投稿日:2019年01月15日
新人時代、こんな経験はありませんか?
先輩の図面を参考にして、
「前回の機種もこの材料だったから」
という理由だけで、とりあえず材質欄に
「SS400」や「SPCC」
と記入する。
そして迎えた設計審査(DR)。
上司:
「ここの部品、なんでSS400にしたの?」
あなた:
「あ、えっと…前の機種もそうだったので…(汗)」
上司:
「今回の仕様だと、重量オーバーじゃないか?」
背中に冷や汗が流れる瞬間です。
「とりあえず鉄(SS材)にしておけば安心」
という思考停止は、エンジニアの成長を止めるだけでなく、
製品トラブルの原因にもなりかねません。
今回は、「なんとなくの流用」から脱却し、
「なぜその材料なのか?」を論理的に語れるようになるための
基礎をお伝えします。
なぜ「前と同じ」ではいけないのか?
ものづくりの現場で、過去の図面を流用することはよくあります。
しかし、それは「設計意図」を理解した上での話です。
製品に求められる「要求」は、機種ごとに変化します。
例えば、
・今回は「軽量化」が最優先かもしれません
・使用環境が変わり「耐腐食性」が必要かもしれません
もし設計者が、
「ずっと鉄で作ってきたから」
と考え続けていたら、
進化する製品の要求に応えることはできません。
材料選択とは、
「過去の図面を写す作業」ではなく、
「製品への要求(強度・コスト・重量など)を
材料特性に翻訳する作業」
なのです。
極端な例で考える「材料選びの基準」
教材にある「ロボットアーム」の設計を例に考えてみましょう。
長期間、正確に動作し続けるロボットアームを作る場合、
あなたなら何で作りますか?
・プラスチックで作りますか?
軽くて安いですが、強度不足で折れるかもしれません。
・木材で作りますか?
加工しやすいですが、寸法精度が保てず、
正確な動作ができないでしょう。
・金(Gold)で作りますか?
重すぎて巨大なモーターが必要になり、
価格が高すぎて誰も買ってくれません。
極端な話ですが、これが材料選択の本質です。
設計者は、その部品に対して
「譲れない条件」
「優先順位」
を整理し、最適解を見つける必要があります。
まずは「3大材料」のモノサシを持とう
初心者がまずやるべきことは、
すべての材料を丸暗記することではありません。
基準となる3つの材料の特性を
比較できるようになることです。
・鉄鋼(SS400など)
・アルミニウム合金
・プラスチック
① 鉄鋼(SS400、S45Cなど)
重量:重い(比重 約7.8)
強度:非常に高い
特徴:
最も一般的で安価。
「重くてもよいから頑丈・安価に作りたい」場合に選択。
② アルミニウム合金
重量:軽い(比重 約2.7、鉄の約1/3)
強度:鉄より低いが実用十分
特徴:
「強度もほしいが軽量化したい」場合に選択。
③ プラスチック
重量:非常に軽い(比重 約1)
強度:金属の約1/10程度
特徴:
複雑形状を大量生産するのに向く。
まずはこの3つをモノサシとして持ち、
「鉄だと重すぎる → アルミ」
「強度不要 → プラスチック」
という比較から始めましょう。
【ミニクイズ】材料選択のセンスを磨く
Q1.
強度は不要だが、複雑形状を1万個以上安価に作りたい。
最適な材料は?
A. 炭素鋼(SS400)
B. アルミニウム合金
C. プラスチック
Q2.
鉄とアルミニウム合金の重量比較として正しいのは?
A. アルミは鉄より重い
B. アルミは鉄の約1/3
C. ほぼ同じ
▼ ミニクイズの解答・解説は、ページの末尾に掲載しています。
「なんとなく」を卒業し、信頼される設計者へ
「とりあえずSS400」と書く前に、
一度だけこう自問してみてください。
「なぜ、この材料なのか?」
理由を説明できるようになるだけで、
設計の品質は大きく変わります。
材料の世界は奥が深く、
・熱処理による硬さの変化
・加工性
・耐食性
など学ぶことは山ほどあります。
独学が大変だと感じる方は、
体系的に学べる講座の活用もおすすめです。
正しい知識は、エンジニアとしての一生の武器になります。
ぜひ次回の設計から、
「なぜこの材料なのか?」を考えてみてください。
さらに深く学びたい方へ
機械材料の基礎から、
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。
【解答・解説】材料選択のセンスを磨く
メルマガのミニクイズに挑戦していただき、ありがとうございます。
ここでは、正解と「なぜその材料が選ばれるのか?」という詳しい解説をご紹介します。
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Q1. 強度は不要だが、複雑形状を1万個以上安価に作りたい。最適な材料は?
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【正解】
C. プラスチック
【解説】
この問題の決め手は、以下のキーワードです。
・強度は不要
・複雑形状
・1万個以上(大量生産)
・安価
■ プラスチック(正解)
教材でも解説している通り、プラスチックは
「複雑な形状であっても、金型を用いることで大量に生産することができ、
しかも安く作ることができる」
という大きなメリットがあります。
強度は金属の約1/10程度と弱いですが、今回は
「強度は不要(カバーなど)」という条件なので、
最も合理的な選択となります。
■ 炭素鋼(SS400)
最も一般的で安価な金属ですが、
・複雑形状 → 切削加工が必要
・1万個 → 加工時間・加工費が莫大
・重量 → プラスチックの約8倍
となり、単なるカバー用途には過剰です。
■ アルミニウム合金
「ダイカスト」を使えば量産可能ですが、
・材料単価が高い
・強度が不要な用途にはオーバースペック
となり、コスト面で不利です。
<設計のポイント>
・強度がそこまで必要ない
・数量が多い
・形状が複雑
この3条件がそろったら、まずは「プラスチック」を第一候補にしましょう。
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Q2. 鉄とアルミニウム合金の重量比較として正しいのは?
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【正解】
B. アルミは鉄の約1/3
【解説】
これは設計者が必ず身につけておきたい「重さの感覚」です。
・鉄(炭素鋼)の比重:約 7.8
・アルミニウム合金の比重:約 2.7
計算すると、
アルミニウム合金 ≒ 鉄の約 1/3 の重量
になります。
「鉄だと重すぎる」という場合の代替案として、
まず検討されるのがアルミニウム合金です。
たとえば、
・鉄 → アルミへ材質変更
→ 強度をある程度維持
→ 重量を約 1/3 に低減
といった設計改善が可能です。
※ただし、剛性や強度の再計算は必須です。
<覚えておきたい比重の目安>
・鉄 :約 7.8
・アルミ :約 2.7(鉄の1/3)
・プラスチック:約 1.0 ~ 1.5(水に浮くものもあり)
この「モノサシ」を持つだけで、材料選定のスピードは大きく向上します。
解説は以上です。
いかがでしたか?
「なんとなく」ではなく「理由があって」材料を選べるようになると、
設計はもっと面白くなります。
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