その機械、誰のため?市場に選ばれる設計の条件

投稿日:2019年02月12日

はじめてリーダーを任されたとき、
多くの技術者がぶつかる「ある壁」があります。

それは、「良いものを作れば売れるはずだ」という信念が、
市場の冷徹な反応によって打ち砕かれる瞬間です。

今回は、技術力に自信がある設計者ほど陥りやすい
高スペックの罠」と、それを回避するための
商品コンセプト」の考え方についてお話しします。

「技術的に正しい」が「ビジネスとして正解」とは限らない

リーダーになりたてのあなたが、
自社の主力製品である産業用機械の新型モデル開発を任されたとします。

「競合を圧倒する性能を出そう!」

と意気込み、加工精度は従来の2倍、耐久性は1.5倍の製品を完成させました。

しかし、蓋を開けてみると……売れません。
顧客が選んだのは、あなたの製品よりも精度が劣る競合他社の製品でした。

「なぜだ? 技術的にはうちの方が圧倒的に優れているのに!」

この悲劇の原因は、「スペック表の数字」しか見ていなかったことにあります。
これは「プロダクトアウト(技術起点)」の考え方が強すぎる場合によく起こる現象です。

顧客は「高い精度」そのものが欲しいわけではありません。
その精度によって得られる「段取り時間の短縮」や「不良率の低減」
といった「価値」を買っているのです。

ここの翻訳ができていないと、
無駄に高機能で高い機械」という評価になってしまいます。

高スペックマシンが「無用の長物」になる瞬間

ある工作機械メーカーの例を見てみましょう。

彼らは「超高精度な位置決め」ができる新型機を開発しました。
しかし、顧客の現場が求めていたのは、そこまでの超精度ではなく、

段取り替えが10分で終わること

でした。

競合他社は、精度は標準レベルに抑えつつ、
治具交換をワンタッチにする機能を搭載していました。

結果、顧客は「使いやすさ」という価値を提供した競合製品を選びました。

このように、マーケティングの視点が欠けていると、
「頑張って設計したのに、誰にも喜ばれない」という結末を迎えてしまいます。

「誰に・何を」を定めるコンセプト作成3ステップ

このミスマッチを防ぐために、図面を描き始める前に必ず作成すべきなのが
商品コンセプト」です。

以下の3つのステップで、技術を価値に変換するコンセプトを練りましょう。

【ステップ1:ターゲットを絞る(誰に?)】

「すべての人に向けた商品」は、誰の心にも刺さりません。

例えばラーメン屋でも、
「こってり派もあっさり派も満足させよう」とすると中途半端な味になります。

機械設計も同じです。
「誰が使うのか?」を具体的に決めましょう。

【ステップ2:特徴を「顧客にとっての価値」に翻訳する(何を?)】

ここが腕の見せ所です。

スペック(機能)を、顧客にとってのメリット(価値)に言い換えてみてください。

・機能:小型化・軽量化
・価値:限られたスペースにも設置でき、レイアウト変更が容易になる

「だから何?」と自問自答し、技術的な特徴を顧客の利益に変換します。

【ステップ3:差別化ポイントを明確にする(なぜ自社なのか?)】

最後に、競合との違いを明確にします。

「なぜ、他社ではなく自社の製品を選ぶべきなのか?」

という問いに答えられなければ、価格競争に巻き込まれるだけです。

【ミニクイズ】

今回の内容を振り返るミニクイズです。

Q1. 商品コンセプトを決める際、最初に考えるべきことは次のうちどれですか?

A. どの部品を使ってコストを下げるか
B. お客様は誰か(ターゲット)
C. 競合他社の特許状況

Q2. 現代の商品開発において、設計者に求められる適切なスタンスは?

A. 顧客の言う通りに作ることだけを考える
B. 自社の技術力だけを信じて、市場の声は無視する
C. 自社技術(シーズ)を活かしつつ、市場ニーズ(マーケットイン)の視点も組み合わせる

▼ ミニクイズの解答・解説は、ページの末尾に掲載しています。

図面を描く前の「設計図」が成功を決める

コンセプトとは、開発の「」となる設計図のようなものです。

これが定まっていないと、開発途中で「あれもこれも」と機能を追加したくなり、
結果として中途半端な製品になってしまいます。

技術者が「顧客価値」の視点を持つことで、設計の質は劇的に変わります。

「無駄に高い精度」を追うのをやめ、
「使いやすさと精度のバランス」という最適解を導き出せるようになるのです。

次のアクションへ

「技術シーズと市場ニーズをどうやって結びつけるのか?」

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・自社の強みを見つける「シーズ調査
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【解答・解説】

メルマガのミニクイズに挑戦していただき、ありがとうございます。

今回のクイズでは、設計者が陥りやすい「思考の罠」と、
それを乗り越えるための「正しいスタンス」について出題しました。

それでは、正解と解説を見ていきましょう。

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Q1. 商品コンセプトを決める際、最初に考えるべきことは次のうちどれですか?
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【正解】
B. お客様は誰か(ターゲット)

【解説】
商品コンセプトを創る際には、以下の3つのポイントを順に明確にする必要があります。

1. お客様は誰か?(ターゲット)
2. その商品の特徴は何か?(提供価値)
3. 差別化のポイントはどこか?(競合との違い)

真っ先に考えるべきなのは、「誰に向けた商品なのか」ということです。

「全ての人に好かれる商品」を作ろうとすると、
誰の心にも響かない中途半端なものになってしまいます。

設計段階で「コスト(A)」や「特許(C)」を気にすることももちろん大切ですが、
それはあくまで手段や制約条件です。

まずは「誰のために作るのか」というターゲットを明確にすることで、
必要な機能や品質、適正なコストが見えてきます。

コンセプトは商品づくり全体の「設計図」であり、
ここがブレると後の工程ですべてがブレてしまいます。

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Q2. 現代の商品開発において、設計者に求められる適切なスタンスは?
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【正解】
C. 自社技術(シーズ)を活かしつつ、市場ニーズ(マーケットイン)の視点も組み合わせる

【解説】
かつてモノが不足していた時代は、
技術主導で作れば売れる「プロダクトアウト」が通用しましたが、
モノが溢れる現代ではそれだけでは売れません。

かといって、顧客の要望だけを聞く「マーケットイン(A)」だけでは、
他社との差別化が難しくなります。

現代の設計者に求められるのは、以下の両方を組み合わせるスタンスです。

・プロダクトアウト(技術起点):
 自社の強み(シーズ)を活かす

・マーケットイン(顧客起点):
 顧客の課題(ニーズ)に応える

特に設計者は、自社技術(シーズ)を深く理解しているという強みがあります。

技術シーズを起点にしつつ、
「それが顧客にとってどのような価値になるか」というニーズの視点を組み合わせることで、
競合に勝てる強い商品が生まれます。

技術者がマーケティングの視点(顧客価値の視点)を持つことで、
「無駄に高機能で使いにくい機械」を作ってしまう失敗を防ぎ、
「使いやすさと性能のバランスが取れた実用的な機械」を設計できるようになります。

解説で紹介した内容は、以下の講座で詳しく学べます

今回のクイズで扱った

・コンセプトの作り方
・技術シーズと市場ニーズの統合

は、

構想設計入門講座(企画発想編)」の
第6章および第2章で詳しく解説しています。

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