投稿日:2021年11月01日
「同じようなミスを何度も犯してしまう・・・」
「先輩設計者はどうしてミスが少ないのだろう・・・・」
「どうしたらミスを減らせるのだろう・・・」
このようなことを思ったことはありませんか?
このコラムでは、設計初心者に、ミスを減らすためのちょっとしたポイントを伝授いたします。
実際、私が指導者として設計初心者に教えている内容ですので、ミスが多くて悩んでいるといった方には参考としていただけるのではと思います。
ぜひ最後までお読みください。
まず、具体的なお話に移る前に、設計の定義を確認しておきましょう。
設計の定義を辞書で調べると、「物を作る為の計画を決めること」とされています。
物を作る計画では、設計の目的や使用方法はもちろん、製作方法も視野に入れて設計する必要があります。
また、設計者に必要とされる能力はCADを使う事ではなく、的確な情報を伝える事です。設計者はそのポイントをよく理解する必要があります。
そして、設計を進めていき、最終的なそのアウトプットとなるのが図面です。
図面は設計者の意図を製作者に伝える為の「指示書」であります。
しかし、設計者は製作者と直接話をしませんので、的確な指示を過不足なくその図面に盛り込む必要があるのです。
必要な情報が抜けていたり、間違った情報が指示されていたり、必要のない公差や形状が指示されていてはいけません。不必要な指示は自己満足でしかなく、誰も得をしません。
設計の工程
人それぞれ、会社によっても設計のやり方は様々ですが、ここでは、3DCADを用いて3Dモデリングを行い、そこから2Dの組付図及び部品図を製作するという「流れの中」で起こる設計ミスとその対策について説明します。
ミスの種類
設計初心者に限らず、次に示したようなミスは誰しもが経験あるはずです。
- 寸法間違い
- サイズ間違い
- 部品選定間違い(影響軽度 品番間違い)
- 部品選定間違い(影響重度 計算間違い)
- 形状ミス(干渉や加工できない等)
- 指示忘れ(記入漏れ)
では、それぞれのミスの原因と対策をみていきましょう!
1 寸法間違い
実際の寸法と異なる寸法が入っていたり、寸法公差や幾何公差の選択ミスをしたりなどが挙げられます。このようなケアレスミスはなぜ起こるのでしょうか?
1.1 寸法の誤表記がなぜ起こる?
これは最も安易なミスですね。このようなミスが起こるのは、操作ミスによるものが多いです。
例えば、CADの操作ミスです。これはCADの設定にもよりますが、端点、交点、中点、接点等の設定により違うポイントを選択してしまっていることに気が付かない事が原因です。
また、他には3DCADで設計しているときに起こりうる寸法の誤表記があります。一般的な3DCADの場合、3Dモデルと2D図面の寸法はリンクしています。
したがって設計変更などで、3Dモデルの寸法を変更すると2D図面の寸法も連動して変更されることになります。
よくやりがちな操作として、急いでいたために、3Dモデルで寸法を変更せず、2D図面の寸法を上書きしてリンクを切った寸法修正をすることです。このような寸法修正は誤表記の危険性が出てきます。
例えば、再び同じ寸法が設計変更の対象となり、リンクが切れていることに気が付かず、3Dモデルのみを修正してしまうといったことです。
対策:
寸法を引く場合に寸法補助線の起点に注意するようにしましょう。
また、寸法の上書きは面倒でも極力せずに3Dモデル形状を修正しましょう。
1.2 寸法公差及び幾何公差の選択ミスがなぜ起こる?
