投稿日:2026年11月5日
新しい技術の開発を進めたいのに、日々の不具合対応で時間がなくなる。
将来に向けたテーマが、いつも後回しになってしまう。
設計リーダーとして、そんな状況に悩んでいないでしょうか。
私も、海外市場向けの製品で不具合対応に追われた際、本来投資すべき次世代技術への人や時間が足りなくなっていくことに危機感を覚えました。
目の前の問題を解決することは、顧客との信頼を守るために必要です。同時に、将来の製品や技術を育てる仕事にも取り組まなければなりません。この両方をどう成り立たせるかは、技術経営を現場で考えるうえで重要な課題です。
今回は、忙しさを個人の努力だけで解決しようとする前に、設計リーダーとして確かめておきたい点をお伝えします。
技術を経営資源として見ると、時間の使い方が変わる
私は、現場での経験を通じて、技術を磨く対象から、利益を生むための経営資源として捉え直すようになりました。
経営資源として考えると、技術の優劣に加えて、どのテーマへ人や時間を振り向けるかも重要になります。技術的に興味深いテーマでも、顧客の課題や事業とのつながりが曖昧なままでは、取り組みを続ける根拠を説明しにくくなります。
一方、目の前の不具合対応にも、内容の違いがあります。直ちに必要な対応と、同じ問題を繰り返さないための改善では、目的も進め方も異なります。
まず、何に時間を使っているかを分けて見ることが、仕事の配分を考える出発点になります。
不具合対応の時間を、三つに分けて見てみる
ここからは、私の経験を踏まえてお勧めしたい整理の方法です。不具合対応に関わる仕事を、次の三つに分けて書き出してみてください。
1.いま発生している問題への対応
顧客や製品の状況を確認し、必要な対応を行う仕事です。何が起きているのかを把握し、影響を抑えるための行動を取ります。
この仕事は、対応件数だけで見ると負担の実態を捉えにくいことがあります。調査、調整、設計変更、確認など、どこに時間がかかっているかを確かめることが大切です。
2.同じ問題を繰り返さないための改善
原因を調べ、設計や評価の基準へ反映する仕事です。目の前の製品への対応が終わっても、その経験が次の設計で使える形になっているかを確認します。
私は海外向け製品での経験から、現地の環境を社内評価でどう再現するかという判断基準をつくることを重視するようになりました。個別の対応でわかったことを、次の設計判断へつなげる視点です。
3.改善した内容を共有し、使える状態にする仕事
調査結果や設計上の判断が、担当者の記憶にとどまっていないかを見ます。どの条件で起きた問題なのか、何を確認すべきなのかが伝わらなければ、別の担当者が同じところでつまずく可能性があります。
資料を残す際には、結論だけでなく、その判断に使った条件や理由も記録すると、ほかの設計へ適用できるかを考えやすくなります。
この三つを分けると、対応そのものに追われているのか、再発を防ぐ改善や共有まで手が回っていないのかを話し合いやすくなります。
将来の開発テーマにも、続ける根拠を持つ
不具合対応を整理する一方で、将来に向けた開発テーマについても見直したい点があります。
限られた時間を使う以上、技術的に難しいことに取り組んでいるという説明だけでは、優先順位を決められません。どの顧客の、どの課題に応える技術なのかを明らかにする必要があります。
テーマごとに、次の四つを短く書き出してみてください。
- 誰の、どのような課題を解決するための技術か。
- 現時点で確認できている事実と、まだ確かめていない仮説は何か。
- 次の判断に進むために、何を検証する必要があるか。
- その検証に、どのような人・時間・費用が必要か。
この整理によって、何を確かめながら進めるかを共有できます。事業とのつながりが見えないまま人や時間を使い続けることを防ぐためにも、検証する内容を明確にしておきたいところです。
「時間が欲しい」を、判断できる提案に変える
新しい開発の時間を確保したいとき、「現場が忙しいので人を増やしてほしい」と伝えるだけでは、どの仕事に、どれだけの支援が必要かが伝わりません。
例えば、次のように説明すると、話し合う対象が具体的になります。
「現在は、個別の不具合対応に時間を使っています。原因を評価基準へ反映する仕事まで手が回っていないため、まず、その改善に必要な時間を確保したいと考えています。並行して、次の開発テーマで何を検証するかを絞り込みます。」
大切なのは、何を改善するための時間なのか、そこで何を確かめるのかを伝えることです。
将来の開発についても、すべてのテーマを同時に進める前に、今、検証する価値が高い問いを選ぶ。設計リーダーには、その判断を技術と事業の両面から支える役割があります。
自分たちの仕事と、事業のつながりを見えるようにする
不具合を解決する力も、新しい技術を生み出す力も、企業にとって大切なものです。両方を生かすには、担当者の頑張りに任せるだけでなく、経験を次へつなぎ、どこへ人や時間を使うかを考える必要があります。
私がMOT、すなわち技術経営を設計リーダーに学んでいただきたいのは、こうした判断に関わるためです。技術を理解している人が、その技術を何に役立て、どう育てるかを語れるようになってほしいと考えています。
まずは、今ある仕事を一つ取り上げ、「これは目の前の問題への対応か、繰り返しを減らす改善か、将来への検証か」と整理してみてください。仕事の目的を言葉にすることが、配分を見直す話し合いの入口になります。
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