設計者の人材育成の進め方!メカトロ分野のエンジニア育成を例に現役教育講師が解説

投稿日:2021年11月05日

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あなたの職場では「設計者の人材育成」を計画的に検討されていますか?

目先の仕事に夢中になり、人材育成は後回しにされてしまう場合があります。その結果、技術継承が上手く進まない、働き方改革が進まない等の弊害が出て来る場合があります。

そこで今回は、メカトロ分野の設計者育成の進め方について、事例をあげて解説していきます。ぜひあなたの職場にも取り入れてみてください。

なぜメカトロ設計者の人材育成は必要なのか?

メカトロ設計者の人材育成を計画されていない職場では、この仕事はAさんしか担当出来ない。

今月もAさんの残業が法定労働時間を超えそうなので、直ぐに対応が難しい。

この様な状況でも「職場内で誰もバックアップ出来ない」「業務平準化が進まない」という課題を抱えていることが多いのではないでしょうか?

また、人材育成教育を個人任せにしてしまうと、昔ながらの職人の様にこの仕事を覚えるには10年掛かる。

ベテラン設計者は自分で設計した方が早いので背中を見せていれば、
何れ後輩は勝手に育つ。

この様な方法でメカトロ設計者の人材育成や技術継承は確実に進んでいくでしょうか?

上記の様な俗人的な状態を改善するために、メカトロ設計者の人材育成を組織的に推進することは重要です

メカトロ設計者の人材育成を推進するに連れて、「複数で業務ができる様になった」「業務の平準化が進み、職場の平均残業時間が低減した」という事例が多くあります。

1.目標設定

先ずは教育計画を作成する前に、次のステップで検討されると良いでしょう。

  • 会社の経営方針や技術的な中期計画の確認
  • 上記を受けて、組織目標を明確化
    (例えば、直近半年間と3年後の目標設定)
  • 上記の状況と直近の業務負荷状況を反映し、人員構成を検討
  • 現状のメカトロ設計者のレベルを把握し、直近のレベルアップ計画を作成

1)技術分野のリストアップ

未だメカトロ設計者の育成計画が無い場合は、職場の業務を進める上で必要な技術分野をリストアップして、徐々に育成計画を拡充しましょう。

技術分野のリストアップは、
例えば搬送装置の場合、ベルトコンベアの設計モータ選定、回路設計、シーケンス制御の様に構成する技術分野をリストアップすると良いでしょう。

技術分野リストをまとめることで、業務のモジュール化も意識する様になり、業務全体のバックアップは難しくても、部分的に助成出来る業務が視覚化できる効果もあります。

また、会社内で共通するものがあれば組織単位では無く、会社共通で管理するルールを定めて置くと、異動が生じた場合にスムースに移行が行えます。共通リストの一例としては、品質管理、安全等に関する会社共通の教育が対象になります。

2)技術レベルの評価基準

技術レベルの評価基準の一例としては、以下の様に定義を明確にすると良いでしょう。なお、装置立ち上げに必要な資格については、公的な資格取得を目標にスキルアップ計画を作り取り組むと良いでしょう。

■知識に関する技術レベルの評価例

  1. 知識無し
  2. 概要教育受講
  3. 指示を受け業務可能
  4. 1人で業務が可能
  5. 業務の調査・承認が可能

■資格に関する技術レベルの評価例

メカトロ設計を進めるために必要な資格としては、機械プラント製図や電気主任技術者、産業用ロボット特別教育等があります。

  1. 知識無し
  2. 概要の知識有り
  3. 有資格者の指示を受け作業可能
  4. 技能検定 XX △級合格、作業経験有り
  5. 技能検定 XX 〇級合格、作業経験有り
  6. 技能検定 XX 〇級合格と管理者教育受講

3)現状レベル把握

次に各技術者の現状レベルを分析します。組織目標に対して、どの技術分野の育成が不足しているかを明確にしましょう。
定期的に実施される様に成れば、前回の評価結果を参照し省略が可能です。

