投稿日:2022年06月23日
からくり改善のコラムは、以下の様に9回に渡って連載を予定しています。
からくり改善の概要や進め方を知りたい方は、以下の目次を参照いただき、バックナンバーをご参照ください。
過去3回のコラムでは、からくり改善の概要や改善の進め方の流れ、事前準備の仕方を説明しました。
これから3回に渡って改善事例集の作り方や検索のし易さ、改善に活用できる機構やアイデアを整理し紹介する予定です。
今回は、以下の4点についてご紹介します。
1)他者が作成した改善事例を収集する。
2)集めた改善事例に早くアクセスし、活用できる様に目次を作成する。
3)他者の事例集を参照し、自部門のニーズに合った改善事例集の定型フォームを作成する。
4)上記で作成した改善事例集のメンテナンスルールを検討する。
1.改善事例の情報収集
先ずは世の中のからくり改善事例を収集し、概要を把握します。
収集方法として、例えばインターネットのホームページから情報を収集する方法や書籍等から情報収集する方法があります。
1)インターネットによる情報収集
インターネットによる調査は安価ですが、書き方が統一されていないことが多くあります。
主にコンサルティングやセミナー主催を主目的としてPRされている事例がありますが、意外に肝心な部分が記載されていません。
一方、からくり改善に使用する部品を販売しているメーカでは、からくり改善に使用する商品を販売されているため、細かく商品の活用事例をPRされています。
またインターネットの情報には偽情報が含まれることがあるので見極めが必要ですが、部品メーカは会社の看板を背負っているという点で安心感があります。
今回はからくり改善事例のHPが良くまとまっているメーカを代表してご紹介します。
・イマオコーポレーションの事例
https://www.imao.co.jp/kaizen_page_1.html
・SUSの事例
2)書籍から情報収集
書籍は有償になりますが、書き方が統一されており内容が良くまとまっているので、事例や改善アプローチを参考にすると良いでしょう。
書籍は大きく分けて2つの視点の書籍があります。
目的に合った書籍を選定すると良いでしょう。
現場主導で進める場合には以下のa)、設計者向けの機構等の改善例を把握したい場合はb)の書籍をお勧めします。
a)からくり改善の概要を理解するための書籍
・からくり改善事例集
b)実際にからくり機構を設計するための書籍
・からくり設計 メカニズム定石集
・実用メカニズム辞典
2.改善事例の整理
概要を把握する上では記載フォームは問いませんが、様々なフォームが山積みされた事例では情報を上手く取り出すことが出来ず、活用が難しい場合があります。
この様な状態に成らないために、少しだけ情報整理に時間を掛けることで早く情報を引き出せる様に改善に努めましょう。
1)カテゴリー作成のポイント
- シンプルで直感的な階層構造を検討し、適切な数のカテゴリー数、分類で構成する。
- 複数の検索シチュエーションに対応、素早く辿り着くことを考えてカテゴリーを決める。
- 基本的にカテゴリーは選択式とし、極力文字入力を減らすと良い。
以下の様にExcelやAccess等で情報整理するためのシートを作成し、目次を作成すると良いでしょう。
目次に記入する内容は、自由記述を最小限にする様に努め、事前に各項目の選択肢を決めて、例えば改善カテゴリーの場合は、工数削減、リードタイム短縮、品質改善の様に選択肢を決めることで、同一カテゴリーの改善事例を素早く見つけることができます。
先ずは、あまり欲張り過ぎず、記入の手間を減らし定着させることに重きを置き、不足な項目があれば付加していくと良いと思います。
改善事例集の目次作成記入例は、表1を参照ください。
極力、改善カテゴリーや技術分野は選択式にし、改善効果の単位を統一して記入する様にすることで、検索性や比較し易すくなる様に、フォームを作成されると良いでしょう。
2)間違った改善事例の整理
時々、事例集を数枚に整理し簡略版を作成する活動をされる方がいますが、現状ある資料を上手く活用できる様にすることで省略が可能です。
つまり優先すべきは全体の物量を把握するための見える化であり、再整理の必要性の判断は別途時間に余裕が有ったら進めましょう。
全体の物量を把握しないまま、部分的に綺麗に整理する作業を進めて、いつになったら作業が完了するか解りませんし、この様な進め方では達成感が得られず改善作業に疲れて活動が中断してしまうことがあるからです。
3.改善事例作成の記入ルールを決定
2項の検討で、他者がまとめた改善事例の目次の整理方法について検討しました。
一方これから自職場でからくり改善を進めた成果を、どの様にまとめるかを事前に話し合いをしましょう。
基本として前項で検討した改善事例の目次にある項目と合わせること、それに加えて残したい情報のフォームを作成し運用しましょう。
定型フォーム作成のポイントとしては、予めフォームを決めることと、チェックシートを作り、例えば、改善前の写真を撮影し忘れた、ということが無い様に各場面におけるチェック項目を明確にして進めましょう。
それから検討の過程も参照出来る様に、議事録の図書番号を記載する等のルールを明確にしましょう。
改善事例集の定型フォームの作成例は、図1を参照ください。
以下の例の様に改善前後で改善された点と改善ポイントが明確に記載されていると、他の参考として活用し易くなり良いでしょう。
図1.改善事例集の定型フォームと記入例
4.資料のメンテナンス
資料の作り方まではルール決めされているが、そこで議論が止まり、膨大な資料が溜まることが多くあります。
予め上記1~3項で検討することは非常に重要なのですが、実際に運用する前に検討したルールを頑なに守って運用することは重要ではありません。
定期的に図書をメンテナンスすることと、実際に運用して改善すべき点があれば、定期的に問題点を共有し、改善する習慣作りが必要です。
上記のサイクルを回すことで、からくり改善事例集からより的確に情報を取り出せる姿を目指しましょう。
まとめ
さて、いかがでしたでしょうか。
ここまでの説明で、からくり改善事例の収集方法や目次の作成、自部門における改善事例集の定型フォーム作成やメンテナンス方法についてご理解いただけたでしょうか。
この記事でのポイントをおさらいすると以下の通りです。
1.からくり事例の情報収集
過去に他者がまとめた技術情報をHPや書籍から収集し、事例を素早く収集する。
2.事例集の目次作成
改善のカテゴリーを分類して目次を作成することで、素早く事例を引き出せる。
自職場のシチュエーションに合せて検索カテゴリーを決め、自由記述欄は最小限とし、選択肢を事前調整する。
3.改善事例集作成の記入ルールの決定
過去の他社事例を参考にし、自職場が技術情報を保存するシチュエーションを想像し、定型フォームを決める。
4.改善事例集のメンテナンスルール決定
上記2、3は未来を良くする姿を想像し、仮に情報不足でも、後から追加すれば良い。
最初から完璧を目指して萎縮した活動になるぐらいなら、8割で良いので先ずは実践する。
使い熟して新たな改善点を話合い、完全な仕組みを作り上げていけば良いのです。
今回ご紹介したからくり改善事例の作成方法は、他業務においても過去の技術資料をまとめる際に活用できる内容ですので参考にしてください。
次回は、具体に改善案を創出するための準備について解説します。
具体的には経験が浅い方でも同じ様にアイデアを発想できる様にからくり機構について解説する予定です。
今後も引き続き、からくり改善のコラムをご覧いただき、業務に活用していただければ幸いです。