ボルトナットの強度区分について理解しておこう

投稿日:2022年08月02日

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普段から慣れ親しんでいる六角ボルトと六角ナットの強度ボルトとナットには、強度区分よばれる数字が刻印されていることをご存じでしょうか?普段から意識をしていないと見落としてしまいますが、「そういえばボルト頭に、数字が書いてあったような、、、」と気になっていた人もいるかもしれません。

この六角ボルトナットの強度区分は、その名の通り、ボルトとナットそれぞれの強度を示しています。

この強度区分がある理由は、なんでしょうか?

機械設計者は必ず知っておかなければいけないことがあります。

それは、「ボルト・ナットは強度が高ければよいというモノではない」ということです

ボルト・ナットは、ねじを締めることで、モノを締結する為、ねじ部の伸びが締め付け力として作用します。その為、母材より硬いボルトを使用した場合は、そのねじ部が伸びる前に母材を破壊してしまうことになるのです。

その為、ボルトの強度は、母材の強度を超えてはいけないのです。

さらに、ボルトとナットの組み合わせは、ボルトよりナットの方が強度がやや高く設定されており、その組み合わせも決まっているということを知っておく必要があります。

その組み合わせを分かりやすくするために、強度区分が存在しているのです。

この記事では、その強度区分のルールについて解説していきます。

強度区分の記号とルール

ボルトが鋼の場合

強度区分は2つの数字で構成しており、左側の数字は、そのまま引張強さ(N/mm2)の100分の1を表しています。一方、右側の数値は、呼び下降伏点又は0.2%耐力(N/mm2)が引っ張り強さの右側数値(%)であることを示しています

例えば、10.9と刻印されている場合は、左側の10は引張強さ1000N/mm2を示し、右側の8は下降伏点の値が1000N/mm2の80%であることを示しています。

表.ボルトの強度区分について

ボルトの種類※ 部品等級 ねじの呼び径(mm) 強度区分
呼び径ボルト A
B
d<3, 受渡当事者間の協議 で決定する
3≦d≦39 5.6 , 8.8 , 9.8 , 10.9
d>39 受渡当事者間の協議 で決定する
全ねじボルト
呼び径ボルト
全ねじボルト
C d≦39 3.6 , 4.6 , 4.8
d>39 受渡当事者間の協議 で決定する
有効径ボルト B すべてのサイズ 5.8 , 6.8 , 8.8

※表の中にある鋼製ボルト種類は、新六角ボルト(JIS2004改定)の「呼び径六角ボルト」「有効径六角ボルト」「全ねじ六角ボルト」の3種類のボルトがあります。形状は下記図をご確認ください。

図.鋼製六角ボルトについて(3種類ある)

※この表には記載してませんが、負荷能力が低いボルト(低頭ボルトや皿ボルト等)は、この強度区分の頭に0が付いた「04.6」「04.8」「010.9」「012.9」で示されています。

部品等級とは何か

部品等級とは簡単に説明すると、ねじ部の表面粗さによる違いを等級で表したものです。

部品等級には、A,B,Cのランクがあり、精度がよい場合は「A」、精度が低い場合は「C」を使用してます。

さらに、ボルトの長さLとねじ部呼び径dによって、下記の様に区分が分かれています。

部品等級Aは、ねじ部の呼び径dがM1.6~M24でかつ、長さLが10×d又は150mm以下のモノを対象としている。

部品等級Bは、ねじ部の呼び径がM27~M64のものや、呼び長さが10×d又は150mmを超える場合に対象となる。

部品等級Cは、ねじ部の呼び径M5~M64を対象としているが、細目ねじは対象にならない。

表.部品等級の公差

部品等級 公差の水準
軸部、座面 その他形状の
A 精度(6.3a) 精度(6.3a)
B 精度(6.3a) 精度(12.5a)
C 精度(12.5a) 精度(12.5a)

ステンレス製のボルトの場合

ステンレス製の六角ボルトは、強度区分の代わりに「性状区分」と呼ばれるものを用いています。ボルトに「A2-50」「A4-70」等の記号が刻印されていますので見てみてください。

記号の意味は、2Aや4Aは鋼種区分で、50や70は強度区分を示します。

表.ステンレス製六角ボルト性状区分

鋼種 鋼種l区分 強度区分 引張強さ
N/mm2
0.2%耐力
N/mm2
オーステナイト
ステンレス
A1,A2,A3,A4,A5 50 500 200
70 700 450
80 800 600
マルテンサイト
ステンレス
C1 10 1100 820
C3 80 800 640
C1,C4 50 500 250
70 700 410
フェライト
ステンレス
F1 45 450 250
60 600 410

六角ナットに関して

六角ボルトに強度区分があるように、六角ナットにも同様に部品等級と強度区分が決まっています。ボルトとナットの強度バランスは、ナットの方が強度上高くなるような組み合わせで使用しなければいけません。

強度区分が4の場合は、保証荷重応力の値が400N/mm2であり、10の場合は1000N/mm2となります。

0が付く場合(04,05等)は六角低ナットの強度区分になっています。

表.並高さナットの強度区分と組み合わせるボルト

ナットの強度区分 ナットに組み合わせるボルト
強度区分 ねじの呼びの範囲
4 3.6 , 4.6 , 4.8 M16を超えるもの
5 3.6 , 4.6 , 4.8 M16以下
5.6 , 5.8 M39以下
6 6.8 M39以下
8 8.8 M39以下
9 9.8 M16以下
10 10.9 M39以下
12 12.9 M39以下

又、六角ナットの部品等級は、ねじサイズによって適用範囲が異なります。

➀部品等級Aは、M16以下の六角ナット

➁部品等級Bは、M18以上の六角ナット

③部品等級Cは、M5~M64の六角ナット

ナットのスタイル1、スタイル2とは?

六角ナットにスタイル1とスタイル2というものが存在しているのを知っていますでしょうか?

ナットは、その高さによって、スタイル1とスタイル2を区別しています。スタイル2の高さは、スタイル1のものより、約10%ナットが高くなっているのです。ナットの高さは、ねじ山の数に影響を与える為、ねじ山の数が多ければ多いほど締め付け時の力が高まります。

このスタイル1とスタイル2が導入された理由

導入される前は、同じ強度区分のボルトナットを組み合わせた場合、その部材の硬さによって熱処理が必要と判断される場合がありました。

そこで、新たにスタイル1とスタイル2の差別化を行い、降伏点に達するまで締め付けをしても、その降伏点に耐えられるモノをスタイル2と定めることになったのです。

その規定が導入されたことで、使用者はナットを熱処理すべきか悩むことがなくなり、経済的にナット選定が出来るようになったのです。

強度が必要な締結では、極力スタイル2を用いる様にしましょう。

※ただし、このスタイル1とスタイル2の区分は、六角低ナットでは用いないので注意が必要です。

まとめ

ボルトナットは普段から身の回りにあるにもかかわらず、ネジサイズが合えばなんでも使用できると思い込んでしまっている人は多いかと思います。

強度の考慮が必要な場面では、きちんとボルトとナットの強度を確認してから使用するようにしましょう。

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