投稿日:2024年11月15日
送風機(ファン)は空調機器や機器の冷却など、さまざまな分野で使用されています。しかし、送風機(ファン)を選定するには、その特性を理解して選定しなければなりません。また、回転体や動力(モーター)の知識も必要です。
そこで本記事では、機器冷却に使用する場合の注意点を説明します。送風機(ファン)の種類を知り、その特性から用途の理由を理解することで、送風機(ファン)を選定する際の注意点が理解できるようになります。
送風機の種類と特徴
1.軸流ファン
特徴: 軸方向に空気を流すファンで、風量が多く、静圧が低い。
用途: 一般的な換気や冷却に使用される。
具体例:扇風機、機器冷却ファン、ジェットファン
引用元:山洋電機株式会社
引用元:パナソニック(株)
2.遠心ファン
特徴:空気を遠心力で外側に送り出すファンで、静圧が高い。
用途: ダクト内の空気移動や高圧が必要な場面で使用される。
具体例:産業用送風機、機器組み込み送風機
引用元:テラル株式会社
引用元:パナソニック(株)
3.斜流ファン
特徴: 軸流ファンと遠心ファンの中間的な特性を持ち、風量と静圧のバランスが良い。
用途: 空調設備や換気システムに使用される。
例:ダクトファン
引用元:三菱電機株式会社
このように送風機とは一般に空調用の送風機からパソコンや制御機器のケースを冷却するファンのことであり、羽根の形状や電動機の容量の大きさなどさまざまです。送風機に求められる性能としては風量でありどれだけ空気を送風できるか、もしくは排出できるかです。
送風機の性能について
次に送風機の能力となるPQ曲線について解説します。
風量-静圧曲線(PQ曲線)について
送風機の性能はJISに規定の方法で測定されます。簡単に概要を説明します。
図1に示すように密閉された箱にファンで空気を送り込みます。
図1
送られた風は開口から排出されますが、開口が小さいと排出される空気が減り、箱の中に圧力が発生します。
この関係を送風機の性能としてPQ曲線に表します。(図2)
図2 PQ曲線
図1の空気の排出口を塞いでいくと空気は流れなくなり(風量0)最大静圧となります。図1の空気の排出口を開放して、さらに箱の中に圧力がかかならいようした場合の風量が最大風量になります。
送風機は機器や送風システムの圧力損失を計算し、PQ曲線上の圧力から風量を導き出す必要があります。
また、制御機器の冷却やパソコンのケースなど密閉空間での排気による冷却の際には、高い圧力でも風量がでるようなファンを選定する必要があります。
例えば、オフィスビルなどの空調用の送風機として遠心ファンが使用されます。そのような場所では、ダクトなどの圧力損失に加え、閉め切った空間での使用になるため、高い圧力でも風量を確保できる必要があります。
遠心ファンの羽根車の種類と特徴
遠心ファンは空調用や換気扇として建築物に多く採用されています。ここでは遠心ファンの羽根車の種類とその特徴を解説します。
1.シロッコファン
特徴:多翼の羽根を持ち、静圧が高い。コンパクトな設計。
用途::ダクト内の空気移動や高圧が必要な場面。
具体例:空調用の送風機(エアハンドリングユニット)、換気扇(レンジフードなど)
シロッコファンは前向き羽根と呼ばれることもあり、回転方向に羽根で空気を押し出すような形状が特徴です。
引用元:ハネダ株式会社
2.ターボファン
特徴: 羽根が後向きに湾曲しており、効率が高い。
用途: 高効率が求められる冷却システム。
具体例:防火設備としての排風機
ターボファンは後ろ向き羽根と呼ばれ、空気の流れの方向に羽根板を設置し風の抵抗をなくすことで、ファン効率をあげて高静圧かつ大風量を出すことを目的としています。
引用元:ハネダ株式会社
一般にシロッコファンは低回転数で風量を出すのに適しており、ターボファンは高回転数で静圧を確保しながら大風量が必要な際に選定されます。したがってターボファンは電動機(モーター)の容量の大きいものが用いられます。
ターボファンはその構造からファン自体の重量もおおきくなり、慣性モーメント(GD2)が大きくなります。インバーターなどの制御装置で頻繁に回転数を制御するような使用には注意が必要です。
ファンの選定方法
ファンを選定する場合は、上述のようなファンの特性を理解し選定する必要があります。また、以下の点についても考慮が必要です。
- 風量と静圧のバランス: 必要な風量と静圧を満たすファンを選定します。
- 設置スペース: 設置場所のスペースに適したサイズのファンを選びます。
- 騒音レベル: 使用環境に応じて、騒音レベルを考慮します。
- 耐久性とメンテナンス: 長期間使用できる耐久性とメンテナンスのしやすさを確認します。
制御装置の冷却を行う場合、ケース内の空気を排出するために軸流ファンがよく使われます。軸流ファンで空気を押し出し、ケースに開口部(排出口)を設けて自然に空気を排出することが一般的です。
この開口部には、外からのホコリやゴミを防ぐためにスリットや網が使われます。このとき、開口部の圧力損失をできるだけ小さくするために、開口部の面積は大きめにする必要があります。
また、軸流ファンは主に開放空間での使用を想定しているため、仕様に最大風量のみが書かれていることが多いです。そのため、ケース内での排気風量を確認することが大切です。
さらに、ファンの近くに開口部があると、空気の流れがショートサーキットを起こし、熱を持った空気がうまく排出されず、冷却が不十分になることがあります。そのため、開口部はファンから対角線上に設置するのが理想です。
まとめ
ファンの選定は風量、静圧だけでなく設置場所や排気を含めた空気の流れを確認する必要があります。ファンは回転体であるため筐体が不安定だと振動が大きくなります。
振動によりベアリングの劣化や振動による偏心が起こり騒音値、振動値ともに大きくなることもあるので、設置および取り付けには注意しましょう。
以上のようにファンの選定にはファンの特徴を理解し選定することが必要になってきます。ファンの知識を持って設計していただけることを期待します。