軸受(ベアリング)の種類と使い分け

投稿日:2023年02月15日

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はじめに

軸受は回転したり摺動したりする部分を支えて、動きやすくしたり、摩耗しないようにするための大切な部品です。

私たちの身の回りにある洗濯機や扇風機、掃除機や自転車など、回転する部分には必ずと言って良いほど軸受が使われています。

軸受は玉軸受やころ軸受など、さまざまな種類があるのですが、回転する機構をはじめて設計する方はどのような軸受を選べばよいか悩むのではないでしょうか?

今回は軸受の種類と選定方法について紹介します。

軸受の役割

回転する軸は必ずどこかを支える必要があります。その支える部分の摩耗を防ぐために軸受を設けます。

軸を非常にゆっくり回す場合は問題ないかもしれませんが、軸受を付けなければ軸とこすれる部分はたちまち焼き付いてしまい、軸を回すことができなくなってしまいます。

そこで、軸受を取り付け、回転する軸の抵抗を減らし焼き付きを防止します。軸の抵抗を減らすことは、軸を回す駆動源に必要な消費電力を抑えることにも繋がります。

軸受の構成

軸受は主に、以下①から④の部品によって構成されています。軸受は内輪または外輪が回転し、その反対側が静止しています。(図1)

①内輪

 シャフトと接触する部分

②外輪

 ハウジングと接触する部分

③転動体

 内輪及び外輪と接触しながら転がることで低い摩擦抵抗で回転することができる玉の形をしたものや円筒形状のものがある

④保持器

 転動体を等間隔に保持する部分

図1.軸受の構成(深溝玉軸受)

引用:https://koyo.jtekt.co.jp/2019/01/column01-03.html

軸受の用途

軸受は自動車や農業機器、産業機器、医療機器などさまざまな分野に使用されています。機器に使われる軸は振動や、傾き、熱膨張などさまざまな物理的な現象が起きるため、軸受はこれに対応する必要があります。

例えば、熱膨張をする軸の両脇に内部すきまの小さい玉軸受を使用すると、熱膨張によってそれぞれの軸受の内部隙間が埋まり、軸受への負荷が高くなる可能性があります。

熱膨張しても軸受に負担がかからないよう、片側を円筒ころ軸受にすることで、軸長さの寸法変化による軸受への負担をなくすことができます。また、たわみが大きい軸については、ある程度たわんでも軸の回転が可能な自動調心軸受を使用することがあります。

軸受の種類

軸受は大きく以下の2種類に分類することができます。

  • ラジアル荷重のみ受けられるもの
  • ラジアル荷重とアキシアル荷重の両方を受けることができるもの

図2.ラジアル荷重とアキシアル荷重

ラジアル荷重のみ受けられるもの

円筒ころ軸受

転動体の形状が円筒になっている軸受です。玉軸受よりも大きなラジアル荷重を受けることができます。

図3.円筒ころ軸受

引用: https://koyo.jtekt.co.jp/2019/02/column01-04.html

針状ころ軸受

ニードルローラーベアリングとも呼びます。径と長さの比率が円筒ころよりも大きい針状の転動体が使用されています。同じ荷重に耐えられる円筒ころ軸受よりも外輪の径が小さいのが特徴です。

図4.針状ころ軸受

引用元:https://koyo.jtekt.co.jp/2019/02/column01-04.html

ラジアル荷重とアキシアル荷重の両方を受けることができるもの

深溝玉軸受

転動体の形状が球体になっており、ラジアル荷重と両方向のアキシアル荷重を受けることができます。

図5. 深溝玉軸受

引用:https://koyo.jtekt.co.jp/2019/02/column01-04.html

アンギュラ玉軸受

深溝玉軸受と同じように転動体が球体になっている軸受です。ラジアル荷重と片方のアキシアル荷重を受けることができます。

深溝玉軸受に比べると片方のアキシアル荷重しか受けることができませんが、より大きなアキシアル荷重を受けることができるのが特徴です。両方向のアキシアル荷重を受ける場合は、二つ以上のアンギュラ玉軸受を使います。

