投稿日:2025年09月29日

構想設計の初期段階では、「どんな構造が最適か?」「市販部品で成立するか?」など、判断に迷うことが多くあります。経験豊富な設計者でも、新しい機能や制約に直面したとき、最適解を見つけるのは簡単ではありません。
そんなときに役立つのが、ミスミinCAD Libraryです。このライブラリは、実際の設計事例を豊富に収録しており、構想段階での検討材料として非常に有効なツールです。
本コラムでは、inCAD Library を活用して構想段階の引き出しを増やし、より効率的で実現性の高い設計を行う方法をご紹介します。
このコラムを書いた人

武田(もの猫):機械設計のプロフェッショナル
製造業で10年以上にわたり機械設計に従事し、機械設計技術者試験1級を保有。基本設計から評価、量産までの工程を経験しています。若手技術者の育成や設計リーダーとしての役割も担い、幅広い業務での知見をもとに、実務に役立つ情報を発信することを目指しています。
inCAD Libraryとは
まずは、inCAD Libraryがどんなサービスか確認するために、4つの観点から見てみましょう。
どんな「ライブラリ」なのか
inCAD Library には様々な機構を用いた設計事例が多数まとまっており、構想段階のアイデア検討の材料として参照できます。単なるカタログではなく、どのように課題を解決したかが3DCAD図や動作動画、部品リストとともに整理されています。
どうやって探すのか
事例は「工程別」「機構別」「部品別」で横断的に検索できます。たとえば「コンベヤを使った搬送」という工程から入ってもよいですし、「直動機構」「回転機構」といった機構別から入っても構いません。
さらに、部品の「カム」「ばね」から入って、そこから全体構造のヒントを得るという使い方も可能です。具体的事例で解決法を俯瞰できるので、自身の発想を超えたアイデアを得られることもあります。
実務で使いやすい理由
多くの事例はミスミの市販部品で構成されており、仕様・価格・納期といった現実の制約と照らし合わせながら実現可能性を早い段階で判断することが可能です。
3Dデータのダウンロードができる
さらに多くの事例で、そのまま使える 3D CAD データがダウンロードできます。主要な CAD フォーマットに対応しているため、自分の環境へ取り込みやすく、干渉や可動域の確認、モーションの検証、案同士の比較を素早く開始できるでしょう。
inCAD Libraryのメリット
次に、inCAD Libraryの利用で得られる代表的なメリットを見てみましょう

類似機構の探索で「設計アイデアの引き出し」が増える
inCAD Libraryで工程・機構・部品を検索すると、ピック&プレイス、リフト、直動による回転機構、重力の利用、機構の安定化などの多様な解決法に短時間で触れられます。自分では思いつかなかったアプローチを得やすく、検討の選択肢を増やせる点が最大の利点です。
市販部品ベースで実現可能性を早期判断できる
どれほど優れた構想でも、入手性や価格、加工難易度によっては実現が難しくなります。inCAD Libraryの事例は、その多くがミスミ市販部品で構成されているため、調達・コスト・納期の目線での実現性を早めに判定することが可能です。
3D CADの即活用で検証速度が上がる
3DCADデータをダウンロードして取込めば、ゼロからのモデリングを省けます。このため、干渉チェックや動作確認にすぐに着手できるでしょう。複数案の比較も3Dモデル上で実物に近い感覚で行えるので、チーム内での意思疎通も素早くなります。
inCAD Libraryの留意点

最後に、inCAD Libraryを使う上で留意すべき点も確認しておきましょう。
事例は「参考」、必ず実際の設計仕様で検証する
たとえば、ケーブルやホースの取り回しも、周辺レイアウトが違えば最適解は変わります。最小曲率半径、余長処理※1、固定位置は自装置の干渉物と動きに合わせて設計・検証をしてください。

※1 ケーブルなどの余り部分を整理するため、束にしたりカットしたりする処理のこと
知財・規格・更新情報を確認する
事例や参照した部品型番、採否理由は記録に残し、発注前にも点検することで、規格不適合や仕様差異を防ぎましょう。
最後に|知識の引き出し「inCAD Library」を活用してみよう
構想設計は「ゼロから考える」よりも、「過去事例から応用する」ほうが早くて確実です。先人の知恵と経験を活用することで、より短時間で質の高い設計が可能になります。
inCAD Libraryは、設計者のアイデアソースとして非常に有効なツールです。豊富な事例データベースを活用することで、設計の幅を広げ、実現性の高い構想を効率的に立てることができます。
「いつも同じ構造になってしまう」「引き出しを増やしたい」「新しい分野の設計に挑戦したい」という方は、ぜひ一度inCAD Libraryを覗いてみましょう。きっと新しい発見と、設計業務の効率化を実感していただけるはずです。
設計者にとって「知識の引き出し」は最も重要な財産の一つです。inCAD Libraryを活用して、その引き出しをさらに豊かにしていきましょう。
なお、inCAD Library以外の「設計アイデアの引き出し」の増やし方については、以下の記事で解説しています。ご参照ください。
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