投稿日:2026年04月14日

「とりあえず先輩の背中を見て学べ」
そんな昔ながらの指導法では、もはや通用しない時代になりました。
設計者を育てるには、「いつ・誰に・どんな能力を習得させるか」を明確にした、中長期的な教育方針が欠かせません。場当たり的な教育では、知識に抜けや偏りが生まれ、いざというときに使えるエンジニアが育ちません。また、補助金申請の場面でも、こうした教育計画書は必須書類として求められます。
本記事では、設計者に必要な知識をどのような順番で、どのように学ばせるかについて、具体的な教育ロードマップの考え方と実例をもとに解説します。新人育成に悩む教育担当者の方や、自社の人材育成を見直したい方にぜひ読んでいただきたい内容です。
基本的な進め方:7つのステップで設計者を育てる

弊社では、設計に必要な知識をステップ0〜6の7段階に整理しています。一足飛びに高度な設計スキルを求めるのではなく、土台となる基礎知識から順番に積み上げていくのがポイントです。
ステップ0:工学の「土台」を固める
設計を学ぶ前に、まず必要なのが単位・数学・力学などの基礎的な工学知識です。高校卒業レベルの内容ですが、これが曖昧なままだと、後の学習でつまずく原因になります。
「なぜこの数式が成り立つのか」を理解せずに設計を進めると、応用が利かず、想定外のトラブルに対処できません。まずはここをしっかり固めることが重要です。
ステップ0の内容が学べる弊社の対象講座は、以下の通りです。
- 工学知識きその基礎講座
※本講座は他の講座受講時に無料で付属されますが、単体での購入も可能です。
ステップ1:設計という「仕事の全体像」を把握する
次に、設計という仕事がどのように進むのか、その大きな流れと考え方を学びます。細かい技術の前に「仕事の地図」を頭に入れることで、自分が今どこにいるのか、何を学べばよいのかが見えてきます。
製造業特有の開発プロセスや、設計者としての心構えもこの段階で習得します。
ステップ1の内容が学べる弊社の対象講座は、以下の通りです。
- 製造業はじめの一歩講座
- 即戦力エンジニア養成講座
ステップ2:図面を描き、機械要素を理解する
設計の実務において、図面は設計者の「言語」です。このステップでは、決められたルールに従って図面を描く力と、歯車・モータ・軸受などの機械要素の役割と使い方を学びます。
自分で一から設計するにはまだ早い段階ですが、既存の図面を正しく読み取り、簡単な修正や部品の選定補助ができるレベルを目指します。
ステップ2の内容が学べる弊社の対象講座は、以下の通りです。
- 機械製図超入門講座
- 機械要素入門講座
- 機械要素入門講座(メカトロ編)
- 機械要素入門講座(モータ編)
ステップ3:材料を選び、部品図を完成させる
図面が描けるようになったら、次は「何で作るか」を考える力が必要です。鉄・アルミ・樹脂など、材料ごとに強度・重量・コスト・加工性が異なります。
このステップでは、部品図に材料を適切に指定するための知識を習得します。材料選定のミスは、強度不足や製造コスト増大に直結するため、非常に重要な学習項目です。
ステップ3の内容が学べる弊社の対象講座は、以下の通りです。
- 機械材料入門講座
ステップ4:計算に基づいた「流用設計」ができるようになる
ステップ4では、流用設計ができる設計者を目指します。流用設計とは、過去の実績ある製品をベースに、改良・応用して新たな製品を設計する手法です。ゼロから設計するよりもリスクが低く、実務では非常に多く使われています。
このステップでは、材料力学・機械力学・流体力学・熱力学などの「4力(四力)」と呼ばれる工学の核心を学びます。「どこにどんな力がかかり、どこが壊れやすいか」を計算で把握できるようになることで、根拠のある設計判断ができるようになります。
ステップ4の内容が学べる弊社の対象講座は、以下の通りです。
ステップ5:「造りやすい部品」を設計する
良い設計とは、機能を満たすだけでなく、実際に作りやすく・コストが低いものであることも含まれます。このステップでは、切削・樹脂成形・板金といった各加工法の特性を理解し、製造現場の制約を踏まえた設計ができるようになります。
また、幾何公差(GD&T)を習得することで、より正確な意図を図面に表現できるようになります。設計と製造の橋渡しができる人材へと成長する段階です。
ステップ5の内容が学べる弊社の対象講座は、以下の通りです。
- 切削部品設計入門講座
- 樹脂部品設計入門講座
- 板金部品設計入門講座
- 幾何公差入門講座
ステップ6:新製品を「企画から設計まで」担える設計者へ
いよいよ最終段階です。このステップでは、製品の企画・構想・機能設計という上流工程を学びます。「何を作るか」から考え、アイデアを具体的な機構・構造へと落とし込む力が身につきます。
ただし、構想設計には自社特有のノウハウや市場知識も必要となるため、eラーニングでの学習後はOJT(現場での実習)との組み合わせが効果的です。
ステップ6の内容が学べる弊社の対象講座は、以下の通りです。
- 構想設計入門講座(基礎知識編)
- 構想設計入門講座(企画発想編)
- 構想設計入門講座(機能設計編)
ステップのまとめ
|
ステップ |
目標 |
習得できること |
|
0 |
基礎知識を身に付ける |
数学・力学の基礎 |
|
1 |
仕事の全体像を覚える |
製造業の流れ・設計の進め方 |
|
2 |
機械を理解し、製図ができる |
図面作成・機械要素の選定 |
|
3 |
部品図が描ける |
材料選定 |
|
4 |
実績製品を参考に設計できる |
4力計算・流用設計 |
|
5 |
造りやすさを考慮して設計できる |
造りやすい部品の設計 |
|
6 |
新商品の企画・設計ができる |
構想設計 |
教育ロードマップの具体例
実際の教育計画は、業界・会社の特性によって大きく異なります。ここでは2社の具体例をご紹介します。自社の状況に合わせた計画を立てる際の参考にしてください。
例1:ロボットメーカーの場合(6年計画)
背景と目的
このロボットメーカーでは、以下の目標を掲げていました。
- 入社3年目:流用設計ができるようになる
- 入社6年目:構想設計ができるようになる
そこで、以下のような教育ロードマップを作成しました。

