なぜエクセルに頼ると「設計力が低下する」のか?

投稿日:2020年03月03日

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<MONOWEBからのお知らせ>
 
コラム後半に、最新の便利ツール
「梁のたわみと応力計算ツール(無料)」を紹介します。
 
本日のコラムの内容とリンクするツールですので、このまま読み進めて頂いた後にご確認ください。

はじめまして、
MONOWEBでセミナー講師をしております赤尾と申します。

この度、MONOWEB会員様向けに、
コラム作成も担当させて頂くことになりました。

私の経験や知識が皆様のお役に立てることが
少しでも出来ればという想いで
MONOWEBへ志願して執筆させて頂く運びとなりました。

第一回目の本日は、

===
なぜエクセルに頼ると「設計力が低下する」のか?
===

というタイトルにて、メールをさせていただきます。

本題に入る前に、
私の名前を初めて聞く方が多いと思いますので、
少しだけ自己紹介させてください。

私は、MONOWEB主催のセミナーで、
講師をさせて頂いております。
(オンデマンドセミナーも担当しています)

  • 強度計算書の作成方法
  • 図面の読み方や描き方

など初心者向けのセミナーです。

これまで20年以上設計に携わっており、

・中型旅客機、ヘリコプタ
・産業機械、専用機
・液晶テレビ
・自動車のトランスミッション

などの設計経験があります。

設計者として、幅広い分野で経験を積んできました。

その経験した技術や知識は、
その後に経験した各分野の設計で非常に役立っております。

現在は、エンジニアとしての活動もしながら
セミナー講師をさせて頂いております。

セミナーへは、さまざまな分野の方が参加されます。

そのため、参加される方とのコミュニケーションを大事にし、
参加者様の背景や目的を理解しながら講義を進めるようにしています。

このように、受講者と話す機会が多い中で、
ふと昔に抱えていた「ある記憶」が蘇ることがあります。

それは、設計者として
以前から不思議に感じていたことです。

私はこれまでに航空機、自動車、産業機械といった
多分野の設計をしてきたのですが、

例えば、

自動車の設計では『当たり前』の考え方なのに
 産業機械の設計においては、その考え方が活用されていない

というようなことを、以前より感じておりました。

もちろん、
それぞれ別の分野であっても、
設計として共通する考え方は多くあります。

ですが、実は分野間での壁は意外と厚いです。

それぞれの
「優れた技術や考え方」がお互いに浸透していない、
といったことはよくあります。

もしかすると、
皆さまの中でもこのように感じている方はいるのではないでしょうか。

例えばですが、エクセルやワードといったものは
技術レポートの作成に使います。

また、その他ツールについても
それぞれのツールを使う「別の目的」があります。

ですが、
これらのツールは関数式やマクロなどの使われ方が
違っているだけなので、良いところを
それぞれ取り入れることで、さらに便利なツールができます。

このような気づきは、
過去の設計経験によるものです。

実際に作成したツールは、
セミナーに参加された方へ「特典」としてお渡ししています。

また、MONOWEBの中でも、
皆さまが使えるようにウェブツール化してもらっています。
(こちらはメールの最後に紹介しています)

このように、私の設計経験がセミナーやツールなどを通して、
モノづくりに携わる方々へ貢献できることは、とても嬉しいことです。
今後も、少しでも多くの方のお役に立てるよう取り組んで参ります。

ーーーーー

自己紹介が長くなりました。
お読みいただきありがとうございました。

それでは本日のテーマである
・なぜエクセルに頼ると「設計力が低下する」のか?
についてお話ししていきます。

さっそくですが、
あなたは日々の業務で「EXCEL」を使っているでしょうか?

