投稿日:2019年02月13日
その設計、後工程まで見据えられていますか?
設計者として3DCADを使い、
画面上で部品やユニットがきれいに組み上がると、
設計が一歩前に進んだ実感があります。
しかし、画面上では問題なく見えていた図面でも、
実際の組立や保守の場面で、
思わぬ指摘を受けることがあります。
たとえば、
「この位置だと、工具が入りにくいかもしれません」
「配線を通すスペースが少なく、
組立時に無理が出そうです」
「センサーを交換するために、
周辺部品を大きく外す必要がありそうです」
といった指摘です。
このような後工程での気づきは、
設計者にとって大切な学びになります。
一方で、構想段階であらかじめ検討できていれば、
手戻りを減らせる場合も少なくありません。
ポイントになるのは、
目に見える「形」だけでなく、
目に見えにくい「空間」や「作業の流れ」まで、
構想図の段階で考えておくことです。
「構造」の背後にある、後工程の視点
設計の現場でよくあるのは、
構想設計の段階で、
機能を実現するための機構や構造に意識が集中し、
製造や保守といった後工程の視点が後回しになることです。
構想図は、設計者の頭の中にあるアイデアを具現化し、
商品開発の方向性を共有するための「設計の地図」です。
しかし、その地図に
配線スペースや作業スペース、
保守時のアクセス経路が十分に描かれていないと、
後工程で調整が必要になることがあります。
設計の初期段階で気づけば、
図面上の修正だけで済むこともあります。
しかし、詳細設計や試作が進んだ後に問題が見つかると、
部品の再設計や再手配、
スケジュール調整が必要になる場合があります。
だからこそ、構想図の段階で
「作りやすさ」
「組み立てやすさ」
「保守しやすさ」
を考えておくことが重要です。
具体例:ロボットアーム設計で見落としやすい配線スペース
ここで、産業用ロボットアームの新規開発を担当した
若手技術者の例を考えてみましょう。
彼は、3DCADを使って多関節機構を設計し、
画面上では干渉もなく、
見た目にもコンパクトな構造を作ることができました。
ところが、組立検討の段階で、
関節内を通る通信ハーネスのスペースが不足していることが分かりました。
アームを動かした際に、
配線が内部で擦れやすい状態になっていたのです。
さらに、ハーネスを交換する場合に、
周辺部品を大きく分解しなければならない構造であることも分かりました。
彼は、機構という「目に見える形」には十分注意していました。
しかし、配線が占有する体積、
最小曲げ半径、
交換時の作業性といった要素までは、
構想段階で十分に検討できていなかったのです。
このような問題は、
構想図の段階で配線経路や作業スペースを入れておくことで、
早い段階で気づける可能性があります。
現場に伝わる構想図を描く3つの視点
後工程での手戻りを減らすためには、
構想図の段階から、
後の製造・組立・保守を見据えた検討を行うことが大切です。
ここでは、実務で意識したい3つの視点を紹介します。
1. 可動範囲を図示する
構想図を描く際は、
部品が止まっている状態だけでなく、
移動範囲もあわせて示すことが大切です。
たとえば、可動部の最大位置を点線や半透明で表現すると、
周辺部品との干渉や必要なスペースを確認しやすくなります。
静止状態だけを見るのではなく、
動いたときにどの範囲を使うのかを明確にすることで、
より実際の動きに近い検討ができます。
2. 配線・配管の通り道を確保する
機械設計では、部品そのものの形状に注目しがちですが、
配線や配管も重要な設計要素です。
ハーネスやコネクタは、
思っている以上にスペースを必要とすることがあります。
そのため、初期段階から
配線束や配管の通り道を
「見えない部品」としてレイアウトに入れておくことが大切です。
特に、可動部を通る配線では、
曲げ半径や擦れ、ノイズの影響なども考慮する必要があります。
3. DfXの視点を取り入れる
DfXとは、
製造しやすさ、組み立てやすさ、保守しやすさなどを、
設計の初期段階から考慮する考え方です。
たとえば、
工具が入るスペースはあるか。
組立順序に無理はないか。
交換頻度の高い部品にアクセスしやすいか。
検査や調整がしやすい構造になっているか。
こうした視点を構想段階で確認することで、
後工程での調整を減らしやすくなります。
ミニクイズ:あなたの設計「先読み力」をチェック
学んだ内容を振り返るために、
以下のクイズに答えてみましょう。
Q1.
構想図において、
動く部品(可動部)の表現として最も適切なのはどちらでしょうか?
A. 最も見栄えが良く、収まりが良い位置に固定して描く。
B. 基準位置の状態を実線で描き、
最大限に移動した状態を点線等で描いて可動範囲を明確にする。
Q2.
