流体力学eラーニング流体力学eラーニング

流量計の種類と選び方!測定原理別の特徴比較と失敗しない選定手順

投稿日:2026年06月22日

category:

「流量計を選定したいけれど、種類が多くて違いがわからない」

「方式の選び方や判断基準が知りたい」

プラントの設備設計や計装、保全に携わる技術者が必ず直面する課題です。流量計は、温度・圧力と並ぶプロセス管理の三要素の一つであり、流量計の選定は品質管理・省エネルギー・コスト削減に直結する重要な業務といえます。

しかし、流量計は測定原理や構造が多岐にわたり、それぞれに一長一短があるため、選定は決して簡単ではありません。

本記事では、特に若手の設計者や保全担当者の方々に向けて、以下のポイントを体系的に整理し、後悔しないための選定手順を実務的な視点から解説します。

  • 流量計の基礎知識
  • 精度・コスト・圧力損失などの性能比較
  • 実務で失敗しないための選定手順
  • 現場で起こりやすい選定ミスとその対策

なぜ流量計の選定は難しいのか?流量測定の基礎知識

流量計の選定が難しい根本的な理由は、流量が示量性変数であることに起因します。

示量性変数と示強性変数

流量の性質を理解するうえで、示量性変数示強性変数の違いを押さえておくことが重要です。

まず、示量性変数とは、質量や体積のように、測定対象の量に比例して値が変化するものです。対象を分割すると、その量に応じて値も小さくなります。

一方、示強性変数とは、温度や圧力のように、測定対象を分割しても値が変わらないものです。例えば、タンク内の温度は、どこを測っても基本的に同じ値を示します。

流量は示量性変数

流量は、パイプの断面を通過する流体の量を、時間的に足し合わせて(積算して)初めて得られます。

つまり、温度計のように「点」で測れる示強性変数とは異なり、流量計はパイプ断面全体の流れを正確に捉える必要があります。そのため、流れの状態(偏流や旋回流)に大きく影響され、直管長の確保が重要になります。

直管長とは、流量計の前後で、流速の乱れを抑え、正確な測定や安定した流れを得るために必要な「まっすぐな管の長さ」のことです。

さらに、測定対象が「体積」なのか「質量」なのかも重要なポイントです。気体や蒸気は、温度や圧力で体積が大きく変わるため、取引計量(※)などでは質量で管理する必要があります。体積と質量の違いを理解することが、適切な流量計を選ぶ第一歩です。

(※)請求金額といったお金を決めるための計量。例えば、水道メータの使用量など。

流量計8種類の精度・コスト比較表

主要な8種類の流量計を比較表でご紹介します。それぞれの方式の精度、圧力損失、コスト、直管長の要否を一覧で確認し、候補を絞り込む参考にしてください。

方式

精度(※1)

精度

表記(※2)

圧力損失

コスト(※3)

直管長

主な用途・特徴

差圧式

±0.5

3.0%

FS

必要

液体・気体・蒸気に

対応。安価。

長い直管長が必要。

容積式

±0.2

0.5%

RD

中〜大

不要

高精度・高粘度液体

向け。

油・取引計量に多用。

タービン

±0.2

0.5%

RD

必要

再現性が良く低粘度液体向け。異物に弱い。

渦式

±1.0

3.0%

RD

小〜中

必要

液体・気体・蒸気に

対応。

蒸気計測の業界標準。

電磁式

±0.5

2.0%

RD

なし

必要

導電性液体専用。スラリー(※4)対応。圧損ゼロ。

超音波式(※5)

