投稿日:2019年01月07日
突然ですが、あなたは設計業務中に
「現場(工場)」からの電話が鳴ったとき、ドキッとしませんか?
受話器の向こうから聞こえてくる、加工担当者の声。
「◯◯さん、この部品図なんだけどさ…」
「ここの寸法、どこ基準で削ればいいの?」
あるいは、もっと恐ろしい一言。
「図面通りに作ったけど、これじゃ組み付かないよ?」
CAD上では完璧にモデリングできていたはずなのに。
干渉チェックもパスしていたはずなのに。
なぜか実物が出来上がると、意図した通りになっていない。
そして現場からは「設計者の意図が分からない」と怒られてしまう。
もし、このような経験に心当たりがあるなら、
今回のメルマガは、まさにあなたのためのものです。
本日は、初心者が最も陥りやすい
「独りよがりな図面」からの脱却をテーマに、
加工者に感謝される図面の描き方についてお話しします。
なぜ、あなたの図面は「伝わらない」のか?
3D CADが普及した現代において、
形状を作るだけなら誰でもできるようになりました。
しかし、いざ「2D図面」に落とし込む段になると、
途端に手が止まる、あるいは間違いが増えるという若手技術者が
後を絶ちません。
その最大の原因は、
「CADの機能任せの寸法記入」にあります。
3Dモデルから2Dビューを生成し、
自動寸法機能や、スペースが空いている場所に
手当たり次第に寸法を配置していませんか?
例えば、ある「丸い棒状の部品(軸)」の図面を描くとします。
右側面図(円が見える図)に直径寸法を入れ、
正面図(長手方向が見える図)に長さ寸法を入れる…。
一見、情報は揃っているように見えます。
しかし、これを受け取った旋盤加工の担当者は
どう思うでしょうか?
「いちいち図面をあっちこっち見ないと、段取りが決められない!」
実は、図面には
「製図の基本的なルール(JIS)」と、
「加工者への配慮(設計意図)」が必要不可欠なのです。
これを知らずに描かれた図面は、
読み手にとって「解読が必要な暗号」になってしまいます。
「伝わる図面」に変える3つのステップ
では、どうすれば現場から信頼される図面が描けるようになるのでしょうか?
明日から使える具体的な解決策を、3つのステップでご紹介します。
【Step 1】加工のストーリーを想像する
図面を描く前に、その部品が「どうやって作られるか」を想像してみてください。
例えば、丸い棒状の部品なら、
旋盤で回転させながら削ります。
この場合、加工者は
「直径」と「その直径を削る長さ」をセットで確認しながら作業を進めます。
もし、直径寸法と長さ寸法が別の図(ビュー)に離れて置いてあったらどうでしょう?
視線の移動が増え、
見間違い(=加工ミス)のリスクが高まります。
「加工工程を視野に入れて図面にする」ことが、
設計者の第一歩です。
【Step 2】関連する寸法は「1つの図」に集約する
JIS(日本産業規格)の製図ルールでは、
「関連する寸法は1つの投影図に集約する」ことが推奨されています。
先ほどの丸い棒状の部品であれば、
円が見える図(側面図)ではなく、
あえて長手方向が見える図
(正面図の断面など)に、
直径寸法と長さ寸法をまとめて記入します。
こうすることで、加工者は
「φ50の部分を長さ100mm削ればいいんだな」
と直感的に理解できます。
「丸もの部品は加工者が加工しやすいように
断面図に寸法を集約する」
のがテクニックの一つです。
【Step 3】自己検図で「第三者」の目を持つ
図面を描き終えた直後は、
脳が「描いたつもり」になっています。
寸法が抜けていても、
自分の頭の中には形状があるので気づけません。
必ず時間を置き、
「何も知らない第三者」になったつもりで図面を見返してください。
「この寸法だけで、本当に形が定まるか?」
「基準はどこか明確か?」
図面は、設計者から加工者への「手紙」です。
相手に意図が伝わらなければ、
それは独り言と同じになってしまいます。
【ミニクイズ】製図の常識、自信ありますか?
ここで、あなたの「製図基礎力」をチェックしてみましょう。
製造業に入社したなら即答したい問題です。
Q1.
ネジの寸法表記で「M10」と書かれていました。
この「M」は何を意味する記号でしょうか?
A. ミリ(Millimeter)ねじ
B. メートル(Metric)ねじ
C. マシン(Machine)ねじ
Q2.
次の文章は正しいでしょうか?