製品のライフサイクル全体、
製造、組立、保守などを見通し、
様々な要求事項を設計の初期段階から織り込んで進める手法の総称を何と呼ぶでしょうか?
A. DfX(Design for X)
B. CAD(Computer Aided Design)
▼ ミニクイズの解答・解説は、ページの末尾に掲載しています。
構想図は、関係者と認識をそろえるための「共通言語」
後工程まで見据えた構想図を作成することには、
大きなメリットがあります。
それは、デザインレビュー(DR)での議論が
より具体的で建設的になることです。
製造や保守の担当者に対して、
「この配線経路であれば、組立時に無理が出にくい」
「このスペースを確保しているため、工具が入る」
「この部品は交換頻度が高いため、前面からアクセスできる」
といった説明ができれば、
関係者と早い段階で認識を合わせることができます。
また、3DCADを活用して重心位置や質量を確認したり、
CAE解析と連携させたりすることで、
より根拠のある設計判断がしやすくなります。
構想図は、単に形を描くためのものではありません。
設計者の考えを関係者へ伝え、
製品開発を前に進めるための共通言語でもあります。
体系的な学習で、実務に使える設計思考を身につける
「配線や作業スペースをどこまで考慮すべきか分からない」
「DfXが大事なのは分かるが、
実務でどう手順化すればよいのか迷う」
こうした悩みは、
自己流の経験だけでは整理しにくいことがあります。
多くの現場では、
過去図面の流用やベテランの経験に頼っている部分も少なくありません。
構想設計入門講座(機能設計編)では、
「要求→機能→機構→構造」という思考プロセスに基づき、
実務で使える構想図の描き方を体系的に学びます。
実際のバルブやリフターの設計事例を通じて、
トップダウン設計の考え方や、
後工程での手戻りを減らすための検討ポイントを
段階的に習得していきます。
今よりも一歩先の、
現場や関係者に伝わる設計を目指したい方は、
ぜひ学習にお役立てください。
講座の詳細や具体的な学習ステップは、
以下のページにまとめています。
▶︎ 構想設計入門講座(機能設計編)の詳細はこちら
ミニクイズの回答と解説
メルマガ内のミニクイズにご解答いただき、ありがとうございます。
以下に、各設問の正解と、
実務に役立つ設計のポイントを解説します。
Q1. 構想図における可動部の適切な表現は?
正解:
B. 基準位置の状態を実線で描き、
最大限に移動した状態を点線等で描いて可動範囲を明確にする。
解説:
「動的なスペース」を可視化する
構想図、またはポンチ絵は、
設計者の頭の中にあるアイデアを視覚化し、
関係者と共有するための「設計の地図」です。
動く部品を特定の位置に固定して描くだけでは、
その部品が移動した際に、
周囲の部品や壁と干渉しないか、
配線に無理な力がかからないかといった
「動的な課題」を見落とすリスクがあります。
そのため、基準となる位置を実線で描き、
移動範囲、つまりストロークの終点を
点線や半透明で表現することが重要です。
このように可動範囲の終点を明確に示すことで、
動作のイメージを正確に共有でき、
初期段階での干渉チェックが容易になります。
Q2. ライフサイクル全体を初期に織り込む手法の総称は?
正解:
A. DfX(Design for X)
解説:
後工程の制約を「先回り」して解決する
DfX(Design for X:Xのための設計)とは、
構想設計の段階から製品のライフサイクル全体を見通し、
製造、組立、保守、環境といった様々な要求事項を
事前に織り込んで設計を進める手法の総称です。
具体的には、以下のような観点が含まれます。
DfM(Design for Manufacturing):
加工のしやすさ
DfA(Design for Assembly):
組み立てやすさ
DfS(Design for Service):
保守・修理のしやすさ
従来の設計では、まず機能や性能を優先し、
後から製造現場やサービス部門から
「作りにくい」「修理が大変だ」といった指摘を受けて、
手戻りが発生することがありました。
DfXを実践し、
設計の初期段階でこれらの制約を考慮する
「フロントローディング」を行うことで、
後工程での大幅な設計変更やコスト増加を
大きく減らすことが可能になります。
「なんとなく」の設計から、根拠ある設計へ
構想設計の質を高めるためには、
単に図面を描くツール、つまりCADを使いこなすだけでなく、
こうした「動作の可視化」や
「ライフサイクルを考慮した思考の型」を
体系的に身につける必要があります。
構想設計入門講座(機能設計編)では、
本クイズで触れた構想図の具体的な描き方や、
DfXの観点を用いた設計の最適化プロセスを、
実例、たとえばバルブやリフターなどを通して学習します。
自己流の設計に不安を感じている方や、
チームを技術的に牽引したいリーダー候補の方は、
ぜひこの機会に「一生モノの設計思考」を学んでみてください。










