投稿日:2021年11月29日
「すべり軸受ところがり軸受の違いって何だろう?」
「それぞれの軸受をどうやって使い分けたらいいか知りたい」
今回はこのような疑問に答えていきます。
それぞれの軸受を知ってはいても、
具体的な特徴に関しては、まだ理解しきれていない
設計初心者の方もいるのではないでしょうか。
そこで本コラムでは、
すべり軸受ところがり軸受の特徴(メリット・デメリット)や、
各軸受の使い分けについて解説します。
適切な選定を行うには、
それぞれの軸受のメリットとデメリットを把握して、
使用条件に合った軸受を選ぶことが重要です。
設計初心者の方は、ぜひ本コラムを読んで学んでみてください。
軸受とは?
軸受(ベアリング)とは、
回転する軸を支えて、回転による摩擦を減らす機械要素のことです。
軸受は軸との接触の違いから、
「すべり軸受」と「ころがり軸受」の2種類に分類されます。
すべり軸受はメタルやブッシュと呼ばれることもあり、
軸受と軸との間に潤滑油を入れて、摩擦を減らす構造になっています。
一方ころがり軸受はボールベアリングとも呼ばれ、
ボールがころがることで軸の回転を滑らかにする構造です。
次項からは、
それぞれの軸受の特徴や用途について解説します。
すべり軸受(メタル・ブッシュ)の特徴
出典: オイレス工業株式会社
まず、すべり軸受の特徴や用途の解説です。
すべり軸受は、
軸受と軸の間に油膜が介在することで回転を支えています。
すべり軸受の特徴(メリット・デメリット)としては、以下の表の通りです。
すべり軸受のメリット | すべり軸受のデメリット | |
〇 耐衝撃性に優れる (油膜が衝撃を吸収してくれるため、ころがり軸受より衝撃に強い) |
× 安定して潤滑する必要がある (無給油ブッシュ※は除く) |
|
〇 寿命が長い (ころがり軸受と違い、軸受と軸が直接接触しないため摩耗しにくい) |
× 高速回転の使用には向かない (高速だと温度上昇によって油の粘性が低下し、焼き付く可能性がある) |
|
〇 騒音および振動が小さい (油膜により騒音や振動の減衰が起こる) |
× 起動時および運転中の摩擦係数が大きい (停止時には油膜ができていないため、起動時に軸受と軸が直接接触してしまう)(ころがり軸受に比べて接触面積が大きいため、摩擦も大きくなってしまう) |
|
〇 軸受サイズに対する許容荷重が大きい (ころがり軸受と違い、ボールがないためサイズを小さくできる) |
× 振れ精度が劣る | |
〇 異物に対して強い (軸受に柔らかい材料が使われることが多く、異物が入り込んでも埋没してくれる) |
× 規格化されていない |
※無給油ブッシュはすべり軸受の1種であり、
多孔質中に油を含ませたり潤滑剤を埋め込んだりすることで
自己潤滑性を備えています。
メーカーの製品によっては、
オイレスベアリングと呼ばれることもあります。
無給油ブッシュは、
その名の通り無給油、または
給油回数を減らせるのがメリットです。
また、構造が簡単でコストも安いため、
すべり軸受のなかでも使用頻度の高い製品です。
ころがり軸受(ボールベアリング)の特徴
次に、ころがり軸受の特徴を解説します。
ころがり軸受は、
ボールを利用した「ころがり」によって
荷重を支える構造です。
ころがり軸受の特徴(メリット・デメリット)としては、
以下の表の通りです。
ころがり軸受のメリット | ころがり軸受のデメリット | |
〇 高速回転での使用に向く | × 耐衝撃性に劣る | |
〇 起動時および運転中の摩擦係数が小さい | × 寿命が短い | |
〇 高精度のため軸振れが少ない | × 騒音および振動が大きい | |
〇 規格化されているため入手性に優れる | × 軸受サイズの割に許容荷重が小さい | |
〇 比較的コストが安い (ただし、すべり軸受の無給油ブッシュなども安価) |
× 異物の侵入に弱い |
【性能的にはすべりが有利】各軸受の使い分け
すべり軸受ところがり軸受を比べた場合、
一般的にはすべり軸受が性能面で有利です。
すべり軸受のほうが、
さまざまな環境で利用することができます。
それぞれの軸受に適した使用条件を
以下の表にまとめます。
各軸受の使い分けは、
この表を参考にするといいでしょう。
すべり軸受が適した使用条件 | ころがり軸受が適した使用条件 |
・低速回転・衝撃荷重を受けるところ ・長寿命が求められる製品 ・スペースの問題でコンパクトな設計が必要なところ ・粉塵などの異物対策が必要なところ ・軸の振れ精度が重要でないところ ・給油できないところ(※無給油ブッシュに限る) |
・高速回転・摩擦を小さくして機械への負荷を抑えたいところ ・軸の振れ精度が必要なところ |
まとめ
今回は、
すべり軸受ところがり軸受の特徴や使い分けについて解説しました。
それぞれの軸受を比べた場合、
性能的にはすべり軸受が有利です。
またコストに関しても、
特注品などではなく量産品の軸受であれば、
すべり軸受もころがり軸受も安価です。
したがって、
「高速回転」
「摩擦を小さくしたい」
「振れ精度が必要」
といった条件以外では、
基本的にすべり軸受を選ぶといいでしょう。
今回紹介した内容が、
ご参考になりましたら幸いです。
なお、「他の機械要素についても特徴や使い分けなどを学びたい」
という方は、
MONO塾の機械要素入門講座がおすすめです。
よく使う機械要素を中心に32種類を動画で学習して頂けます。