機械製図のJIS改定で何が変わったのかをまとめる(GPSや幾何公差について解説)

投稿日:2022年03月30日

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機械製図に関わるJISが2016年、2019年にわたり改定が行われていますが、一体何が変わったのかは、あまり知られていません。その為、その改定がまだ反映されていない職場はまだ多くあるかと思います。

古くからの付き合いがある加工メーカーでは、まだ旧JISの方が伝わりやすいというのが現状ですし、もしかするとまだ数年は移行期間のような扱いになるかもしれません。

しかし、これから設計の現場では、若手の機械設計者は、大学で新JISで習って社会にでてきます。一方で、ベテランの設計者がこのJIS改定内容を知らないという状況になってしまうのです。

その為、何が変わったのかを「まだ知らないよ」という人は、早いうちに理解しておきましょう。

2016年と2019年に何が変わったのか?

大きく変わったのは「寸法」という用語の定義変更が行われたことです。改定前のJIS1998年の寸法の定義では、物体の形状や2物体の距離を「長さ寸法」、「位置寸法」、「角度寸法」を一色淡に寸法と呼び、図面上で長さや角度を示していました。

しかし、ISOとJISでその定義が異なっていることが問題とされて、2016年の改定により、以下表の寸法という定義が、さらに細かく細分化されています。その結果、「寸法」と呼ばれるものはすべて「サイズ」に置き換わっています。

図面に表記する際は注意が必要です。従来の「寸法公差」や「実寸法」と呼んでいた用語は、それぞれ「サイズ公差」や「当てはめサイズ」に変更されています。なんだかまだ呼び慣れないですね。

表.規格用語の変更

改定前

改定後

基準寸法 図示サイズ
実寸法(計測値) 当てはめサイズ
最大許容寸法 上の許容サイズ
最小許容寸法 下の許容サイズ
上の寸法許容差 上の許容差
下の寸法許容差 下の許容差
許容限界寸法 許容限界サイズ
寸法公差 サイズ公差
基本公差 基本サイズ公差
公差等級 基本サイズ公差等級
公差域 サイズ許容区間
穴基準はめあい 穴基準はめあい方式
軸基準はめあい 軸基準はめあい方式
はめあい方式 ISOはめあい方式

2物体間の距離は幾何公差で表すようになる

従来ですと、長さや位置を表す際の、公差と言えば「寸法公差」を使って図面を作っている人がほとんどでした。

しかし、JIS改定後は、「円の位置」「2つの平面の間の距離」を示す場合は、その距離は「位置」を示す数値とし、幾何公差を使わなければいけないことになります。

図.JIS改定前と改定後の違い(円の位置)

 

図.JIS改定前と改定後の違い(2つの平面の間の距離)

そもそも幾何公差を使用せずとも、従来の寸法公差で十分表現できるのに、何が問題なのか!と疑問に思うベテランが大多数だと思います。

しかし、欧米諸国では、線の長さは従来通り「サイズ公差」を使用し、中心線や2つの面の位置を示す際は、幾何公差を使用しているのです。

図.位置を示す場合は、幾何公差を使用しないと欧米では受け取ってもらえないかもしれません

新たに標準指定演算子と特別指定演算子の導入

JIS改定によって変わった公差の記載方法の変更点である、標準指定演算子(default specification operator)と特別指定演算子(special specification operator)の導入について説明します。

標準指定演算子は、ISOの表記やJISの従来のサイズ公差の書き方と同じです。以下、図を参照してください。

JISの改定によって、今までの公差の表記方法を「標準指定演算子」と呼ぶことになりました。下の図では、円柱の直径と水平2平面間の距離を公差を用いて表現しています。

図.サイズの基本的な標準指定演算子の例(図示サイズ±許容差)

 

図.サイズの基本的な標準指定演算子の例(ISOコード方式)

もう一方の「特別指定演算子」は、2016年の改定によって新たに加わった寸法の表現法で、幾何特性仕様(geometricaloduct specification: GPS)により表記を行います。

いきなりGPSって何だ?となる人もいるかもしれませんが、下の表の記号を組み合わせることで、寸法に注釈を付加しているんだと捉えてください。参考に使用例を載せています。

表.特別指定演算子で指定する新たな記号

表.特別指定演算子で条件をしていする場合に使用する記号

図.各使用例の紹介

なぜ改定が必要なのか?