このミスが起きる主な原因は経験値不足が大きいといえます。部品の使用方法(組み立て方法及び機能)を理解していない事、もしくは的確な公差を選ぶ知識がない事が挙げられます。
対策:
知識のある上司などにチェックしてもらうか、実際に自分自身で組付け作業を行うとよいです。
2 サイズ間違い
これも意外と多い単純なミスです。
組付け寸法のサイズを間違えてしまうといったミスです。これらのミスが起こる原因として挙げられる要因は設計者の勘違いが殆どです。
例えば、ボルトで部品を締結する場合、タップ穴(ネジ穴)のサイズと下穴(貫通穴)のサイズを間違えてしまうといったケースです。
また、位置決めピンとノック穴やベアリングとシャフト、シャフトと止め輪といった組み合わせでも間違いが発生しやすいです。
対策:
これを防ぐには特別な理由がない限り使用するボルトサイズをなるべくそろえるといったルールを決めると良いでしょう。サイズがバラバラですと、チェックする工数が増えるので、間違いが発生しやすくなるからです。
若しくは再確認を行うことも必須の手順としておくのが良いでしょう。
3 部品選定間違い(軽度 品番間違い)
設計した組立図の部品表には、社内に登録されている部品や購入品のボルトなどの品番を記入します。
このときに品番のタイプミスをしたり、その部品の使用方法が理解できていない為に間違った選定をしてしまったりする事が挙げられます。
対策:
品番や型番などは入力ミスが必ずあるという前提で作業を進めるとよいでしょう。そして、品番のダブルチェックを行う癖をつけるかルール決めをします。経験がない場合や自信がない場合は上司に相談する事をおすすめします。
4 部品選定間違い(重度 計算間違い)
このミスは重大な問題に発展する可能性がとても大きいです。
各種計算、例えば、モーターの容量計算や梁の計算等、その装置自体の重要な部分に関わる計算です。
その計算が間違っていると装置そのものが使えない、成り立っていないということになってしまします。この問題の原因はたった一つで、知識不足です。
対策:
これは重要なポイントですので設計初心者が一人で行うことは絶対に避けてください。
5 形状ミス
このミスは形状そのものが、各種要件を満たしていない設計になっているといったことです。
例えば、「部品が干渉する」、「強度が不足している」、「耐摩耗性が考慮されていない」といったことです。また、加工の知識が乏しいと、加工できない形状で設計してしまうといったこともよくあるでしょう。
私は加工の仕事をしていたことがあります。加工に関して私が経験したお話ですが、客先から届いた図面ではどうしても加工できず、問い合わせたことがあります。
電話で説明してもなかなか理解していただけないので、直接お会いして説明を行いました。その時設計者から出た言葉は「加工可能な形状を教えてください。」でした。
現場の加工経験や組み立て経験をすることは優れた設計者を育成する為には必要な要素だと思いました。
対策:
部品の干渉は2次元CADの設計では難しいですが、3DCADで設計している場合は干渉チェックを必ず行うようにします。
強度、耐摩耗に関しては経験のある方に聞く、もしくは部品によっては計算できるサイトやソフトウエアがあるのでそれを活用するのが良いでしょう。
例えばオリエンタルモーターの選定サイトなどを活用されている方も多いのではないでしょうか。
6 指示忘れ
これは非常によくあるケースです。単なる寸法漏れに始まり、公差記入漏れや粗さ指示漏れなど幅広いです。
ただ、安易にやってしまうミスですが、その影響は深刻なレベルに及ぶこともあるので防ぐように気を付けたいミスです。
例えば公差指示を忘れていまい、求められる精度が出ていない部品が出来てしまい、追加工や再製作する事に成ります。これは製作コスト増や、スケジュール遅延の要因となります。
対策:
これを防ぐためには、品番の記入ミスでもお伝えしましたが、必ずダブルチェックを行うようにしましょう。
以上、ここまでに述べてきましたミスの内容、原因と対策をまとめます。
ミスの内容 | 原因 | 対策 |
寸法誤表記1 | 寸法記入の際間違った点を認識してしまっている。 | ・寸法を引き出す際に設定を端点スナップだけにする。 ・形状が複雑な場合は拡大して点を拾うようにする。 |
寸法誤表記2 | 設計変更の際に寸法を上書きしてしまっている | 寸法の上書きは絶対にしない癖をつける。 |
公差選定ミス | 適切な寸法公差や幾何公差が選択されていない | ・公差の意味や使用方法をより理解する。 ・実際に自身で組付け作業を行い体験する。 ・上司に相談する。 |
締結サイズの指示ミス | サイズ変更した際の変更漏れ | ボルトサイズや位置決めピンのサイズ、ベアリングのサイズなどをダブルチェックする。 |
選定間違い(品番) | ・品番のタイプミス ・知識不足 |
部品表等に手入力で転記する際に間違いがないかをチェックする。 使用方法や用途をよく理解してから選定する。 |
選定間違い(計算) | 知識不足による場合が殆ど | とても重要な項目ですので必ず知識や経験のある人に確認してもらう |
形状ミス(干渉) | 確認不足 | 3DCADではモデリング時に干渉が確認できますのでその段階でチェックする。また、CADによっては干渉チェック機能の付いたCADもあるので、その機能を使用する。 |
形状ミス(強度等) | 知識・経験不足 | 知識や経験のある人に確認してもらう |
形状ミス(製作不可能) | 知識・経験不足 | ・知識や経験のある人に確認してもらう ・自身で加工や組付けを経験する |
指示忘れ | 確認不足・イージーミス | ・自身でのダブルチェックや他人によるダブルチェック ・チェックリストの活用 |
以上が私がよく目にしてきた主だったミスになります。それ以外にも設計ミスではありませんが、寸法が読みにくかったり、形状が分かりにくいことによる、製作ミスを誘発してしまうといった事象もありますので気を付けたいです。
いかがだったでしょうか?ミスをするのは仕方がないことです。しかし同じミスの繰り返しは良くありません。同じミスを繰り返さないためには、ミスの原因を明らかにして対策を講じることです。
このコラムでは、その基本的な対策として、
- 重要な設計作業は自分ひとりでは行わない
- ミスは必ず起こるという前提でダブルチェックする
といった内容をご紹介してきました。
ぜひ、普段の業務で取り入れてみてください。