合がある。
  • 外部への漏れを許容できない場合は、軸封装置が必要となる。(軸封装置が比較的高価)
  • ポンプ起動時は、流量に多少乱れが有る。
  • 吸い込みの自吸能力が低いため、フート弁の設置や呼び水装置の設置が必要となる。

※自吸式の渦巻ポンプも各社ラインナップされていますが、強い吸い上げ効果は期待できないので注意が必要です。

逆に、これらの弱点が特に気にならない場合は、渦巻ポンプを選定すればいいと考えてもいいのかもしれません。それほど渦巻ポンプは頻繁に使用されるポンプなのです。

図.渦巻ポンプ(酉島製 CAL型)

引用元:酉島製作所HP

④カスケードポンプ

カスケードポンプは、渦巻ポンプのように羽根を回転させるその遠心力と、容積式の機械的な加圧を融合した遠心ポンプです。

特徴としては、吐出圧は高く、比較的低い流量を吐出することが出来ます。その為、渦巻ポンプが不得意な低流量域を、カスケードポンプではカバーできるのです。

カスケードポンプの注意点としては、ポンプ吐出側のバルブを閉め切ってしまうと、急激に圧力上昇が起きてしまうため、カスケードポンプを渦巻ポンプと見間違って吐出側の弁を閉めてしまわないように注意が必要です。(電動機の過負荷停止の原因になります)

図.カスケードポンプの外観と羽根形状(丸八ポンプ製作所製 MM型)

引用元: 丸八ポンプ製作所HP

図.カスケードポンプと渦巻ポンプの性能の違い(横軸:流量、縦軸:吐出圧)

キャンドポンプ

モータとポンプを一体とすることで、軸封をなくし、液体が洩れるリスクをなくした遠心ポンプです。ポンプアップした液体を循環させて、モータを冷却している為、高温の液体や固形物が入った液体には向いていません。

ベアリングはカーボン製であるため、多くの場合、摩耗による故障が発生しないかを指示計で監視しています。

図.キャンドポンプの断面構造(帝国電機製作所製 F-V型)

引用元:※帝国電機製作所製カタログ

⑥マグネットポンプ

外側と内側の両方の磁石で羽根を回転させるポンプです。

キャンドポンプと同様で、完全に流体を密閉しており、洩れは発生しない構造となっています。外側の磁石を回転させ、内側の磁石と一体となった羽根を回転させて吐出する遠心ポンプです。

主軸回転部が磁力で浮いている為、接触部が無いので、固形物がなく、流体の性能が問題無ければ、メンテナンスフリーでずっと運転可能です。

図.マグネットポンプの外観と断面構造(三和ハイドロテック MTFO型)

引用元: 三和ハイドロテックHP

まずは迷ったらメーカに聞くこと

問い合わせしたい内容を聞くために、まずメーカに伝えるべき項目を、事前に確認しましょう。

メーカに連絡すべき内容(例)

  1. 流体仕様(流体名、密度、粘度)と固形物の有無(スラリー等の粒径等)
  2. 設計条件(揚程or吐出圧力、吐出量、吐出温度)
  3. 設置するポンプ高さとプロセス液の蒸気圧(キャビテーションの検討で使用)
  4. 適用法規

カタログのみではなかなかポンプ選定は難しいと思いますので、極力メーカに問い合わせをして機器選定や仕様調整を行いましょう。

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