ISO14660-1の幾何特性仕様(geometricaloduct specification: GPS)の考え方と合わせるために、改定を行っているようです。

これから海外からの技術者の受け入れや海外企業との技術協力が必要になった場合に、ISOのGPSの考え方を取り入れている欧米諸国に合わせるべきだ、という背景があるのだと思います。

これまでの図面作図の際の考え方と、GPSでは何が違うのでしょうか?少しややこしいのですが、JIS B 0672-1(製品の幾何特性仕様(GPS)-形体-第1部:一般用語及び定義)の私なりの解釈も含めて考察してみます。

GPSではモノを加工するためにはその対象の形体(形状)を、「外殻形体」「誘導形体」「サイズ形体」の3つの点や線でとらえるべきとされています。

「外殻形体」・・・物体の外表面の線

「誘導形体」・・・中心線など

「サイズ形体」・・・大きさや角度を指定することで表現できる円筒や球や角柱等のシンプルな形状

たとえば、ある物体と同じモノを製作する場合をイメージしてください。設計図を書くときは以下の2つのケースで図面を製作したとします。

(ケース1)実物表面を3Dトレース(スキャン)し、その数値データを図面に出力する。

(ケース2)円柱、角柱、球体を組み合わせてその実物に近い形になるように図面に書く。

この2つのケースで図面を書くと、ケース1の方が正確に物体をとらえることができ、ケース2は計測する器具や計測する人によってばらつきがでたり、組み合わせる物体によりあいまいさが残ることになります。

この2つのケースをそれぞれGPSで定義している「外殻形体」「誘導形体」「サイズ形体」の3つに置き換えると、

(ケース1)・・・「外殻形体」による設計なのでより正確な図面

(ケース2)・・・「誘導形体」&「サイズ形体」による設計なので形状誤差が大きい

になると解釈できます。

このように考えると、モノを設計し、加工製作する際はこの3つ形体のどれかを定義し、計測している為、同じ対象物でも設計図に書いた時点で正確さに違いがあることになります。

そのように形体を分類し、形状のあいまいさを表現したGPSの考え方と、従来の形状問わずなんでも寸法(長さ・角度)で表現してしまうという考え方に、乖離が大きくなったため、JIS改定になったのではと考えています(個人的な解釈です)。

つまり、従来の私たちがノギスで計測して図面に書き起こす際の寸法は、GPSの考え方では「サイズ形体」のサイズを計測していることになります。

一方で、3Dスキャナーで測定したデータは、「外殻形体」の外表面の線を取得していることになります。

そうした計測方法の違いによりその形体が違うということを、GPSにより図面上で読み手が認識することができるようになるのです。

まとめ

JISが2016年と2019年の2度にわたり改定を行い、以下の2つをJISの設計製図分野に盛り込みました。

➀2物体間の距離は幾何公差を使用する

➁GPSを使用して、形状のあいまいさを表現出来るようにする

これによって、欧米の図面表記と統一が図れるようになります。

まだ日本では浸透していないGPSという考え方が理解できれば、加工屋はどの箇所を測定して、製作すればよいのかが読み取り易くなるはずです。

日本人の機械図面は読みずらい、、、と言われない様にしていかなければいけませんね。

<本記事にかかわる参照JIS>
・JISB0401-1 製品の幾何特性仕様(GPS)-長さ荷関わるサイズ公差のISOコード方式
・JISB0672-1 製品の幾何特性仕様(GPS)-形体-第1部:一般用語及び定義
・JISB0672-2 製品の幾何特性仕様(GPS)-形体-第2部:円筒及び円錐の測得中心線、測得中心面並びに測得形体の局部寸法

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