ロボット設計には機構・電気・制御など幅広い知識が必要で、すべてを社内で教えることは現実的ではありません。そこで、eラーニングを活用することで体系的な知識を効率よく習得させ、その後のOJTで実践力を高める方針を取りました。
各年度の学習内容
入社時(配属前研修)では、全社員を対象に「製造業はじめの一歩講座」を受講。設計希望者はさらに「即戦力エンジニア養成講座」も受講します。これにより、製造業全体の流れと設計者としての基本的な考え方が身につき、「周りに迷惑をかけない社会人」として業務に入れる状態になります。
配属後1年目ではステップ2の図面の読み書きと機械要素の理解を習得。この段階で設計者のアシスタント業務(バラシ図の作成や部品選定補助)が担当できるようになります。
2年目ではステップ3の材料の選定知識を習得し、コストを意識した部品図の作成が可能になります。ここまでで、ドラフター(製図者)として一人前のレベルに到達します。
3年目ではステップ4の4力を中心とした力学計算を学習。ロボットメーカーの場合、「熱力学」は優先度が低いため省略し、「構造強度設計」「機械力学」に集中するのが合理的です。この時点で流用設計ができる力が身につきます(当初目標を達成)。
4年目ではステップ5の各加工法と幾何公差を習得。造りやすさを考慮した設計ができるようになり、製造コスト削減にも貢献できる設計者へと成長します。
5年目ではステップ6の構想設計のプロセスを学習し、企画から機能設計まで担えるスキルを習得。eラーニング後はOJTと組み合わせることで、実務に即した構想設計力を磨きます。
6年目以降は、構想設計を一人で担当できる設計者へと成長。以降は、これまで未受講の分野や苦手分野を補完するかたちで継続学習を進めます。
例2:金型設計メーカーの場合(2年集中計画)
背景と目標
この金型設計メーカーは、顧客の部品を製造するための金型を設計する企業です。自社製品を一から設計するというよりも、顧客の部品図を理解し、それを金型という形に落とし込むのが主な業務です。
そのため、必要な知識は比較的絞られます。この会社は「2年で即戦力に育てる」という明確な目標を掲げ、学習内容を徹底的に絞り込んだ教育ロードマップを設計しました。

