投稿日:2022年03月22日
幾何公差を意識して設計していますか?幾何公差は、指定した面の形状や、平行、位置などが許容できる範囲を加工者に伝えることができます。これによって、加工のトラブルを防ぐことができるので、精度が必要な部品には幾何公差を活用しましょう。
しかし、幾何公差がよくわかっていないと活用できません。また、せっかく幾何公差を指示しても測定方法がわかっていないと確認することができません。
そこで本記事では、よく使う幾何公差8選と、幾何公差を測定する測定器について紹介します。
なおこの記事は、幾何公差の基本がわかっている人向けに書かれています。もし幾何公差の基本を知りたいという人は、【機械設計者必見】寸法公差と幾何公差を意識すれば良いものが造れるもご覧ください。
基本的な形状公差4選
形状公差は指定した面の形状を規制するものです。そのため、データムは必要なく、単独で指示できます。形状公差には、
- 真直度
- 平面度
- 真円度
- 円筒度
- 線の輪郭度
- 面の輪郭度
の6種類がありますが、その中でもよく使う4種類について紹介します。
真直度
JISでは、「直線形状の幾何学的に正しい直線からの狂いの大きさ」と定義されています。つまりどのくらい真っ直ぐ作らなければいけないかを表しています。
真直度は平面ではなく直線に適用され、主に中心線や母線、すごく細長い面などの反りやうねりの許容値を指示します。
真直度測定器という名前の測定器もありますが、オートコリメーター、表面性状測定器、真円度測定器、三次元測定器などさまざまな測定器で測定することができます。
引用元: Mitutoyo 真円度測定器
簡易的にはハイトゲージやダイヤルゲージ、スキマゲージでも測定可能です。
平面度
JISでは、「平面形体の幾何学的に正しい平面からの狂いの大きさ」と定義されています。つまりどのくらい平らな面に作らなければいけないかを表しています。真直度は線に対しての指示でしたが、平面度は面に対して指示しています。
真直度の測定を面に拡張して平面度を測定することができます。その他にも、オプチカルフラットとオプチカルパラレルといった、とても平面度が高い基準面と比較して測定することもできます。光を照射して干渉縞から平面度を計算する方式などもあります。
平面度の求め方は複数存在します。その中でも一般的なものは、測定された点から最小二乗法で基準面を求めて、その基準面から最も出っ張った点と、最も引っ込んだ点の距離を平面度とするというものです。
その他にも最小領域法などがあります。
真円度
JISでは、「円形形体の幾何学的に正しい円からの狂いの大きさ」と定義されています。つまりどのくらい丸い円に作らなければいけないかを表しています。
真円度測定器の測定は一般的に真円度測定器を使います。真円度測定には精密な回転が必要なため、他の測定器では難しいのが現状です。
しかし、精度がそれほど必要なければ、三次元測定機などでも測定可能です。また最近では、旋盤などの加工機に取り付けたままで簡易的に測定するものも出ています。
円筒度
JISでは、「円筒形体の幾何学的に正しい円筒からの狂いの大きさ」と定義されています。つまりどのくらい丸くて真っ直ぐな円柱に作らなければいけないかを表しています。円筒度は真円度と真直度を合わせたようなものです。
円筒度も真円度測定器で測定できます。
基本的な姿勢公差2選
姿勢公差は基準面に対して指定した面の姿勢を規制するものです。そのため、基準となるデータムが必要です。姿勢公差には、
- 平行度
- 直角度
- 傾斜度
の3種類がありますが、その中でもよく使う2種類について紹介します。
平行度
JISでは、「データム直線、データム平面に対して平行な幾何学的直線または幾何学的平面からの平行であるべき直線形体又は平面形体の狂いの大きさ」と定義されています。
つまり基準面に対してどのくらい平行に作らなければいけないかを表しています。平面度と求め方は同じなのですが、基準面をデータム平面から求めることが違います。
平行度は定盤等などの非常に平らな面とデータム面を接触させ、上面を測定面にします。
定盤の上に置いたダイヤルゲージやハイトゲージを測定面に接触させて、ゲージを定盤上と平行に移動させれば、ゲージの振れ量から平行度が測定できます。その他にも、三次元測定機や真円度測定器で測定ができます。
直角度
JISでは、「データム直線、データム平面に対して直角な幾何学的直線または幾何学的平面からの直角であるべき直線形体又は平面形体の狂いの大きさ」と定義されています。
つまり基準面に対してどのくらい直角に作らなければいけないかを表しています。
直角定規とスキマゲージによる測定などがありますが、正確に測定するには真円度測定器や三次元測定機が必要です。
基本的な位置公差2選
位置公差は基準に対して指定した点や面の位置を規制するものです。そのため、基準となるデータムが必要です。位置公差には、
- 位置度
- 同軸度
- 同心度
- 対称度
- 線の輪郭度
- 面の輪郭度
の6種類がありますが、その中でもよく使う2種類について紹介します。
同軸度
JISでは、「データム直線と同一線上にあるべき軸線のデータム軸直線からの狂いの大きさ」と定義されています。つまり基準となる円筒の中心軸と、指示された円筒の中心軸がどのくらい一致しなければいけないかを表しています。
同軸度は最低二つ以上の円を測定して、その中心を求める必要があります。そのため、精度良く測定するには真円度測定器が適しています。
精度がミクロン程度であれば、三次元測定機やダイヤルゲージでも可能です。
同心度
JISでは、「データム円中心と同一中心上にあるべき点のデータム円中心からの狂いの大きさ」と定義されています。
つまりある断面で、基準となる円筒の中心と、指示された円筒の中心がどのくらい一致しなければいけないかを表しています。同軸度との違いは、中心軸なのか中心点なのかです。
測定器は同軸度と同じです。
まとめ
今回はよく使う幾何公差について紹介しました。実際は業界によって使う幾何公差が変わってきます。
今回は紹介しませんでしたが、振れ公差として、「円周振れ」と「全振れ」という幾何公差もあります。今回紹介した幾何公差に加えて会社で使う幾何公差を覚えておきましょう。
今回は測定器についても紹介しましたが、多くの幾何公差に対応できる測定器は真円度測定器と三次元測定器です。
真円度測定器は精度良く多くの点を測定することができ、三次元測定機は精度が落ちますがセッティングが簡単です。場面によって使い分けることをおすすめします。
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