サーキットブレーカとサーキットプロテクタとは?その違いを解説!

投稿日:2024年11月05日

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日常生活や生産現場で使われる電気設備には、安全を確保するための多くの工夫がなされています。

その中でも、電気回路の過負荷や短絡(ショート)から私たちや装置を守る重要な役割を果たしている「サーキットブレーカ」や「サーキットプロテクタ」を知っていますか?身近にあるものとしては、家庭用のブレーカがイメージしやすいですね。

家庭用のブレーカ

この「サーキットブレーカ」や「サーキットプロテクタ」は、どちらも安全装置として使われていますが、その機能、設計、使用される目的に違いがあります。電気回路になじみが薄い人にとって、「そもそもブレーカってそんなにいろいろ種類があるの?」と思う方もいるかもしれません。

この記事では、電気回路の保護装置である「ブレーカ」が理解できるように、それぞれの目的や特徴の違いを説明します。

サーキットブレーカとは?

サーキットブレーカ(Circuit Breaker)は、日本語では「配線用遮断器」と呼び、電気回路の過負荷や短絡に対する保護を行うための自動スイッチです。異常な電流が流れると、スイッチが自動的に開き、回路を遮断して電流の流れを止めます。

サーキットブレーカ

サーキットブレーカの表記

電気回路では、MCBもしくはMCCBと表します。(CB、NFBと表すこともあります)
MCCBは、Molded Case Circuit Breakerの略です。一方、MCBはミニチュア サーキットブレーカ(Miniature Circuit Breaker)と呼ばれ、家庭などで使用する小型のブレーカを指すことが多いです。

稀にHB(Home Breaker)の記号を家庭用ブレーカの記号として使用することがあります。

又、MCCBと同じ意味のNFBという記号が使わることがありますが、これはNo Fuse Breaker(ノーヒューズブレーカー)の略で、三菱電機のMCCBの商標を指しています。一先ず、NFBはMCCBと同じであると理解しておけばよいでしょう。

サーキットブレーカの主な機能

サーキットブレーカは以下のような機能を持っています。

過負荷保護が可能

回路に許容範囲を超える電流が流れた場合に動作します。持続的な過電流を検知すると、自動的に回路を遮断します。

大電流に対しても短絡保護ができる

回路内で短絡(ショートサーキット)が発生した場合、瞬時に回路を遮断して大電流から回路を保護します。

リセットが容易にできる

トリップ後に手動で取手を上げればリセットができるため、ヒューズのように交換する必要がなく、使い勝手が良いです。

サーキットプロテクタとは?

サーキットプロテクタ(Circuit Protector)は、特定のデバイスや機器の保護を目的とした装置で、過電流や短絡から制御機器を守るために設計されています。

一般的には、サーキットブレーカと同じ原理で動作しますが、制御回路に個別で設置されるため、作動電流値は一般的に低いものが多く、保護対象物によって個々で遮断する電流が異なることもあります。

サーキットブレーカとサーキットプロテクタの関係図(過電流発生時)

サーキットプロテクタの主な機能

サーキットプロテクタには以下のような機能を持っています。

特定用途向けの定格電流の設定が可能

サーキットブレーカは電源回路全体を保護することが多いのに対し、サーキットプロテクタは特定の機器や回路の保護に重点を置いています。

これによって、仮に一部の装置で過電流が起きた際に、どの部分がトリップしたかがすぐに判別できるため、素早く故障系統を特定することが出来るようになります。

精密な動作が可能

サーキットプロテクタは、デバイスの仕様に応じて精密な保護を行うことができ、特定の動作電流や遮断電流に対して敏感に反応します。

電気器具の保護回路としての漏電遮断器

補足として、似たような機能を持つブレーカである漏電遮断器についても触れておきます。

漏電遮断器(漏電ブレーカー)は、ELCB(Earth Leakage Circuit Breaker)という記号で表されています。この漏電遮断器ELCBは、配線用遮断器MCCBとは異なり、漏電(地絡)が起こった場合の感電を防ぐために設置されます。

例えば、水濡れなどによる漏電を防げることから、水回りにはこのELCBが設置されることが多いです。

ちなみにELCBのほとんどが配線用遮断器MCCBの過電流保護も行う機能を併せ持っている為、MCCBの代わりにELCBを使用することもあります。

サーキットブレーカとサーキットプロテクタの主な違い

用途の違い

サーキットブレーカは一般的に、建物や機械全体の電源回路を保護するために使用されます。対して、サーキットプロテクタは、特定の機器や部品、過電流に弱い電子回路などの保護に使われることが多いです。

保護の範囲の違い

サーキットブレーカは、過負荷や短絡に対する大規模な保護を提供するために設計されており、高電流の処理が可能です。

サーキットプロテクタは、より小さな回路やデバイスに対して限定的な保護を提供することに特化しており、比較的低電流の保護を行います。

そのため、サーキットプロテクタは電流の変動が大きい機器の場合、正常な運転中で作動してしまうことがあるので、使用する際は作動電流の範囲に注意してください。

特に電流値の変動が激しい機器であるモーターは、定格の5倍以上の電流が始動時に流れる為、専用のプロテクタを使用する必要があります。このプロテクタをモータブレーカ(略:MB)と呼んでいます。

動作特性

サーキットブレーカは過負荷や短絡の発生時に回路を遮断するまでの反応時間がやや遅い傾向がありますが、サーキットプロテクタは非常に速い反応を行うことができます。これは、デバイスの敏感な回路を過電流から守るために重要です。

まとめ

最後に、電気設備には「保護協調」と呼ばれる考え方がありますので紹介します。

保護協調とは、事故が発生した際、瞬時に事故が起こった電路を切り離し、事故発生系統以外の電路と負荷を保護できる様に調節することを言います。

つまり電気設備は、一部の電気回路が短絡して過電流が流れてしまった際に、その影響を最小限にとどめる為にうまく安全装置を連携して作動させる必要があるのです。

それも数ミリ秒の間にそれらをうまく連動させるのです。その安全装置の代表的なものがサーキットブレーカとサーキットプロテクタです。(もちろんそれ以外にもあります)

身の回りの電気設備は、サーキットブレーカやサーキットプロテクタの特徴を生かして、安全かつ効率的な電気回路の運用を可能しているのです。

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