昨今、設計者が技術計算を行う際に
「EXCEL」を頻繁に使用するケースが多いですよね。

今日は、そんな便利ツールである「EXCEL」が
新人設計者の「設計力の低下」に影響を及ぼしているというお話です。

もちろん、ただEXCELを使うのが悪い、
というわけではありません。

その「使い方」について考えてみる、というお話です。

設計現場で多用される「EXCEL」について

設計でパソコンが使われ始めたのは1990年前後です。
それ以前は、設計者の計算ツールは「関数電卓」が代表でした。

よく使う技術計算については、
関数電卓でプログラムを組んでいた、という方も多いのではないでしょうか。

懐かしいですよね。
もしすると、関数電卓なんて使ったことがない
という方も多いかもしれません。

30年以上前の設計では、

  • 計算ツールを自分で作る
  • 近くにいるプログラム好きな人に作ってもらう

というように
「自分で使う設計道具は、自分で準備する」
ことが当たり前でした。

大工さんが、
カンナ(道具)の刃を自分で研いで仕事で使う
イメージと近いですかね。

それから時が経つにつれ、
設計部署には大型のパソコンが導入されていきます。

「設計図面」についても、紙と鉛筆で描いていたものが
パソコン(CAD)で作図するようになっていきました。

便利ツールをつかった技術革新

時が経ち、関数電卓を使う設計者は少なくなりました。

代わりに、「EXCEL」や「CAEソフト」などの
計算ツールが使用されるようなります。

あなたも、このようなツールは
よく使っているのではないでしょうか。

とくに「EXCEL」は、誰でも簡単に
計算ツールが作れるため使っている方が多いですよね。

表計算(関数)やグラフ作成としての基本機能から、
標準機能として組み込まれている「VBA」を使うと
より複雑な計算を実行することができます。

職場には「Excel職人」と呼ばれる
パソコン好きな方が一人くらいいたりしますね。

そして、そのような方が様々な計算ツールを作り、
設計工程に組み込んでいくわけです。

これにより大きなイノベーションが起こり、
設計業務の生産性を大幅にUPさせることができました。

結果として、
あなたもご存知の通り「EXCEL」をはじめとした計算ツールの利用は
今や当たり前のように使われています。

関数電卓が主流だった時代から、
この数十年で、EXCELをはじめとした便利ツールは
設計プロセスの一部になったわけですね。

ツールを多用することの弊害とは?

これらの業務ツールですが、先人がつくった
素晴らしい道具ではあることは誰もが認めます。

しかし、ここに来て「ツールを上手に使いこなせる
後継者が育っていない」という課題がでてきました。

ーーーーー
あなたは、ツールを使って得た結果の根拠を説明できるでしょうか?
ーーーーー

このような設計ツールは、
ほとんどが設計諸元を入力するだけで
かんたんに出力値を得られます。

そのため、

「結果が出てしまうので、間違った計算をしても原因が分からない。。。」

「中身のロジックがわからないので、精査できず間違いの発生に気がつかない。。。」

といった問題が起きてしまいます。

今では、同じようなツールとして、
インターネットで検索すると、ばね、歯車、タイミングベルトなどの
選定を簡単にできる計算ソフトも見つかります。

私も実際に使ってみましたが、
これらのツールはとても便利です。

ただ、
こちらも「計算過程がブラックボックス」になっているため、
全く知らない人が使うと非常に危険、と感じました。

またもう一つの問題点として、
システムを作った人が退職や転職をしてしまう
というリスクがあります。

システム開発者や、使い方を熟知している人がいないと、
それまでは便利に使えていたツールも
ただの使えない箱と化してしまいます。

技術力低下に対する対応策とは

既にこの問題に直面して
対策を講じている企業も多いのではないでしょうか。

使えなくなったシステムは、

・手計算に置き換え見える化する。
 ↓
・エンジニアを教育する。
 ↓
・再度自動化

という対策を取ることが通常です。

ですが、これでは暫定的な対策となり、
時間が経つと「使えるエンジニアがいない」
という問題が再発してしまいます。

このように、ツールそのものに目を向けていては、
本質的な解決ができず、負のループに入ってしまいます。

では、どうすればいいのか?

私からの提案ですが、

ーーーーー
「技術計算」をシステム化するのではなく、
「技術者の教育」をシステム化する
ーーーーー

というのはどうでしょうか。

すなわち
「自分の設計道具を、自分で作れるエンジニア」を育てる、
ということです。

このように、
「技術者の教育をシステム化」できれば
負のループから抜けだせます。

私が講師を務めています
「計算書計算書作成セミナー」では
3つの方法を使って、強度計算を行います。

3つの方法とは、

ーーーーー
・手計算
・エクセル
・そのほかのツール(CAEやこのメルマガで紹介する便利ツールなど)
ーーーーー

です。

私がこれまで実施してきた
「最低3つの方法で計算する」
という方法をセミナーでは実施してもらいます。

少し大変ですが、手計算に慣れて頂くためにも、
関数電卓をたたいてもらいます。

このような昔ながらの方法を行うことで、
エンジニアの計算能力を向上させることができる
と考えています。

慣れない間は、
少し時間が余計にかかってしまいます。

ですが、計算や力学のロジックが解ってツールを使うことで、

・間違いを精査することができる
・途中の計算式からツールにない出力を自分で計算して求めることができる
・システムが独り歩きしない

という、大きなメリットを得られます。

エンジニアは、ただツールを機械的に使うのではなく、
その仕組みを理解し、操れる「職人」であるべきです。

私は、常にそのようなエンジニアを育成できる
システム作りが必要である、と考えます。

一つの解決策として取り入れて頂ければ幸いです。

また、冒頭でお伝えしました便利ツールは以下よりご覧ください。

・「梁のたわみと応力計算ツール」

このツールは、梁の種類、荷重、材料などを選択すれば
カンタンに「たわみ」と「応力」が計算できるツールです。

このようなツールは、皆さんの職場でも
EXCELなどで作って利用している企業も多いでしょう。

今回、公開したツールは、少しだけ工夫しております。

それは、「計算式を全てオープンにしている」ということです。

入力した値が、どのような計算式で
出力されるのか分かるようになっています。

手計算して、こちらのツールで合わせて計算すると
どこが間違ったのか直ぐに理解できるようになっています。

新人設計者の教育ツールとしてご利用頂けると嬉しいです。

ツールはこちらからアクセスしてください。

→ https://d-engineer.com/unit_formula/haritawami.html

ーーーーー

また、今後開催予定のMONOWEBセミナーはこちらから確認してみてください。
https://d-engineer.com/seminar/

以上、最後までお読みいただきましてありがとうございました。
今後も定期的にコラムを執筆させて頂きます。

MONOWEB講師&設計技術アドバイザー 赤尾

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