試作品に出た“謎のへこみ”の正体とは|樹脂部品設計あるある

投稿日:2019年01月19日

日々、3D CADに向き合い、機能とデザインを両立させる設計に
奮闘されていることと思います。

今回は、樹脂部品(プラスチック製品)の設計を始めたばかりの
エンジニアの方からよく伺う、
「ある失敗談」からお話しを始めさせてください。

その「へこみ」は、なぜ現れたのか?

一生懸命モデリングした筐体カバー。

画面の中の3Dモデルは、光沢があり、
平面は美しく滑らかで、完璧な仕上がりでした。

「これならいける!」

自信を持って図面を出図し、金型が完成。

待ちに待った試作品(T1:ファーストトライ品)が
手元に届いたときのことです。

ワクワクしながら製品を手に取ってみると……。

「あれ? ……なんだこれ?」

ツルツルであるはずの製品の表面に、
えくぼのような「へこみ」がポツポツとあるのです。

指で撫でてみても、明らかに波打っている。

慌てて裏側を確認すると、そこには補強のために追加した
「リブ」や、ネジ止めのための「ボス」がありました。

「図面通りの寸法で作ったはずなのに、なぜ表側がへこんでしまうんだ?」
「CADデータには、こんなへこみなんて描いていないのに……」

もし、あなたがこのような経験をしたことがある、
あるいはこれから経験するかもしれないとしたら、

それは樹脂特有の「ある性質」を見落としていたことが
原因かもしれません。

「金属の常識」が通じない?樹脂特有の落とし穴

切削加工などの金属部品設計に慣れ親しんでいると、

どうしても
図面に描いた形状 = 完成形状
と考えがちです。

しかし、プラスチック(樹脂)は違います。

樹脂は、熱してドロドロに溶かしたものを金型に流し込み(射出)、
冷やして固めることで形を作ります。

この「冷やして固める」工程に、失敗の種が潜んでいます。

ご存じの通り、物体は熱せられると膨張し、
冷えると収縮します。

樹脂も同様に、冷え固まる際に体積が小さくなります(収縮)。

問題は、

「厚みによって冷える速度が違う」

ということです。

・薄い部分:すぐに冷えて固まる
・厚い部分:なかなか冷めず、ゆっくり固まる

リブやボスを配置した箇所は、
製品のベースとなる板厚にリブの厚みが加わり、

局所的に「肉厚」な状態になります。

すると、

先に表面の薄い部分が固まり、
内部の厚い部分はまだ溶けたまま……

という状態が生まれます。

その後、遅れて内部が冷えて収縮する際、

すでに固まった表面の皮を
内側へグイグイと引っ張り込んでしまうのです。

その結果、表面が内側に引っ張られてへこんでしまう。

これが、あの忌まわしいへこみの正体、

専門用語で
「ヒケ(Sink Marks)」
と呼ばれる成形不良です。

ヒケを防ぐ!設計段階でできる3つの解決策

「成形条件でなんとかしてよ!」

と成形現場に頼み込みたくなる気持ちもわかります。

確かに、圧力を高めたり冷却時間を延ばしたりすることで
改善する場合もあります。

しかし、私たち設計者が目指すべきは、

「誰が成形しても不良が出にくい設計(ロバスト設計)」

です。

設計段階でヒケのリスクを最小限に抑えるための、
具体的な3つのステップをご紹介します。

【ステップ1】肉厚を均一にする

樹脂製品の設計では「肉厚一定」が鉄則です。

不必要な厚肉部を作らないよう、肉抜きを徹底し、
冷却速度の差が生まれないようにします。

【ステップ2】リブの厚みを「薄く」する

ここが一番のポイントです。

リブやボスの厚みを、
ベースとなる板厚(T)と同じにしてはいけません。

一般的に、

リブの厚みは基本肉厚の
40%~70%程度(0.4T~0.7T)

に抑えるのがセオリーです。

厚くするより、
薄いリブを複数本立てる方が品質的に有利です。

【ステップ3】根元のR(アール)に注意する

Rを大きくしすぎると、根元の肉厚が増して
逆にヒケの原因になります。

強度と成形性のバランスが重要です。

【ミニクイズ】

Q1.
樹脂成形において、厚肉部が冷却時に収縮することで
表面がへこむ不良現象を何と呼ぶでしょうか?

A. バリ
B. ヒケ

Q2.
ヒケを防ぐために、リブの厚みは基本肉厚(T)に対して
どのくらいの比率にするのが一般的でしょうか?

