なぜ樹脂設計は難しいのか。現場で起きる失敗事例から学ぶ

投稿日:2019年01月18日

本日は、金属部品の設計には慣れてきたけれど、
樹脂(プラスチック)部品の設計となると、どこか不安を感じている……
そんな若手技術者の方に向けて、設計の勘所となる視点をお届けします。

金属の常識が通用しない?樹脂設計に潜むリスク

機械設計の現場では、まず金属材料の知識から入ることが一般的です。

金属はJIS規格等で物性値が保証されており、
信頼性の高いデータに基づいて設計が可能です。

しかし、樹脂部品の設計において、
金属と同じ感覚でアプローチすることは非常にリスキーです。

なぜなら、樹脂は環境や成形条件によって寸法や物性が変化する、
まるで「生き物」のような特性を持っているからです。

例えば、同じ材料でも、成形時の圧力や冷却時間の違いで強度が変わったり、
時間の経過とともに変形(クリープ)したりします。

金属では起こりえないこうした挙動を理解せずに設計を進めると、
量産段階で「寸法が出ない」「割れる」といった重大なトラブルに直面することになります。

現場でよくある「形にはなったけれど…」という失敗

CAD上で形を作ることはできても、
実際のモノづくりとして成立しない。

これは樹脂設計の初心者が陥りやすい罠です。

例えば、以下のような経験はありませんか?

・ヒケ(Sink Marks)の発生
 リブやボスの裏側に、予期せぬ窪み(ヒケ)ができてしまい、外観不良となった。

・抜き勾配の忘れ
 垂直な壁をそのまま設計してしまい、金型から製品が抜けず、成形品が傷だらけになった。

・肉厚の急変(厚肉・段差)の見落とし
 局所的に厚い部分を作ってしまい、冷却差で反りが出たり、ヒケが悪化して外観不良になった。

・バリ(Burrs)の発生
 パーティングライン(金型の分割線)の設定が甘く、意匠面に不要な突起(バリ)が出てしまった。

これらはすべて、樹脂の材料特性や、
金型構造への理解不足から生じる典型的な失敗例です。

ある若手エンジニアの気づき(ストーリー)

入社2年目の機械設計者、Kさんの事例をお話ししましょう。

彼は金属加工品の設計経験を経て、
初めて樹脂製の筐体設計を任されました。

「金属と同じように、必要な強度と形状を満たせば良いだろう」

と考え、CADでモデリングを行い、試作へ進みました。
しかし、金型メーカーとの打合せで、彼は言葉に詰まります。

「Kさん、この形状だとアンダーカットになるから、
 スライドコアが必要になりますよ。コストが上がりますが大丈夫ですか?」

「ここのボスの肉厚、これだと確実にヒケますよ。
 デザイン面に影響しますが修正しますか?」

Kさんは「アンダーカット」「スライドコア」「ヒケ」といった
用語の重要性を、その時初めて痛感しました。

自分が描いた図面は、あくまで「理想の形」であり、
「金型で作れる形」になっていなかったのです。

その後、彼は単に形を作るだけでなく、

「金型の中で樹脂がどう流れ、どう冷え固まり、どう取り出されるか」

というプロセスを想像しながら設計することの重要性に気づきました。
この視点の転換こそが、樹脂設計者としての大きな成長点でした。

金型と材料の知識が設計を変える

樹脂部品設計のスキルを身につけると、設計判断の質が劇的に変わります。

1. 根拠のある形状決定
 例えば、ボスの設計一つとっても、
 「ボスの根元の肉厚は、底板の厚みの0.5~0.7倍にする」といった
 具体的な数値を基に、ヒケを防ぐ設計ができるようになります。

2. コストと品質のバランス
 金型の構造(キャビティ・コア)を理解することで、無理な形状を避け、
 金型費用を抑えつつ品質を確保する「量産を見据えた設計」が可能になります。

3. トラブルへの予見と対応
 ウェルドライン(樹脂の合流点にできる線)や反りといった
 成形不良のメカニズムを知ることで、設計段階でゲート位置を考慮するなど、
 未然にトラブルを防ぐことができます。

成長のための学習ルート「樹脂部品設計入門講座」

樹脂設計は、材料、金型、成形技術など、多岐にわたる知識の集合体です。
これらを断片的にではなく、体系的に学ぶためのルートとして、以下の講座をご案内します。

本講座では、以下のステップで実務に必要な知識を網羅しています。

1. 全体像の理解
 商品企画から量産までのプロセスと、各工程の連携を学びます。

2. 材料の知識
 熱可塑性・熱硬化性の違いや、PC、ABS、PPなどの材料特性を理解します。

3. 成形と金型の基礎
 射出成形の仕組みと、スプルー・ランナー・ゲート・突き出しピンなどの金型機能を学びます。

4. 不具合対策
 バリ、ヒケ、ボイドなどの成形不良の原因と対策を習得します。

5. 設計手法の実践
 ボス、リブ、スナップフィットなどの具体的な設計数値を学びます。

6. 量産への橋渡し
 金型製作仕様書の作成や、試作評価のポイントを学びます。

単なる知識の暗記ではなく、設計者が「なぜその形状にする必要があるのか
を論理的に説明できるようになることを目指した構成となっています。

確かな設計力を身につけたい方へ

樹脂部品は、家電から自動車まであらゆる製品に使われており、
その設計スキルはエンジニアとしての市場価値を大きく高めます。

自己流の設計から脱却し、自信を持って図面を描けるようになりたい方は、
学習の選択肢の一つとして検討してみてください。

講座の詳細やカリキュラムは以下のページにまとめています。

▶︎ 樹脂部品設計入門講座はこちら

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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