コストからみる汎用機とマシニングセンタ

投稿日:2024年11月29日

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この記事では、汎用機とマシニングセンタを比較してよりよい物を作るにはどうしたらいいかを考えていこうと思います。

汎用機とマシニングセンタ

まずは汎用機とマシニングセンタの種類を見ていきましょう。

汎用機

汎用機は汎用工作機械ともいい数値制御(Numerical Control)等が搭載されておらず、目盛りを見ながらハンドルを使って手動で動かす機械です。

マシニングセンタが世の中に出る前からあり、未だに現役でたくさんの汎用機が活躍しています。「汎用」とは使用用途が汎用という意味ではなく、機能等が特化していないという意味合いで汎用機といいます。

汎用機にはいくつか種類があります。

汎用フライス盤

主に角材を切削加工するための機械で、目盛りを見ながら手動でハンドルを回して切削を行います。

軸はXYZの3軸で、自動工具交換(ATC:Automatic Tool Changer)も無く工具交換も手動で行います。またクーラントなどの切削油の自動供給もなく、ワークに直接油をさして、切りくずの排出もハケなどを使って手動で行います。

汎用旋盤

フライス盤とは異なり、丸材の加工をする機械になります。軸や手動で行う部分はフライス盤と同様です。

汎用ボール盤

主に角材や丸材に穴を開ける機械です。XY軸がなく、ドリルが付いた主軸をZ軸方向に下げて穴をあけます。

マシニングセンタ

マシニングセンタは汎用機に数値制御や自動工具交換装置が搭載され、切削や研削などの多種加工ができる工作機械のことを言います。

刃物交換や切削、穴あけ、座ぐり加工等を自動で行ってくれる工作機械で、さまざまな形状を生み出すことができます。

マシニングセンタにもたくさん種類があります。

立形マシニングセンタ

標準仕様の状態で、地面に対して刃物と工具が垂直方向になっているマシニングセンタです。3軸(X軸Y軸Z軸)稼働で水平方向がX軸とY軸、垂直方向がZ軸になります。

ツール(主軸)が動く機械とワーク(テーブル)が動く機械の2種類からなり、テーブルが地面に対して水平になっているため、大きいワークでも重力に逆らうことなく安定して高精度に加工ができます。

ただし、切削した切りくずがテーブル上にたまって排出されにくいデメリットがあります。

横形マシニングセンタ

標準仕様の状態で、地面に対して刃物と工具が水平方向になっているマシニングセンタです。基本軸は3軸(X軸Y軸Z軸)で、そこにテーブルを回転させて4軸稼働になります。

正面の加工に加えて横向きで加工でき、立形マシニングセンタではワークを立てて加工しなければならない横穴等の加工をワークを外すことなく加工することができます。

ただし、こちらもデメリットがあり、テーブルを旋回するための占有面積を確保するため、機械自体が大きくなることがあります。

5軸マシニングセンタ

5軸マシニングセンタは基本の3軸に加えて角度方向にも軸があったり、ワークと主軸両方を同時に動かして複雑な形状を作ることができます。

この5軸制御によってワークを外すことなく、多面加工や複雑な形状を作ることができますが、プログラムやNC制御が複雑になりオペレータの能力やノウハウが必要になります。

メリット デメリット

次に汎用機と比較した、マシニングセンタのメリットとデメリットを書いていきます。

☆メリット☆

1.数値制御(NC)を用いて、精密で高度な加工ができる。

汎用機ではできない数値制御を用いて、機種にもよりますが、1000分台の精度で加工できる場合もあります。

また繰り返し精度が高精度のため、量産品の加工に向いており、短時間でたくさんの製品を作り出すことができます

2.重切削加工が速い

汎用機に比べてマシニングセンタの主軸部は頑丈で、鉄をはじめステンレスやチタンなどの難削材の重切削が速いです。

3.安全に加工ができる

汎用機にはカバーなどが付いているものが少なく、きりくずや折損した刃物等が飛んでケガをしないように保護メガネなどを付けて加工します。

一方、マシニングセンタにはドアや何か異常があったときに非常停止する安全装置等が付いており、作業者が事故やケガをしないようにできています

★デメリット★

1.導入コストが高い

汎用機に比べて機械自体の導入コストが高く、またそれに付随する工具やプログラム作成に使用するPCなどの備品にもコストがかかります。

2.単品加工ではコストが高くなる

マシニングセンタ加工では数値制御で加工を行うため、NCプログラム作成が必須になります。

プログラムを作成する時間(人件費も含む)+加工時間になるため、数量が少なければ少ないほど、1個あたりの製品コストは高くなります。

また先ほど説明した導入コスト部分も製品コストに上乗せされるため、汎用機に比べてさらに高くなります。

では、なぜ汎用機はなくならないのか

マシニングセンタ自体の技術が進化する中、なぜ加工場から汎用機がなくならないのでしょうか。ここでは汎用機の得意なことや、なくならない理由を書いていこうと思います。

☆得意なこと☆

1.治具製作や単品加工が速い

プログラム作成や原点測定がなく段取り工程が少ないため、ワークを機械に付けてすぐに加工を始められます。

※治具は単純な形が多いため、プログラ厶作成をしているよりも汎用機で作ったほうが速い。

2.手直しや既製品への追加工が速い。

これも段取り工程が少なく、マシニングセンタに比べて圧倒的に速いです。

汎用機は機械加工の基礎を教える形として、とても重要な役割を持っています。

工具の切れ味が落ちたり切削油の当たり方が十分でないとハンドルが重く感じたり、折損した際の衝撃が肌に伝わり「感覚」で加工ができるようになります。

また、カバーで覆われていないことをデメリットで紹介しましたが、覆われていない分「音」や「匂い」や「振動」が伝わりやすくなっています。

まとめ

これまで、汎用機とマシニングセンタについて書いてきました。

技術の進歩によりマシニングセンタが選ばれて活躍しがちですが、汎用機には機械加工の基礎が詰まっており、それを生かして製造業が成り立っていると言っても過言ではないと思います。

今一度基礎に戻りそれぞれの良いところを用いて、より良いものを作るのが良いのではないでしょうか。

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