投稿日:2022年11月11日
新しい機能や製品を開発したとき、しっかり特許性を確認していますか?
新規性があるのに特許出願しないでいると、その機能を真似されるばかりか、訴えられる可能性もあります。そうならないために、特許権を取得して発明を守ってあげましょう。
特許権を取得すると、基本的にはメリットが多いですが、少しのデメリットも存在します。デメリットがメリットを上回る場合は、特許出願を見送る必要があるため、メリットとデメリットの両方を理解しておくことが重要です。
そこで今回は、特許出願のメリット6選と、デメリット3選について紹介します。メリット・デメリットを理解することは、特許出願の第一歩になるのでしっかり理解しておきましょう。
特許出願とは
特許出願とは、自分の発明に対して特許権を取得するために、特許庁に願い出ることをいいます。
特許出願を「特許申請」と勘違いしている人がいますが、特許申請という表現は間違いです。申請なら書類が揃っていれば許可されますが、出願の場合、条件を満たしていないと許可されません。
特許の場合、特許の条件を満たしていないと許可されないため「出願」となります。特許は「申請するもの」ではなく「出願するもの」と覚えておきましょう。
そもそも特許権とは?
特許権とは、発明を他の人が勝手に使わないために保護する権利のことです。
特許権を取得すると、その発明を独占的に使用できますし、第三者が使用していた場合は排除できます。
特許出願しただけでは特許にならない
実は特許出願しただけでは特許になりません。特許出願しただけでは、出願から1年半後に「公開特許公報」によって発明が世間に知られるだけです。
この状態では、特許権を取得していないので、自分の発明が真似されても文句を言えません。
そのため、特許権を取得したいなら、出願日から3年以内に「審査請求」を行う必要があります。審査請求を行うと、特許庁の審査官が特許を審査し、特許に値する発明のみが審査を通過します。
審査を通過した発明は、特許権が成立して、「特許公報」に掲載されます。
特許出願するときの注意点
特許権を取得するためには、審査を通過する必要があります。そのためには、以下のようなことに注意しましょう。
- なるべく早く出願する(先願主義のため)
- 出願が終わるまでは発明の内容を秘密にする(新規性が必要なため)
- 他人が簡単に思いつかない範囲だけを出願する(進歩性が必要なため)
- 実際に実現できるか考える(利用可能性が問われるため)
- 特許権を取得した後のことも考える(維持費がかかるため)
- 内容によっては実用新案を選択する(特許より簡単なため)
特許出願のメリット6選
特許権を取得するのは大変ですが、その分さまざまなメリットを受けられます。主なメリットは以下の通りです。
コピー品を防止できる
特許権を取得すると、その発明を独占的に使用できます。そのため、他社はその発明を使った製品を販売できなくなるのです。
また、販売していた時には、販売を停止させたり、損害賠償を請求したりできます。
販売中止のリスク回避
自社で販売している製品が他社の特許を侵害している場合、販売を中止しなければいけなかったり、損害賠償を請求されたりするリスクがあります。
特許を侵害していないかは、製品開発するときに調べると思いますが、自社の調査だけでは不十分な場合があります。しかし、特許権が取得できたということは、他社の特許を侵害していないと専門家からお墨付きがもらえたようなものです。
なぜなら、特許出願して審査請求をすると、特許のプロである審査官が他の特許と比較して、他の特許を侵害していないか確認してくれるからです。そして、他の特許を侵害していない場合のみ、特許権を取得できます。
そのため、特許権が取得できたということは、他社の特許を侵害していない可能性が高いです。つまり、特許権を取得することで、特許侵害をするリスクが大幅に減るわけです。
競合他社の特許取得防止
特許には先願主義という考えがあるため、特許権は最初に出願した人に権利があります。そのため、他社より1日でも早く出願しておけば、競合他社は同じ発明で特許権が取得できなくなります。
また、審査請求をした結果、特許にできなかった場合や、審査請求をしなかった場合でも、その発明内容は公表されます。特許には「新規性」「進歩性」が求められるため、公表されている内容と似ているものや、簡単に想像できるものは特許として認められません。
そのため、他社が同じような発明をしても、特許にならなかった発明の内容が邪魔をして、特許を取得できない可能性があります。
このように、たとえ特許権が取得できなくても、競合他社の特許取得をけん制する効果があります。そのため、特許にならなそうな発明でも、念のため特許出願だけしておくという方法もあります。
ライセンス料を得られる
特許権を取得した発明を他社が実施したい場合には、実施する対価としてライセンス料を受け取ることができます。
営業的に有利な場合も
特許を取得できたということは、その製品に最先端技術が使われていることの証明になります。また、他社の特許を侵害していない証明にもなります。
ユーザーによっては、最先端技術に価値を感じて購入してくれる場合があります。また、同じような製品があった場合、特許侵害で販売中止になる可能性がある非特許製品より、特許製品を優先的に選ぶこともあります。
このように、特許取得が営業的に有利になる場合があります。
技術力をアピールできる
特許を取得するには大きな障壁があるため、その分特許を取得した製品の信頼度が上がります。言葉では伝わりづらい技術を、特許が証明してくれるわけです。
技術力のアピールは、顧客に対してだけではなく、銀行からの融資などでも役立つ可能性があります。技術力という目に見えないものを、特許という目に見えるものに買えてくれるのです。
特許出願のデメリット3選
たくさんのメリットがある特許出願ですが、デメリットも存在します。主なデメリットは以下の通りです。
発明内容が知られてしまう
特許とは、発明を公開する代わりに、発明を独占できるという制度です。そのため、特許を出願すると「公開特許公報」、特許権を取得すると「特許公報」によって発明が公開されます。
発明が公開されると、その発明をもとに、より有効な発明が開発されてしまうかもしれません。
また、日本で出願された特許を見た海外のメーカーが真似をしても、日本の特許では発明を守ることができません。日本国内であっても、特許権の存続期間は最大で20年(一部25年)なので、それ以降は他社でも使い放題です。
このようなデメリットもあることから、本当にコアな技術はあえて特許にしない企業もあります。
特許取得に時間がかかる
特許を出願するのにはそれほど時間がかかりませんが、審査請求をしてから特許を取得するまでには数年かかります。そのころには製品の優位性が無くなっているかもしれません。
早期に特許権を取得したい場合には、「早期審査制度」を利用すると良いでしょう。早期審査制度を利用すれば、半年~1年以内に審決が決まることが多いです。
費用負担がある
特許を取得するには、弁理士などの特許事務所に払う費用や特許庁に払う費用などで、数十万円~100万円程度かかります。また、特許を維持するためには特許1つにつき数千円から数万円かかります。
そのため、売り上げに貢献しない特許は、費用が無駄になってしまうかもしれません。費用を少なくするための補助金や減額制度があるので、そのような制度を上手に使いましょう。
まとめ
今回は特許出願のメリット・デメリットについて紹介してきました。
新しい製品や機能を開発しても特許出願をしないでいると、他社に真似されるばかりか、他社が特許出願することで、自社で使えなくなってしまいます。さらに、損害賠償を請求されることもあるので、新規性がある発明は必ず特許出願を検討しましょう。
特許と聞くとハードルが高いように思うかもしれませんが、皆さんが日々行っている開発も特許の対象になります。自信をもってチャレンジしてみましょう。