図6. 深溝玉軸受

引用:https://koyo.jtekt.co.jp/2019/02/column01-04.html

円すいころ軸受

円筒状の転動体を円すい状に配置して、ラジアル荷重の他に片方のアキシアル荷重を受けられるようにした軸受です。両方向のアキシアル荷重を受ける場合は、二つ以上の円すいころ軸受を使います。

図7. 円すいころ軸受

引用:https://koyo.jtekt.co.jp/2019/02/column01-04.html

自動調心玉軸受

玉状の転動体が2列に並び、外輪の軌道が球面になっている軸受です。内輪、転動体、保持器が外輪に対して傾いた状態で回転することができます。たわみやすい軸などの用途に適しています。

図8. 自動調心玉軸受

引用:https://www.askul.co.jp/p/HK74386/?sc_e=cp_p_as_go_pl_c_HK74386&utm_source=go&utm_medium=PLA&utm_campaign=PLA_SSC_All&gclid=Cj0KCQiAt66eBhCnARIsAKf3ZNGG1CFB0kovarisqCUoEA49SJPtsdDeVMuWjPQ57sPQTWsDb9vqi2oaAtCzEALw_wcB

自動調心ころ軸受

たる型の転動体が2列、向き合うようにして並び、外輪の軌道が球面になっている軸受です。自動調心玉軸受と同じようにたわみやすい軸などの用途に適しています。

図9. 自動調心ころ軸受

引用:https://koyo.jtekt.co.jp/2019/02/column01-04.html

軸受の選定方法

軸受の種類は、使用する機器の使い方や条件によって異なります。それではどのように軸受を選定すればよいのでしょうか?

軸受の呼び番号から選定する

軸受には「呼び番号」というものがあります。呼び番号はJIS B 1513で規定されており、軸受系列記号、内径番号、シールド記号、内部すきま記号から構成されています。

図10は呼び番号の一例です。シールド番号や内部すきま番号が記入されている例の他に、組み合わせ記号や精度等級記号が記載されることもあります。

図10 呼び番号

引用:https://koyo.jtekt.co.jp/support/bearing-knowledge/6-3000.html

使用する機器の使い方や条件によって選定する

軸受の内径を決める

軸受の内径を決めることはシャフトの径を決めることにもなるため、軸受だけではなくシャフトの強度や振動などの信頼性の検討も必要です。

軸受の内径を決めてからシャフトの強度計算をするか、その逆の順番にするかは設計者の判断になります。

軸受の標準内径は前項で紹介した内径番号で決められているため、シャフトの径は内径番号で決められた径に合わせる必要があります。

軸受の外径や幅寸法を決める

軸受の内径に対応する外径や幅は、軸受の外周部と勘合するハウジングなどの周辺部品との取り合いを考慮しながら、軸受メーカーがラインアップしている寸法表から選びます。

後述する軸受寿命と内部すきま、そしてコスト面や調達性を考慮して外径や幅寸法を決めます。

軸受にかかる荷重の大きさや向きから選ぶ

荷重の大きさや向きによって影響するのは軸受寿命と内部すきまです。

軸受寿命

軸受は所定の時間以上使用すると、転動体と内外輪の接触面が剥がれたり、潤滑材が劣化して焼き付きが発生したりします。そのため、軸受を使い始めてから交換するまでの期間を計算する必要があります。

その計算方法として軸受の寿命式というのがあります。例えばL10と呼ばれるものでは信頼度90%の基本定格寿命という定義があり90%の軸受が壊れない寿命を示しています。

L10は次の式で表します。

  • 玉軸受:L10=(C/P)^3
  • ころ軸受:L10=(C/P)^(10/3)

C:基本動定格荷重(N)

P:軸受荷重(N)

L10で得られる数値が軸受交換周期より大きい数値になるよう、軸受を選定します。

内部すきま

内部すきまとは、転動体と、内輪や外輪の軌道輪とのすきまによって軌道輪が移動する量のことです。アキシアル方向に移動する量をアキシアル内部すきま、ラジアル方向に移動する量をラジアル内部すきまと言います。