「丸い棒状の部品(旋盤加工品)の寸法を入れる際、
形状を分かりやすくするために、
できるだけ『円に見える図(側面図)』の方に
直径寸法を記入すべきである」
A. 正しい(○)
B. 間違い(×)
Q3.
図面において、対象物の「見えない部分」の形状を表すために使う線は
どれでしょうか?
A. 太い実線
B. 破線(点線)
C. 一点鎖線
↓ ↓ 考えましたか?
▼ ミニクイズの解答・解説は、ページの末尾に掲載しています。
「CADオペレーター」から「設計者」へ
いかがでしたでしょうか。
今回ご紹介したような寸法の入れ方一つとっても、
「なぜそうするのか?」という理由(理論)があります。
自己流や見よう見まねのOJTだけでは、どうしても
「CADの操作方法」は覚えられても、
「設計意図の伝え方(製図のルール)」は
おろそかになりがちです。
現場からの信頼を得て、
「◯◯さんの図面は加工しやすいよ」
と言われるようになるには、
JISに基づいた体系的な学習が最短の近道です。
「機械製図超入門講座」では、今回のような寸法の表し方はもちろん、
・第三角法による投影図の描き方
・公差(はめあい)の考え方
・表面粗さや幾何公差の基礎
まで、設計実務に必要な知識をゼロから体系的に学ぶことができます。
「なんとなく」で寸法を入れる恐怖から卒業し、
自信を持って図面を出図できるエンジニアを目指しませんか?
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。
あなたの設計ライフがより良いものになることを応援しています。
【解答・解説】製図基礎力チェック
メルマガのミニクイズに挑戦していただき、ありがとうございます!
あなたは全問正解できましたか?
さっそく答え合わせと解説を見ていきましょう。
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Q1. ネジの寸法表記で「M10」と書かれていました。この「M」は何を意味する記号でしょうか?
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【正解】
B. メートル(Metric)ねじ
【解説】
「M」は、メートルねじ(Metric screw thread)を表す記号です。
機械設計において一般的に最もよく使われるねじ規格で、
呼び径(外径寸法)の前にアルファベットの「M」を付けて表します。
例えば「M10」であれば、
外径が10mmのメートルねじを意味します。
ちなみに、ねじにはメートルねじ以外にも、
・インチねじ(ユニファイねじ)
・管用ねじ
などがあり、
それぞれ異なる記号(UNC、R、Gなど)が使われます。
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Q2. 次の文章は正しいでしょうか?
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「丸い棒状の部品(旋盤加工品)の寸法を入れる際、
形状を分かりやすくするために、
できるだけ『円に見える図(側面図)』の方に
直径寸法を記入すべきである」
【正解】
B. 間違い(×)
【解説】
丸い棒状の部品(丸もの部品)の場合、
直径寸法は円に見える図(側面図)ではなく、
「長手方向が見える図(正面図の断面など)」に
集約して記入するのが原則です。
なぜなら、旋盤加工を行う加工者にとって、
・直径寸法
・その加工範囲(深さ・長さ)
がセットで配置されている方が、
直感的に形状を理解しやすいためです。
もし側面図に直径寸法を入れてしまうと、
「この直径は、どの長さまで削ればいいのか?」
を確認するために視線を移動させなければならず、
直径と深さの関係が分かりにくくなってしまいます。
「加工者が作業しやすいように寸法を配置する」
という配慮が大切です。
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Q3. 図面において、対象物の「見えない部分」の形状を表すために
使う線はどれでしょうか?
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【正解】
B. 破線(点線)
【解説】
対象物の見えない部分(内部形状など)を表す線は、
「かくれ線(隠れ線)」
と呼ばれ、「破線(点線)」を用いて描きます。
ちなみに、他の選択肢の線は以下の用途で使われます。
・太い実線
外形線(対象物の見えている部分の外形を表す)
・一点鎖線
中心線(円の中心や対称軸を表す)
図面では同じ種類の線を使うと、
・形状なのか
・寸法線なのか
区別がつかなくなるため、
線の種類(実線・破線・鎖線など)や太さを
明確に使い分けるルールになっています。
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全問正解できましたか?
もし不正解があったとしても、
落ち込む必要はありません。
これらはCADの操作を覚えるだけでは身につかない、
「製図のルール(JIS)」や
「設計者の意図」
に関わる知識だからです。
しかし、実務で図面を描く以上、
これらの知識は必須となります。
「なんとなく」で済ませず、
一度体系的に学んでおくことで、
現場から信頼される図面が描けるようになります。
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