機械設計に英語のスキルは必要か?

投稿日:2022年02月26日

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近年では、リモートワークやSNSの普及により、海外とのコミュニケーションが盛んになっています。

大手メーカーだけでなく、中小企業においてもビジネスチャンスの幅が広がり、ここ数年の間に海外企業との取引が多くなったのではないでしょうか?

そこで課題となるのが言葉の壁です。

国内では機械製図をはじめ、ほとんどの資料は日本語で読めるため、機械設計に携わる技術者は英語のスキルが必要ないと思うかもしれません。

では本当に英語を理解する能力は必要ないのでしょうか?

今回は機械設計と英語の関係について考えてみたいと思います。

英語力と機械設計の関係について

現在の世界言語ランキングは、1位が中国語、2位が英語、3位がヒンディー語、4位がスペイン語です。

日本では世界共通語として親しまれているのが英語なので、義務教育でも学べる言語として広く知られています。

英語はイギリスをはじめ、アメリカ合衆国、カナダ、オーストラリアなど、大陸を中心として使用される言語ですが、3位のヒンディー語が公用語となるインドでも英語を理解できる人が多いため、かなりの範囲で通用します。

アメリカ大陸全体で考えると、4位のスペイン語話者が多くなっている傾向がありますが、北米では英語で十分なコミュニケーションが取れますから、便利な言語であることは間違いありません。

島国である日本では、日本語ですべての会話を成立させる歴史があるため、他の言語を積極的に話す機会がなく、英語に対して拒否反応を示す人が多いと思われます。

そのため、機械製図や技術書においても、すべて日本語で書かれているのが現状です。

国内でモノづくりが完結する製造業であれば問題ないですが、海外へ資料や仕様書を提出するとなると、英語に翻訳する必要があります。

その逆も然りで、海外から送信された日本語に翻訳されていない資料へ目を通す場合、技術英語を知らなければ内容が頭に入りません。

例えば「~以上」、「~以下」、「~未満」などの数量表現は、意味を間違えると思わぬ事故に繋がる可能性があるため、特に注意を要します。

【~以上】

  • or more
  • or over
  • not less

【~以下】

  • or less<
  • or under
  • not more than

【未満】

  • under
  • below
  • less than

このように、日本語では一言で伝わる表現でも英語では様々な種類があり、混乱が生じやすいのです。

技術英語の例を挙げるとキリがないため、ここでの説明は割愛しますが、英検やTOEICで出題されない英単語に触れる機会もありますから、いくつかの専門書を読んで事前に学んでおきましょう。

最新の情報を得るための語学スキル

一部の大手メーカーでは、3DCADをはじめとするソフトウェアの言語設定をすべて英語にしているところがあります。

寸法や角度などの表記が英語なので、基本的な単語を知っていないとモデリングや図面の作成が困難になるのです。

【ソフトウェアの入力項目で使用される英単語の一部】

  • 長さ(length)、幅(wide)、大きさ・寸法(size)
  • 比(ratio)
  • 距離(distance)
  • 直径(diameter)、半径(radius)
  • 厚み(thickness)、高さ(height)
  • 角度(angle)
  • 面積(area)、体積(volume)、重さ(weight)
  • 温度(temperature)
  • 時間(time)
  • 速度(velocity)
  • 圧力(pressure)
  • 力(force)、応力(stress)
  • トルク(torque)
  • 周波数・振動数(frequency)

またモデリングの最中にエラーが発生した場合でも、エラーに対する説明が英語で表示されるため、読めないと作業が先に進まなくなります。

英語が苦手な方には厳しい状況ですが、ほとんどのエラーは簡単な英単語で説明されパターン化しているので、設計を続けながら少しずつ覚えていきましょう。

他にも、扱うソフトウェアの仕様や最新情報を知りたい場合、ネットに掲載される説明資料がすべて英語表記の可能性があります。

例えばwindows10からwindows11へアップデートするなど、OSの書き換えを境にソフトウェア側で深刻な不具合が起きると、救済方法を英語で調べる必要があるのです。

基本的にソフトウェアのエラーは「エラー31」といった番号で表示されることが多いため、不具合の原因を特定するのは比較的容易です。

しかしながら、最新OSへの書き換えなど大きな仕様変更があった場合、エラー内容が未知数であるため特定が困難となり、海外の技術コミュニティやチャットなどから問題解決の糸口を探すことになります。

こうしたケースでも決して慌てず、翻訳ソフトを使うなどして柔軟に対応してください。

苦手意識を持たないようにするには

近年では『DeepL翻訳』や『Google翻訳』といった、無料で使える翻訳ソフトが充実してきました。

【例文】

This steel are typically 20 mm thick, and are cut to be 10-20 mm length and 1.0-2.0 mm wide.

この鋼材は通常の厚みが20mmであり、長さ10~20mm、幅1.0~2.0mmに切断加工される。

【DeepL翻訳】

この鋼材は通常20mm厚で、長さ10~20mm、幅1.0~2.0mmにカットされている。

【Google翻訳】

この鋼は通常20mmの厚さで、長さ10~20 mm、幅1.0~2.0mmにカットされます。

例文と比較して翻訳精度がかなり高いことが伺えます。

また減速比(reduction ratio)、測定誤差(measurement errors)、曲げ剛性(bending stiffness)、焼きなまし(annealing)などの専門用語も、文章の流れの中でDeepL翻訳は正確に訳してくれました。

Google翻訳は一部の専門用語を正確に訳せないところがありましたが、ブラウザの『Google Chrome』を使用するとサイト全体の英文を翻訳してくれるため、マニュアルなどを読みたい時は非常に便利です。

引用元: https://dspace.mit.edu/handle/1721.1/49432

上に掲載する画像は、MIT(マサチューセッツ工科大学)が学術論文をオープンアクセスしているサイトを日本語に訳したものです。

論文の概要をいくつか読んでみると、8~9割ほど内容を把握できるため、気になる論文があればダウンロードしても良さそうです。

このように「英語のスキルがないから」と苦手意識を持たずに、翻訳ソフトを積極的に活用することをオススメします。

まとめ

日本では英語を使う機会があまりないですが、エンジニアなど専門分野に携わる者は、いずれ必要な言語になる可能性があります。

将来はAIが文章や会話の翻訳を担うと期待はしても、今のところ人間が学び続けるのが理解への近道です。

学習を続ければこれほど心強い言語も他にないため、スキマ時間に簡単な基本語句を覚えることから始めてみてはいかかでしょうか?