屋内に機器を設置する際に床の積載荷重を確認していますか

投稿日:2023年09月06日

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建物の中に物を置く時に、その重さを考慮して、置く場所を決める習慣はありますか?

私たちの多くは、そんなことは考えず、空いたスペースを有効に使用することを優先して配置を決めるのではないでしょうか。

例えば、事務所に新しく書類を入れるキャビネットを設置しようとする際、そのキャビネットと書類の総重量がどれくらいなのかを計算して、床がそれに耐えられるのかをいちいち確認したりはしないはずです。

「これくらいの乗せても、きっと大丈夫だろう」と思っている人が大多数だと思います。

建物にはその階層に乗せても問題ない荷重が決まっている

建物に運び込める重量は、上限が決まっていますが、大抵のものを乗せても問題ないように設計されています。

建築物はあらかじめ設計段階で、どれくらいの重量を建物に乗せることが出来るのかを、大きめに想定しているのです。そのおかげで、私たちは重さを考慮せずに、建物内に物を置くことが出来きるのです。

その想定した重量のことを建築の分野では、「積載荷重(Live Load)」と呼びます。積載荷重の単位はN/m2で表現される事が多く、その値は1m2当たりにどれくらいの重さ(1kg=9.8N)を載せても問題ないかを表す数値となります。

積載荷重と聞くと、トラックやトレーラーで積める重量を思い浮かべる人もいるかもしれません。建築物にも同様に乗せられる重量が規定されているのです。

似ている用語に「固定荷重」というものもあります。固定荷重とは、建築物として使用されている部材(梁柱部材や壁床のスラブなど)の自重を指しており、積載荷重に含まれません。

固定荷重とは、以下のものを指しています。

  1. 柱や梁、床などの構造駆体の重量
  2. 間仕切り壁、建具、アンカーなどで固定された什器
  3. 床の仕上げ
  4. 天井仕上げ、設備・照明などの吊り物

以上により、何か重いものを建物内に設置しようとした時に、積載荷重を超えないように建物内に置く必要があるということになります。

この記事では、重量のあるモノを建物に設置する際に、どんな事を考慮しないといけないのかについて解説していきます。

建築物としての決まり事について

まずは、どういう基準で建築物が設計されているのかを知っておきましょう。

建築基準法(施行令第85条)では、部屋の使用目的に合った積載荷重で計算する様に規定されており、部屋の用途によって積載荷重の最低限の値が決められています。

建築基準法(施行令第85条)の積載荷重

部屋の種類 床の積載荷重
住居の居室、寝室や病室 1800N/m2
事務所 2900N/m2
教室 2300N/m2
百貨店・店舗の売り場 2900N/m2
劇場、映画館、集会室など 固定席:2900N/m2 / それ以外:3500N/m2
自動車の車庫や自動車通路 5400N/m2
屋上やバルコニー 学校や百貨店:2900N/m2 / それ以外:1800N/m2
倉庫 3900N/m2

この値は法令上の基準であって「最低限これくらいの値を積載荷重として設計するように」という値であると思ってください。実際は、建築物の設計者の思想や要求事項にもよりますが、大抵の場合以下の表(積載荷重)として設計することが多いです。あくまで参考の値です。

よく使用される積載荷重の例(建築構造設計指針などを参考にしています)

項目 積載荷重(N/m2
屋上(常時人が使用する) 1800 N/m2
屋上(学校や百貨店) 2900 N/m2
バルコニー 1800 N/m2
事務室 2900 N/m2
研究室 2900 N/m2
一般実験室 化学系3900N/m2, 機械系4900N/m2
教室 2300 N/m2
書庫・倉庫 7800 N/m2
機械室 4900 N/m2
空調器室 10000~12000 N/m2

この値の他に、建物の設計時点で要求された重量物がある場合は、「このフロアには、○○Nの重量物が設置される」ことが前提として、重荷重ゾーン(ヘビーデューティーゾーンと呼ばれる)として決めた範囲の積載荷重を任意に決定している場合もあります。

特に倉庫や機械室などでは、キャビネットや棚が集中する場所や、特殊な重い装置を設置する場合があるため、個別で重荷重ゾーンを設定していることが多いです。

積載荷重の値は、建物の施工前に設計事務所から受け取る図書で確認ができます。しかし、古い建物は、その資料が残っていない場合が多いため、どうしても分からない場合は、その建物を設計した事務所に問い合わせて確認した方がいいかもしれません。

すでに設計した事務所がない場合は、残念ながら上記の値で確認するしかありません。

積載荷重の考え方

重量物や大量に荷物を運び入れてもよいかを確認する方法を紹介します。

確認する手順は、以下の流れです。

  1. 各フロアは、梁で囲まれた床を1単位として計算を行う。
  2. 梁で囲まれた範囲にある荷物の合計重量をその面積で割る。
  3. 設計時に規定してした積載荷重と②で計算した値を比較し、積載荷重以下であることを確認する。

手順①の“梁で囲まれた床を1単位として・・”というのは、積載荷重は梁で囲まれた範囲にかかる最大重量の値を表すために用いるので、梁で囲まれた面積が小さければ、支えられる総重量は小さくなると考えることになります。

梁で囲まれた範囲の最大重量[N]=積載荷重[kg/m2] ×梁で囲まれた面積[m2]

(計算例)

事務所の2階にキャビネット4台(1台200kg)を設置する場合を考えてみます。

条件1:事務所2階の積載荷重は2900N/m2とする。
条件2:設置する部屋の梁で囲まれた面積は40m2とする。

キャビネット重量[N]=4×200kg ×9.8 = 7840 N
キャビネット重量÷梁で囲まれた面積=7840 N ÷40 m2 =196 N/ m2

よって、事務所2階の積載荷重2900N/m2 > 196N/m2であるため、問題ない。

ちなみに構造力学を理解している人であると以下の疑問が浮かぶかもしれません。

「フロアの一部に集中してものを置けば、集中荷重として床面にかかるはず。」

「なのにどうして、積載荷重は分布荷重として評価するのだろうか?」

これについての理由は、建築基準法施行令第85条には記載されていませんが、フロアのどこに物が配置されていたとしても問題が無いように、積載荷重の値を大きめに設計しているので問題ないと考えてください。

積載荷重は、フロアのどこにでも物を配置できるように考慮された値なのです。そう考えると便利な値ですね。

まとめ

事務所の移転や引っ越しで私たちは、建物に新たに荷物を運び入れる際に、「このフロアに荷物を入れても荷重は大丈夫か?」と、注意意識を持つことはなかなか難しいでしょう。

すでに物がある場合は、「現状でどれくらいのものがおいているのか」がすぐにわかるように台帳管理するなどの工夫をしてもいいのかもしれません。

本棚やラックキャビネットなどを新たに設置するだけでも意外と100kgを超えてしまうことが多く、複数台並べるとかなりの重量になってしまいます。

その時に「ここに置いたら積載荷重を超えるかもしれない」と感じ取れるようになっておきたいですね。

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