計算ミスじゃない。ボルト破断の本当の原因とは?

投稿日:2019年01月09日

入社して数年、
少しずつ設計を任されるようになってきた頃。

ふとした時に訪れる、
設計者が思わず冷や汗をかく場面。

それは、自分が設計した機械の試運転中、
あるいは納品後の現場からの一報で始まります。

「○○さん、固定したはずのボルトが折れました」

頭の中が真っ白になります。

(そんなはずはない。
強度区分も確認したし、
安全率だって十分に取ったはずだ……!)

急いで計算書を見直しても、
計算上のミスは見当たらない。

では、なぜボルトは折れてしまったのでしょうか?

実は、この失敗。

多くの若手設計者が一度は経験する
計算だけでは見落としがちな構造上の罠
なのです。

本日は、教科書や計算式だけでは学べない、
現場で痛い目を見ないための
ねじ設計の鉄則」についてお話しします。

計算式には表れない「ボルトの弱点」

「サイズは合っているのに折れる」

この現象の多くは、ボルトに対する
「力の掛かり方」の認識不足に起因します。

特に初心者が陥りやすいのが、

「ボルトのねじ部に、
せん断力(横方向の力)がかかる設計をしてしまう」

というケースです。

ボルト(ねじ)の構造を思い出してください。

ねじには「山」と「谷」があります。

もし、部材が横ズレするような力(せん断力)が、
この「ねじの谷」の部分にかかったらどうなるでしょうか?

谷の部分は断面積が小さいだけでなく、
形状的に「切り欠き効果」が発生します。

切り欠き効果とは、
形状の急激な変化部分に応力が集中する現象のことです。

つまり、計算上の引張強度やせん断強度が
どれだけ高くても、

ねじの谷底にピンポイントで横からの力が加わると、
そこに応力が集中し、
驚くほど簡単に破断してしまうのです。

ボルトは本来、

「締め付ける力(軸力)」によって部材同士を密着させ、
その「摩擦力」で固定するための部品です。

ボルトのねじ部そのもので
横からの荷重を受け止める使い方は、
原則として避けるべきなのです。

「折れない設計」にするための3つのアプローチ

では、横方向の荷重がかかる箇所には、
具体的にどのような設計をすればよいのでしょうか?

現場ですぐに実践できる解決策は、
以下の3ステップです。

【解決策1】部材の形状(凹凸)で受ける

最も確実なのは、
ボルトに頼らない構造にすることです。

部品同士の合わせ面に
「段差」や「インロー(はめ合い)」を設けます。

インローとは、
中心を合わせるように本体と蓋などが
ぴったりとはまる部分のことです。

横方向の力は、
この段差の壁面で受け止めるように設計します。

こうすれば、ボルトは純粋に
「部材を密着させる役割」だけに専念でき、
せん断力による破断リスクを回避できます。

【解決策2】ノックピン(平行ピン)を併用する

「形状を変更するのはコストがかかる」
「加工が難しい」

という場合は、
「ノックピン(平行ピン)」を追加します。

ボルト穴とは別に、
精度良く加工した穴(とも穴)をあけ、
そこにピンを打ち込みます。

横方向の荷重はこのピンが受け持ち、
ボルトは締結だけを受け持つという
「役割分担」をさせるのです。

これは構造を大きく変更することなく、
簡便に位置決めとせん断荷重対策ができる、
非常に一般的な手法です。

【解決策3】リーマボルトを使用する

スペースの都合などでピンが打てない場合は、
「リーマボルト」を選定します。

一般的なボルト穴は、
ボルトの呼び径よりも少し大きい
「ばか穴」になっており、隙間があります。

一方、リーマボルトは
軸部(ねじが切られていない部分)の精度が
高く作られています。

相手側の穴をリーマ加工などで高精度に仕上げ、
ボルトの軸部を打ち込んで使用します。

この「軸部」でせん断力を受けることで、
ねじの谷底への応力集中を防ぐことができます。

ただし、穴加工に精度が求められるため、
コストとの相談が必要です。

【ミニクイズ】設計者の常識チェック

ここまでの内容と、
関連する基礎知識について確認してみましょう。

Q1:ボルト穴の位置について

ボルトの座面(頭の部分)がしっかり接触するように、
ボルト穴の中心から部品の端(側面)までは、
最低どのくらいの距離を確保すべきでしょうか?

A. 穴の直径と同じ距離以上
B. 穴の直径の半分以上

Q2:溶接構造物への穴あけ

L字のアングル材や、
板を溶接した内側にボルト穴を設ける際、

最も注意すべき干渉物は次のうちどれですか?

A. 塗装の厚み
B. 溶接ビード(盛り上がり)や隅R

Q3:ねじの強度について

ボルトのねじ部に
せん断力(横方向の力)がかかる設計は、
一般的に推奨されるでしょうか?