4)人材育成計画の作成

人材育成の計画作成の手順として、事前に組織目標レベルを定め、これらに対して不足を確認し、計画を作成すると良いでしょう。

例えば、直近の業務計画の負荷状況を確認します。

確認したところ、「業務X」の負荷上昇が見込まれることがわかりました。

そして、「業務X」を実施可能なメカトロ技術Yが不足していることが判明、
そこで技術者Zに担当してもらうことを想定し、
メカトロ技術Yを事前にレベルアップする計画を設定し、
リソース不足を未然に防止します。

また、メカトロ設計者の技術分野によっては、
実務体験を通じて試験の進め方や装置調整、制御プログラム修正の様に作業方法やトラブル経験により養われる知識が多くあり、これらはOJT教育で進めます。

OJT教育は、物によっては実際に製品や装置製造の日程に合わせて計画すると良いでしょう。

同様に調査・承認権限を持つ技術者のリソース不足が無いか確認し、組織として上位設計者のレベルアップを計画しましょう。
教育計画を作成後は、設計者に組織の状況や今後の教育計画を伝え、教育内容を共有して進めましょう。

2.教育プログラムの作成と更新

教育プログラムを未だ整備されていない場合は、各技術分野のレベル上昇のために教育プログラムを制定します。教育プログラムを作成する際には、技術伝承項目を定め、概要教育はメーカHPや設計便覧等の情報を参照すると良いでしょう。

一方、上位レベルの教育は、知識量が増加するので、例えば当社のMONO塾の様な教育サービスや外部セミナー受講、市販の教科書を活用すると良いでしょう。

また、最近はONLINE教育が多いので、教育の場で現物を確認することが出来ません。このため写真や動画を活用して実例を入れ教育資料を作成すると、より分かり易くなるでしょう。

教育プログラムは実際に教育を進めて改善が必要と判断された場合には、定期的に見直し、最新技術情報を反映して更新しましょう。

3.教育実施と結果確認

教育実施月になったら設計者の上長は、設計者をフォローし教育を進めてもらいます。メカトロ設計者の教育は個人で資料を読み進めるものと、座学で習得するものがあります。

また、OJT教育を行う場合には、具体的に継承する技術とその内容について組織内で議論し、同レベルで教育される様にチェックシートを作成する等の工夫をすると良いでしょう。

何れの教育においても大切なのは単に教科資料を読む。OJT教育を受けた。で終わりでは無く、理解度や実技テストを実施し、受講者の理解度不足がないか?不足している場合は、再教育や補足教育を行い着実に定着することが重要です。

4.教育結果のまとめ

教育後、受講者にアンケートを記載してもらい、結果をまとめると良いでしょう。

ここで教育資料が判り辛い、この知識が教育では不十分等、教育に対する意見や改善要望があれば、職場内で議論し、誰がいつまでに改善を実施するか改善計画を作り、着実に更新しましょう。また、受講後は教育記録を残し管理しましょう。

まとめ

さて、いかがでしたでしょうか。

ここまでの説明で、メカトロ設計者の人材育成を計画の作成や教育プログラムの作成、教育結果のまとめ方について理解いただけたでしょうか。

この記事でのポイントをおさらいすると以下の通りです。

  • 目標設定(組織目標、直近の負荷状況から人員計画、教育計画を設定)
  • 教育プログラムの作成と更新(技術伝承項目を決めチェックシート化)
  • 教育実施と結果確認(理解度テストを活用し、確実に理解させることが重要)
  • 教育結果のまとめ(アンケートを活用し、改善計画をまとめる)

少し難しいと感じた方もいるかと思いますが、先ずは自職場の業務の技術分野をリストアップし、優先順位を決めて人材育成プログラムを整備してみませんか?

先ずは一部を実行、そして少しずつ教育プログラムを拡充していくことで効果を実感しながら進めていくのが良いのでは無いでしょうか?

メカトロ設計者の人材育成は地道な活動ですが、次世代に技術継承を確実に進めると共に業務平準化を進め、組織目標を達成するためにも、ぜひあなたの職場においても上手く取り入れ、継続的に進めることにより、組織力を高め、働き方改革の促進に繋げていきましょう。