A. 100%
B. 40~70%

Q3.
ボイドとヒケの関係として正しいものは?

A. 全く別の原因
B. メカニズムは同じで表面剛性の違い

▼ ミニクイズの解答・解説は、ページの末尾に掲載しています。

「知らなかった」で済まされない、樹脂設計の奥深さ

ヒケは数ある成形不良の一つにすぎません。

他にも、

・ウェルドライン
・反り
・抜き勾配不足

など、金型修正=数十万~数百万円の損失になる
問題が頻発します。

だからこそ設計者には、

・材料の特性
・金型構造
・成形プロセス

の理解が求められます。

自信を持って設計できるエンジニアになるために

図面がそのまま量産につながる。

そんな設計を実現するために、
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【解答・解説】「CADでは完璧だったのに…」表面の凹みの謎

メルマガのミニクイズに挑戦していただき、ありがとうございます。
ここでは、クイズの正解と、設計実務で役立つ詳しい解説をお伝えします。

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Q1. 樹脂成形において、厚肉部が冷却時に収縮することで表面がへこむ不良現象を何と呼ぶでしょうか?
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【正解】
B. ヒケ(Sink Marks)

【解説】
「ヒケ」とは、成形品の表面が収縮によって窪んで(くぼんで)しまう成形不良のことです。

なぜ発生するのか?

金型内に充填された樹脂は、外側(金型に触れている面)から冷却されて固まっていきます。
しかし、リブやボスなどの裏側にある「厚肉部」は、内部の冷却が遅れます。

遅れて内部が固まる際、体積が収縮する力が働き、すでに固まりかけている表面の皮(スキン層)を内側へと引っ張り込んでしまうのです。
これがヒケの発生メカニズムです。

なお、Aの「バリ」は、金型の合わせ面などの隙間に樹脂が流れ込んでしまい、薄い膜状の余計な形状がついてしまう不良のことです。

ヒケとは逆で、圧力が強すぎたり、型締め力が不足したりする場合に発生します。

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Q2. ヒケを防ぐために、リブの厚みは基本肉厚(T)に対してどのくらいの比率にするのが一般的でしょうか?
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【正解】
B. 40~70%

【解説】
リブの厚みは、基本となる底板の厚み(T)に対して、

おおよそ 40~70%(0.4T~0.7T)

程度に抑えるのが設計のセオリーです。

なぜ薄くする必要があるのか?

もし、リブの厚みを基本肉厚と同じ(100%)にしてしまうと、
リブと底板の交点部分に樹脂の塊ができ、極端な「厚肉」状態になってしまいます。

これでは冷却スピードに大きな差が生まれ、確実にヒケが発生してしまいます。

意匠面(見た目が重要な面)にヒケを出さないためには、
リブを薄く設計し、冷却速度の差を小さくすることが最も効果的な対策となります。

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Q3. ボイドとヒケの関係として正しいものは?
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【正解】
B. メカニズムは同じで表面剛性の違い

【解説】
実は、「ボイド(気泡)」と「ヒケ」の発生メカニズムは基本的に同じです。
どちらも樹脂の「収縮」によって発生します。

運命の分かれ道は「表面の強さ」

樹脂内部が収縮しようとする力に対し、
表面(スキン層)の強さがどうなっているかで結果が変わります。

・ヒケになる場合:
 表面の剛性が「弱い」とき。
 内部の収縮に負けて、表面が内側に引っ張り込まれ、へこみになります。

・ボイドになる場合:
 表面の剛性が「強い」とき。
 表面は変形せず耐えますが、その分、内部に樹脂が足りなくなり、
 真空の空洞(気泡)が生まれます。

つまり、表面と内部の「力比べ」のような関係にあります。

ボイドは透明部品でないと発見しにくい厄介な不良ですが、
強度が低下する原因にもなるため注意が必要です。

その設計、自信を持って出図できていますか?

「ヒケ」や「ボイド」は、成形条件(圧力や冷却時間)で調整することも可能ですが、
最も確実なのは、

「設計段階でリブ厚や形状を適正にしておくこと」

です。

しかし、実際の設計現場では、

「この形状だと、どこにウェルドラインが出る?」
「抜き勾配は何度つければいい?」

といった、さらに高度な判断が求められます。

独学での試行錯誤には限界がありますが、
体系的な知識があれば、トラブルを未然に防ぐ「根拠ある設計」が可能になります。

『樹脂部品設計入門講座』では、
今回解説した不良対策はもちろん、
金型構造を考慮した設計手法までを網羅的に学べます。

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