ベアリングの寿命計算に必要な基本動定格荷重について注意事項を解説

投稿日:2024年11月20日

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ボールベアリングは自動車をはじめとして、多くの機械にたくさん使われています。そのボールベアリングを選定する場合に重要な項目が寿命です。ボールベアリングの寿命はカタログに掲載されている基本動動定格荷重と基本静定格荷重を使って計算できます。

寿命の計算式
L10=10^6/60N(C/P)^3
L10:B10ライフベアリング寿命時間(時間)
N:回転速度(rpm)
C:基本動定格荷重(N)
P:動等価荷重(N)

この式では、説明を簡単にするため基本項目だけで計算しています。実際の計算にはこの項目以外にも係数や動等価荷重を決めるための項目があります。この記事はベアリング選定にあたって注意すべき点についてのお話です。

基本動定格荷重はJIS B 1518で決まっている

ベアリングのカタログを見るとわかりますが、型番が同じであれば基本動定格荷重は同じ値が書かれています。これは、JIS B 1518で計算方法が決まっているためベアリングの形状が同じであれば同じ基本動定格荷重になるためです。

寿命の定義はB10ライフを基準にしているので、10個中9個はこの寿命を保証しますとの解釈です。この場合の寿命はベアリング表面が剥離してしまう状態をいいます。

この考えでは、1割のベアリングは予定より短い時間で壊れていいということになります。

ベアリングは市場で大量に使われえているので、寿命がこの通りになったら大変なことになっているでしょう。JIS B 1518に従えば、基本動定格荷重を4倍まで大きくしても99%の信頼性しかありません。

99%というとかなり信頼性が高いと考えるかもしれませんが、100個中1個はB10ライフの計算寿命を満足しないと考えるとどうでしょう。

市場で使われるベアリングの数を考えると怖い気がします。壊れた場合に「JISには合格していましたが、お客様ははずれのベアリングを引いてしまいました」などの言い訳は通じません。

基本動定格荷重は形状が同じならメーカーが違っても同じ

基本動定格荷重の計算式はJISで決まっているので、各社のカタログ上の基本動定格荷重は同じ表記になります。そこに、独自性を出す余地はありません。

中には、計算式で基本動定格荷重が大きくなるように玉を大きくした特殊ベアリングがありますが、規格外の特殊品でカタログには掲載されていません。カタログに載っているのはJISで規格化されたものがほとんどです。

材料や加工が進歩しても基本動定格荷重表示の表示は変わらない

材料品質や加工精度は進歩していますが、JISの計算式が変わらないので基本動定格荷重は変わりません。すると、実際に使う場合に大きな問題がでてきます。

メーカーの努力によって加工精度や材料性能が向上すれば、実際には寿命は伸びることです。さらにばらつきも少なくなります。しかし、その違いはカタログには出てきません。

そうなると、同じ型番なら同じ性能が表記されているので、コストダウンのために安いものを使いたくなります。しかし、カタログ上同じでも実力値は違っていることが考えられるので、採用するには注意が必要です。

購買などの原価部門からメーカー変更依頼がくることがありますが、メーカーが変わると性能が変わる可能性があります。信頼性が担保できない場合は断るのも技術者の役割です。

まとめ(ベアリングだけが特殊でしょうか)

JISなど信頼性のある規格に従っていると、それを信じてしまいがちですが、そのまま信じることは思わぬ事故につながることがあります。

今回のまとめ

  1. ベアリングの型番が同じなら基本動定格荷重も同じで計算上寿命も同じになります。
  2. 寿命は計算上同じだけれど、ベアリングの加工精度や材料に違いによりばらつきや実力値は変わってきます。
  3. 製品の実力値が規格と合わないのは、ベアリングに限った話ではなく公差が認められたり製造品質を考慮されたりしない製品にも当てはまります。

形状的違いを測定して違いを確認するのは比較的容易ですが、耐久性などの違いはメーカーしか知らない、もしくは費用と時間をかけて詳しく調べないとわからない製品ではメーカー変更は慎重に行いましょう。