投稿日:2021年12月27日
直動ガイドは、ワークの搬送や位置決め、組立などの自動化機械の設計において、非常に多用される機械要素です。そのため直動ガイドについて理解しておかないと、自動化機械の設計はできないと言っても過言ではありません。
そこで本コラムでは、代表的な直動ガイドの種類や特徴、それぞれの使い分けについて解説します。このコラムを読めば、よく使う直動ガイドの種類がわかり、自動化機械の設計時にどの部品を使えばいいか判断できるようになるでしょう。
自動機の設計に携わっているエンジニアの方は、ぜひ読んでみてください。
1. 直動ガイド(直動案内)とは?
回転運動の摩擦を減らして、軸を支えながら滑らかに回転させる機械要素が軸受です。一方、直線運動の摩擦を減らして、部品を案内する機械要素が直動ガイド(直動案内)です。
直動ガイドは、たとえば以下のような自動化機械で用いられます。直動ガイドに取り付けられたユニットが、運動方向以外の動作を制限されながらガイドレール上を動きます。
2. 直動ガイドの種類や特徴
ここでは、代表的な直動ガイドの種類や特徴を紹介します。以下の表を参照ください。
案内方式 | 名称 | 相手側 | 外観 | 特徴 |
ころがり案内 | スライドレール | レールとセットで使用 | 出典:THK |
スライドレールは、ロールフォーミング加工※1で作られる安価な直線ガイドです。内部のボールのころがりによって摩擦を減らせますが、位置決め精度が求められたり、大きな荷重を受けたりする条件には適しません。用途としては、開閉式のカバーや引き出しなどに使われます。 |
ボールブッシュまたはリニアブッシュ | シャフト※熱処理が必要 | 出典:ミスミ |
ボールブッシュ※2は、安価な直線運動用のころがり軸受です。摩擦抵抗が小さく、位置決め精度が求められる条件に適しており、ハウジングなどに圧入して使われます。また、相手側の部品がシャフトであり、軸の両端を固定して使用します。支持部が負荷から離れた位置にあるため、大きな荷重を受ける使用条件には向きません。なおボールブッシュを使うときは、シャフトとボールが直接接触するため、シャフトに熱処理を施し表面を硬くする必要があります。 | |
LMガイドまたはリニアガイド | レールとセットで使用 | 出典:THK |
LMガイド※2は、自動化機械において使用頻度の高い直動ガイドです。レールをボルトなどで固定し、そのレールの上をブロックが移動する機構です。荷重をレールで支えるため、ボールブッシュよりも大きな力を受けられます。また、ころがり運動による低摩擦とガタの少ない精密構造により、高い位置決め精度を得ることができます。ただし、他の直動ガイドに比べてコストは高めです。 | |
すべり案内 | ブッシュ | シャフト | 出典:ミスミ |
すべり軸受のブッシュは、回転運動だけでなく直線運動にも使用できる安価な機械要素です。面で荷重を支えるため、スライドレールやボールブッシュよりも大きな力を受けられます。接触面積が広い分、摩擦による抵抗も大きくなるため、位置決め精度は悪いです。ボールブッシュと同様に、ハウジングなどに圧入して使います。 |
※1
複数並んだローラーの間に、鋼板を通して加工すること。加工効率に優れており、高品質・低価格な部品を大量生産できる。
※2
ボールブッシュやLMガイドは、メーカーによってそれぞれリニアブッシュやリニアガイドと呼ばれることもある。
3. 直動ガイドの使い分け
直動ガイドの使い分けにおける判断基準は、「位置決め精度が必要かどうか」と「負荷荷重が大きいかどうか」です。まとめると以下のようになります。
まとめ
今回は直動ガイドの種類や特徴、それぞれの使い分けについて解説しました。
直動ガイドは、自動化機械の設計において必要不可欠な機械要素です。それぞれの部品の特徴や使い分けを、しっかり理解しておきましょう。
今回紹介した内容が、ご参考になりましたら幸いです。
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