A. 推奨される(ボルトはせん断に強いから)
B. 推奨されない(切り欠き効果で折れやすくなるから)

▼ ミニクイズの解答・解説は、ページの末尾に掲載しています。

独学の限界と「定石」を学ぶ意味

いかがでしたでしょうか。

「ボルトは摩擦で止める」
「せん断力はピンで受ける」
「溶接ビードを避けて穴をあける」

これらは、ベテランの設計者にとっては
息をするように当たり前の「定石」です。

しかし、学校の授業や独学の計算練習では、
なかなか扱われない
「現場の暗黙知」でもあります。

実際の設計業務は、

お客様からの仕様書
→ 構想設計
→ 詳細設計
→ 製造・組立
→ 試運転

へと進みます。

もし、ボルトの選定ミスや配置ミスに気づかないまま
製造工程まで進んでしまうと、

・組立現場で「ボルトが入らない」と怒られる
・納品後の保証期間中に故障が発生する
・無償修理や部品交換に追われる

といった事態になります。

OJT(実務)の中で失敗しながら覚えるのも一つの方法ですが、

設計ミスはコストの増大や、
最悪の場合は事故につながりかねません。

だからこそ、本格的な設計を任される前に、

「機械要素のセオリー」を体系的にインプットしておくこと

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・「計算は合っているのに、なぜかうまくいかない」
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【解答・解説】設計者の常識チェック

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【Q1】ボルト穴の位置について
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Q:
ボルト穴の中心から部品の端(側面)までは、
最低どのくらいの距離を確保すべき?

【正解】
A. 穴の直径と同じ距離以上

【解説】
ボルト穴の位置を決める際は、強度だけでなく、
「座面の確保」を考慮する必要があります。

もし、穴の中心から端までの距離が
「穴の直径」よりも短いと、

・ボルトの頭
・座金(ワッシャー)

が部品の端からはみ出してしまいます。

座面がはみ出すと、

・ボルトが斜めに締まる
・締め付け力が安定しない

といった原因になります。

また、ギリギリの位置に穴をあけると、

・スパナ
・レンチ

などの工具が入るスペースがなくなり、
「回せない」という初歩的な設計ミスにもつながります。

設計時には、

・ボルト頭のサイズ
・工具の振り幅

も考慮して、端面から十分な距離
(一般的には穴径以上)を確保しましょう。

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【Q2】溶接構造物への穴あけ
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Q:
L字アングルや溶接の内側に穴を設ける際、
最も注意すべき干渉物は?

【正解】
B. 溶接ビード(盛り上がり)や隅R

【解説】
L字型のアングル材や、
板同士を溶接した入り隅の部分には、

・隅R(アール)
・溶接ビード(盛り上がり)

が存在します。

図面上では直角の線で描かれていても、
実際にはこのRやビードがあるため、

壁際ギリギリにボルト穴を配置すると、

・ボルトの頭
・座金

がこれらに乗り上げてしまいます(干渉します)。

その結果、

・ボルトが穴に入らない
・座面が浮いて斜めに締まる

といったトラブルが発生します。

【対策】

1. 壁面から離す
溶接ビードやRの大きさを考慮し、
干渉しない位置まで穴を離す。

2. ザグリ加工を行う
寸法的に離せない場合は、
穴の周りを一段低く削る「ザグリ加工」を施し、
フラットな座面を確保する。

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【Q3】ねじの強度について
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Q:
ボルトのねじ部に
せん断力(横方向の力)がかかる設計は推奨される?

【正解】
B. 推奨されない(切り欠き効果で折れやすくなるから)

【解説】
ボルトのねじ部に、せん断力
(部材が横ズレするような力)がかかる設計は、
避けるべきです。

ねじには「山」と「谷」がありますが、
谷の部分に力が加わると形状的な

「切り欠き効果」

が発生し、そこに応力が集中します。

そのため、計算上の強度よりもはるかに脆く、
容易に破断してしまう恐れがあります。

【正しい設計の考え方】

ボルトは基本的に、

「締め付ける力(軸力)」によって発生する摩擦力

で部材を固定するものです。

大きなせん断力がかかる箇所には、
以下のいずれかの対策を行うのが設計の定石です。

1. 凹凸を設ける
部品同士に段差やインローを設け、
形状で荷重を受ける。

2. ピンを併用する
ノックピン(平行ピン)を追加し、
ピンにせん断力を受け持たせる。

3. リーマボルトを使う
ねじが切られていない軸部(中実部)の精度が高い
「リーマボルト」を使用し、
軸部で荷重を受ける。

いかがでしたでしょうか?

こうした知識は、カタログスペックや計算式だけではなかなか見えてこない「現場の定石」です。

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