回転速度

軸受には許容できる回転速度があります。回転速度が大きくなると軸受内部に発生する摩擦熱によって軸受の温度上昇が大きくなり、焼き付きなどの損傷が発生します。

そのため、軸受メーカーのカタログに記載している許容回転速度は機器で使用する最高回転数より高いものを選ぶ必要があります。

回転精度

回転精度とは回転軸が回転するときに回転する前の位置に対して軸がどの程度変化するのかを指したものです。精度が高いということは、変化代が少ないことを示します。

回転精度にはつりあい等級という指標があり、G0.4からG4000まで11の等級があります。数字が少なくなるほど高い精度が要求されます。

軸受には公差等級というものがあり、深溝玉軸受の例ではJIS0級からJIS6級まで定義されています。

寸法差や振れ量は2級>4級>5級>6級>0級の順番で厳しくなっています。

回転精度を高くしたい場合は公差等級が高いものを使用することで機能を満足する場合がありますが、コストや調達性を踏まえて総合的に判断します。

剛性

剛性とは一定の荷重に対する軸受内輪位置の変化量を表しています。剛性が強いということは変化量が少ないということです。

軸受の種類によって剛性は異なり、玉状の転動体よりもころ状の転動体の剛性が高くなります。

玉は内輪、外輪と“点”の形状で接触しますが、ころは“線”の状態で接触するため、ころ軸受の接触面積が増えるためです。

剛性を高めるために軸受を組み付ける段階で内部すきまを埋める「与圧」を行う場合があります。与圧には定位置与圧と定圧与圧があります。

内輪や外輪の傾き

軸が傾くと軸受の内輪と外輪の向きに角度(傾き)が出てきます。この傾きが大きいと軸受が壊れやすくなるため、使用する機器の条件に応じて傾きに対応できる軸受を選定します。

傾きに対応できる軸受の順番は以下のようになっており、自動調心ころ(玉)軸受のほうが最も傾きに対応した軸受となります。

円筒ころ軸受<円すいころ軸受<深溝玉軸受(アンギュラ玉軸受)<自動調心ころ(玉)軸受

軸受配列

軸受は、使用する機器の条件によって1個だけではなく2個、3個…と並べて使用することがあります。

例えば、円筒ころ軸受はラジアル方向の荷重しか受けないため、アキシアル方向の荷重も受ける場合は、円筒ころ軸受とアンギュラ玉軸受を並べて使用する場合があります。

また、アンギュラ玉軸受は片方のアキシアル荷重しか受けないため、両方向のアンギュラ玉軸受の向きを変え、並べて使用することで、両方向のアキシアル荷重を受けることができます。

また、同じ向きに揃えることでより強い片方のアキシアル荷重を受けることができます。

潤滑方法

軸受は摩耗を極力抑えるために、グリースや潤滑油が塗布されています。潤滑材の給脂方法は次の3つに分けられます。取り付ける機器の条件に応じて選定します。

密封方式

あらかじめ軸受にグリースを封入した後、シールやシールドを付けたものです。

充填給脂法

ハウジング内部にグリースを適量充填して、一定期間毎に補給したり交換したりする方法です。

集中給脂法

軸受に給脂用の配管を設けて、ポンプなどで潤滑油を循環させ、機械的に給油できるようにする方法です。

コスト面や調達性

軸受寿命を長くするためにサイズの大きいものや、あまり使用されていない種類の軸受を選定するとコストが高くなり、軸受を搭載する製品の原価を圧迫してしまう可能性があります。

なるべくメーカーの標準品を選定し、調達性を良くすることで、軸受が納品されないから製品が作れない、といったことがないようにしましょう。

まとめ

軸受は回転体を支える重要な部品です。軸受がないと回転する軸の抵抗が増えて、焼き付く恐れがあります。以下を考慮して軸受を選定していきましょう。

  • 回転する軸が軸受にどの程度の力がどの方向に作用するか
  • 軸受配列の有無
  • 必要な釣り合い等級から公差精度を決める
  • 機器の構造から給脂方法を決める
  • 軸受寿命は軸受の交換周期に対して余裕をもった設計にする

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