±0.3

1.0%

RD

なし

中〜高

必要

クランプオン型は配管外から後付け可能。腐食性流体にも使用。

熱式

±0.5

5.0%

FS

不要

気体の質量流量を直接計測。微小流量に強い。

コリオリ式

±0.1

0.3%

RD

小〜中

不要

最高精度。質量・密度を同時計測。

(※1)精度は代表値の目安です。機種・口径・流量条件により異なります。

(※2)精度表記の詳細は後述。

(※3)コストも相対的な目安となります。

(※4)スラリーは、泥水などのように固体が混ざった液体のこと。

(※5)超音波式:インライン型は±0.3〜0.5% RD、クランプオン型は設置条件に依存し±1.0〜3.0% RD程度になる場合があります。

精度表記の読み方:RDとFS

流量計の精度にはRDFSの2つの表記があります。それぞれ意味が異なるため、違いを理解しておくことが重要です。

RD(Reading)とは、読み取った流量の値に対する誤差です。例えば±1%RDの場合、流量が100でも10でも、それぞれの値に対して1%の誤差となるため、どの流量でも同じ割合でズレます。そのため、流量が大きく変化するプロセスでも、誤差の割合が一定で安定した精度が得られます。

FS(Full Scale)とは、最大流量(フルスケール)に対する誤差です。例えば最大流量が100で±1%FSの場合、誤差は常に±1となります。
流量が100のときは誤差の割合は1%ですが、流量が10のときは10%となります。このように、流量が小さいほど誤差の割合は大きくなります。
このため、低流量域では精度が低下しやすく、流量変動が小さい用途に適しています。

流量計の選定手順:失敗しない5ステップ

流量計の選定で失敗しないためには、体系的なアプローチが重要です。実務で役立つ5つのステップをご紹介します。

STEP1:流体条件と測定目的の明確化

まず、測定対象となる流体の詳細な条件と、何のために流量を測るのかを整理することが最も重要です。

流体の種類として液体、気体、蒸気、スラリーなどを確認します。流体の物性として温度、圧力、粘度、密度、導電率、腐食性なども把握しておきましょう。

流量範囲は最大・最小・常用流量を整理し、特に流量変動の幅(ターンダウン比(※))は重要です。測定目的がプロセス制御、品質管理、取引計量、監視のどれにあたるかも明確にします。

これらの条件によって、選択できる流量計の方式が大きく絞り込まれます。例えば、導電性のない純水に電磁流量計は使えませんし、取引計量にはコリオリ式や容積式のような高精度な方式が求められます。

(※)ターンダウン比とは、流量計が精度を保証できる最大流量と最小流量の比のこと。例えば、ターンダウン比10:1の流量計は、最大流量の1/10まで精度を維持できます。

STEP2:必要精度とコストのバランスを検討

次に、測定目的に応じてどの程度の精度が必要かを明確にし、予算に見合うコストを検討します。

用途

精度目安(RD)

取引計量・製品調合

±0.2パーセント以下

プロセス制御・原料投入管理

±0.5〜1.0パーセント

傾向監視・ユーティリティ管理

±2.0〜5.0パーセント

過剰な精度はコスト増につながるため、用途に見合った精度を見極めることが重要です。

STEP3:設置環境の確認

流量計の性能を最大限に引き出すには、設置環境の確認が不可欠です。

直管長

多くの流量計は、上流側と下流側に流れを安定させるための直管長を必要とします。エルボやバルブの直近に設置すると、偏流や旋回流で精度が著しく悪化します。

配管設計の段階でメーカ推奨の直管長(例:上流10D、下流5D)を確保することが理想です。

振動・ノイズ

振動は渦式やコリオリ式、可動部を持つ方式に影響を与えます。インバータ等のノイズ源が近くにあると、電磁式や超音波式に影響する場合があります。設置場所近辺の振動源・ノイズ源を事前に確認しましょう。

設置場所

屋外設置なら防水・防塵構造(IP65以上)、危険場所なら防爆構造の選定が必要です。設置する環境条件を事前に整理し、製品仕様書の耐環境性と照合してください。

STEP4:出力仕様とメンテナンス性の確認

測定値をどう活用するか、長期的な運用をどう考えるかも重要な選定ポイントです。

出力仕様

制御システム(PLCなど)との連携に必要な出力形式(4-20mA、パルス、HART通信など)を事前に確認します。複数の流量計を同一電源から供給する場合は、起動時の突入電流(電源を入れた瞬間に流れる大きな電流)にも注意が必要です。

メンテナンス性

可動部の有無、消耗品の交換頻度、清掃のしやすさなどを考慮します。特に容積式やタービン式は、異物混入による故障を防ぐため、前段にストレーナ(下の写真を参照)の設置が推奨されます。