各年度の学習内容
入社時(新入社員研修)は、「製造業はじめの一歩講座」を全員受講。製造業の全体像を把握することで、自分たちの仕事が業界のどこに位置するかを理解します。
配属後1年目には「機械製図超入門講座」と「幾何公差入門講座」を受講し、図面の読み方・描き方を徹底的に習得。この段階でドラフター業務を任せられるレベルに達します。幾何公差はこの業界で特に重要な知識であるため、早い段階から学ばせているのがポイントです。
2年目には「機械材料入門講座」と「樹脂部品設計入門講座」を受講。金型設計に欠かせない材料特性と樹脂成形の知識を習得します。この段階で金型設計の基礎が整うため、以降はOJTで実践的なスキルを磨いていく方針です。
このように、業務に直結する知識だけに絞ることで、最短2年での即戦力化を実現しています。
何を教育して良いかわからないとき
何を教育して良いかわからないときは、弊社が無料で提供している「設計知識診断表」を使用すると良いでしょう。ここでは、設計知識診断表の使い方を解説します。

1.現状の欄に知識レベルを入力
F列の黄色いセルの中に、教育対象者の知識レベルを入力します。教育対象者に入力してもらうと良いでしょう。
入力する数値は0から3までの4段階です。
- 0:知識がない
- 1:基礎知識を有する
- 2:知識を持っている
- 3:深い知識を持っている
2.業種を入力
知識レベルの入力が終わったら、自社の業種を選択します。
青いセル内に書かれている業種から、自社の業種に最も近い業種を選択し、その業種の列の9行目にある黄色いセルに「1」を入力します。
業種を選択すると、目標とする知識レベルがH列に表示され、教育対象者の知識レベルと目標とする知識レベルとの差がG列に表示されます。
目標とする知識レベルは、以下の基準で掲載されています。
0:重要度無(知識の必要がない)
1:重要度低(基礎知識を必要とする)
2:重要度中(知識を必要とする)
3:重要度高(確実な理解を必要とする)
3.GAPを確認
表で見る
目標に達していないスキルは、G列が赤いセルで表示されます。

この例の場合、樹脂部品の設計に関する知識が、本来なら「3」必要なところ、現状「2」しか理解できていないので、GAPが「-1」になっており、セル画赤くなっています。
赤いセルになっている知識は、目標に達していない知識なので、教育することが望ましいです。D列にその知識を学習できるeラーニングが記載されておりますので、ご参考ください。
グラフで見る
また、ファイルの下部では、教育対象者の知識レベルと目標とする知識レベルを円グラフで表示しています。赤が現状の教育対象者の知識レベル、緑が目標とする知識レベルです。
赤より緑の方が外側にある知識は、目標に達していない知識なので、教育することが望ましいです。円グラフの外側にその知識を学習できるeラーニングが記載されておりますので、ご参考ください。

この画像の例の場合、部品設計、構想設計、電子回路あたりの知識が不足していると読み取れます。
4.教育する内容を決める
基本的に、表の上に書かれている内容ほど優先して学習することをおすすめしています。
そのため、GAPを上から順番に確認していき、マイナスになっている内容から順番に教育していくと良いでしょう。
ただし、業界によっては優先して学習したい内容が異なる場合があります。そのため、一度は全体を見渡して確認しておくと良いでしょう。
もっと簡単に確認したい場合
設計知識診断表は、知識レベルを詳細に知ることができる一方で、100問以上の知識に対して自己評価しなければいけないため、負担に感じるかもしれません。
そのようなときには、もっと簡単に確認できるツールとして、「設計知識スキマ診断」をご用意しています。
WEBサイト上でいくつかの質問に答えるだけで、次にどの分野を学習すれば良いのかがわかるようになります。
まとめ:教育ロードマップは「投資」である
設計者の育成は、一朝一夕では成しえません。しかし、体系的な教育ロードマップを作成し、段階的に学ばせる仕組みを整えることで、育成の速度と質は大きく変わります。
重要なのは、以下の3点です。
- 自社の業務に必要な知識を明確にする
- 段階を踏んで積み上げる
- eラーニングとOJTを組み合わせる
教育ロードマップは、補助金申請のための「義務」ではなく、会社の未来を作る戦略的な投資です。ぜひ自社の実態に合わせた計画を設計し、強い設計者チームを育ててください。
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