『設計者も知っておきたいITエンジニアの知識』

投稿日:2022年03月15日

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機械設計に携わる人は機械工学の学習が必須ですが、意外にもITエンジニアの知識が必要な時があります。

ITエンジニアの職種で思い浮かぶのは、システムエンジニア(SE)やプログラマなどではないでしょうか?

しかしながら、これらの職種はITエンジニアと呼ばれる中でもごく一部であり、もっと広義な意味で情報処理系の知識が機械設計に関わることがあるのです。

パソコンの性能不足で作業が止まる

学生時代に「パソコンをほとんど使わなかった」という方が、けっこうな割合で存在します。

確かにスマートフォンやタブレットはとても便利です。

しかしながら、機械設計の現場で扱うのはWindows OSが組み込まれたパソコンが中心なので、基本的な操作は覚えておきたいところです。

また、3DCADなど高性能なソフトウェアを動かすには、以下のパソコンパーツが優れている必要があります。

【CPU】

中央処理装置(Central Processing Unit)と呼ばれ、コンピュータの頭脳であり心臓部です。CPUの性能が高ければ、いわゆる「サクサク動く」という状態が保たれ、快適にパソコンを操作することができます。

【GPU】

画像処理装置(Graphics Processing Unit)と呼ばれ、3Dグラフィックの描画に必要な演算装置です。3DCADの計算処理にも大きく関わり、性能が低いとソフトウェアの動作が不安定になります。

【メモリ】

コンピューターの計算処理を一時的に記憶する装置です。数値が高ければ処理速度も高くなります。よくUSBメモリやHDD(ハードディスク)、SSD(ソリッドステートドライブ)と混同する方がいますが、まったくの別物です。

【ストレージ】

データを長期保存するための記憶装置です。代表的なものにHDDやSSDがあります。少し前まではHDDが主流の記憶装置でしたが、現在はSSDに人気が集まっており、書き込み速度も向上しています。

大手家電メーカーで販売されるパソコンは「ネットの閲覧だけできればいい」という考えなので、CPUやメモリーの仕様が重要視され、3Dグラフィックの描写に関わるGPUの性能が低い場合があります。

しかしながら、3DCADのようなソフトウェアを動かすには、市販のパソコンでは性能不足に陥る可能性があります。

近年では、3DCGを専門とするゲーム業界の盛り上がりにより、GPUの重要性を理解している方も多いのではないでしょうか?

基本的に「CPU・GPU・メモリ」のバランスが優れていれば3Dの描画が安定するため、自分の扱うパソコンの仕様を把握しておくと、作業効率もアップすると思われます。

試しにWindows OSのタスクバーにある検索ボックスへ「dxdiag」と入力してみましょう。

上記の画像は個人のノートパソコンを診断したものですが、ディスプレイの項目を見るとグラフィック性能の劣るGPUのため、高性能の3DCADが動かない可能性があります。

またソフトウェアの不具合も、これらのパーツがアップデート(ドライバーの更新)されていない、メモリ不足、排熱が悪いなどが要因となるため、ある程度のパソコン知識が必要になる場合があるのです。

設計作業に欠かせないデータ管理について

設計のデータファイルは、基本的に他人と「共有」しながら作業を進めます。

個人用のパソコンにデータを保存してしまうと、設計した内容を他の社員が確認できないため、一般的にサーバと呼ばれる場所に保管します。

サーバ(Server)とは、ネットワークを使ってファイルを共有する装置のこと。

様々な人がアクセスする可能性があるため、当然ながらセキュリティ管理も万全である必要があります。

大手メーカーでは、設計とサーバ管理の部署が明確に分かれているところが多く、サーバ管理を行う技術者が企業の財産となる設計データを守っています。

しかしながら、多くの企業は部署ごとにサーバが設置され、部署内の人材がサーバ構築やデータ管理を担うことになります。

新人の方はデータ管理を任される場合もあるため、サーバの知識を学んでおくと将来の役に立つでしょう。

【サーバ管理の一部】

●サーバの構築

  • サーバ構成の設計(ラッキングや配線など)
  • サーバOS(UNIX、Windowsなど)やアプリケーションのインストール
  • 設定の確認

●サーバの運用・保守

  • ネットワーク管理(IPアドレスやユーザーの管理など)
  • 不具合の改善やハードウェアの修理
  • セキュリティ管理(ウィルス対策や不正アクセス防止など)

また近年では、クラウドベースでファイル管理する企業も増えてきましたので、これら外部委託サービスの仕組みを知るのも仕事の一つに入ります。

今後はWindows 11へのアップデートなどが影響し、様々な要因でハードウェアおよびソフトウェアの不具合が発生する可能性があるため、データ管理を通してパソコンの知識を深めておくと良いかもしれません。

機械設計にプログラミングの知識は必要?

「ITエンジニア」と聞くと、すぐに頭に浮かぶ職種がプログラマですが、プログラミングは機械設計の技術者にとってほとんど必要のないスキルです。

ただし、IoT関連の製品開発や企業WEBサイトの更新など、その知識が稀に役立つことがあります。

これらは専門家に任せることが大半ですが、プログラミングも身近な技術になった影響から、簡単な入力作業を企業内の人材で完結させるところもあるのです。

ちょっとしたインターフェースの改善や、WEBサイトのデザイン変更くらいは、プログラミングを聞きかじった人でもできることがあります。

しかしながら、本格的なGUIの設計およびWEBサイトの運用などは、専門家に任せなければ必ず問題が発生し、企業に甚大な損害を与える可能性があります。

現在は、機械製品の開発と情報処理系の技術は切っても切り離せない関係になりました。

私たちはあくまで機械設計の技術者ですが、標準的なプログラミングの知識を学び、「できる・できない」の判断をするのも大切な仕事になるかと思われます。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

基本的に機械設計の技術者は、情報処理系の仕事を専門家に任せるというスタンスで大丈夫です。

しかしながら、外部の人間に任せるということは、そこにコストと手間が必ず発生します。

小さな不具合に何度も人の手を借りるのは本末転倒なので、必要最低限のパソコンの知識は身に付けておきたいところです。