STEP5:ライフサイクルコスト(LCC)での比較

流量計の選定では、初期費用(イニシャルコスト)だけでなく、運用にかかる総コスト、すなわちライフサイクルコスト(LCC)で比較検討することが非常に重要です。

ライフサイクルコストは、「初期費用」と「運用コスト(ランニングコスト)」を合わせたものです。

初期費用とは本体価格と設置工事費です。運用コストとは校正費、消耗品費、圧力損失によるポンプ動力費のことです。また故障やメンテナンスによる生産停止に伴う機会損失(停止損失)も見逃せません。

差圧式は安価ですが、圧力損失によるポンプ動力費が継続的にかかります。一方、電磁式や超音波式は圧損がないため、長期的に見ればLCCを低減できる場合があります。

実務でよくある流量計の選定ミスと防止策

知識不足や確認漏れから思わぬトラブルにつながることがあります。ここでは、代表的な選定ミスと防止策をご紹介します。

非導電性液体に電磁式を選定してしまう

「水だから大丈夫」と安易に電磁流量計を選定し、電気をほとんど通さない純水やRO水(※)で測定できなかった、というのは典型的な失敗例です。電磁流量計は、 流体の電気の流れやすさ(導電率)を使って測定しているからです。

必ず流体の導電率を確認しましょう。一般に5〜20μS/cm以上が必要とされますが、機種により異なるためメーカ仕様を確認してください。下限を下回る場合は、超音波式やコリオリ式を検討します。

(※)逆浸透膜(RO膜)で不純物(イオン等)を低減した水。

直管長不足で精度が悪化する

設置スペースの制約から、エルボの直後などに設置してしまい、流れが安定せず精度が出ないケースです。

配管設計の段階で直管長を確保するのが最善です。難しい場合は、直管長不要のコリオリ式や、整流器内蔵の差圧式流量計(Vコーン(※)など)を検討します。

(※)Vコーンとは、配管の中に円すい(コーン)を設置して流量を測る差圧式流量計の一種。コーンで流れを絞り、流速分布を整えることができる(整流効果)。

ターンダウン比の見落としで低流量が測れない

最大流量だけで選定し、実際の運転では流量が少なく、測定範囲の下限を下回ってしまうケースです。

プロセスの最大流量と最小流量を正確に把握し、選定する流量計のターンダウン比をカバーできる幅の広い機種(渦式など)を選定します。

異物の噛み込みによる故障(容積式・タービン式)

可動部を持つ流量計で、流体中の固形物やゴミが回転子に噛み込み、作動不良や破損に至るケースです。

流量計の入口に適切なメッシュサイズのストレーナを設置し、定期的に清掃する運用を徹底します。

まとめ:最適な流量計を選定するために

流量計の選定は、多岐にわたる要素を総合的に考慮する必要がある、奥の深い業務です。本記事で解説した5つのステップと4つの視点を組み合わせることで、失敗のリスクを大幅に減らすことができます。

  • 流体特性測定目的を正確に把握する
  • 用途に見合った精度を見極める
  • 設置条件の制約を理解し対策を講じる
  • ライフサイクルコストで総合的に評価する

この4点が選定の要となります。

また、

  • 非導電性液体への電磁式の誤選定
  • 直管長不足
  • ターンダウン比の見落とし
  • 異物による故障

といった実務でよくある失敗も、事前の確認と適切な方式選択によって防ぐことができます。

メーカの技術資料や専門家のアドバイスも参考にしながら、ご自身の設備に最適な一台を選定してください。

あなたにおすすめのeラーニング

  • 【流体力学を動画で学ぶ!全8章(410分)】
    静止流体から管内や物体周りの流体、測定方法まで幅広く学べる

    詳しくはこちら

「知識ゼロから学ぶものづくりの教科書」をプレゼント!無料会員登録を行うと、全18種類のPDFテキストをダウンロードできます。印刷も可能です。設計者に必要な製図、材料力学、機械要素などを学べます。ダウンロードの詳細はこちらからご確認ください。