投稿日:2022年03月10日
「ボール弁は操作しやすいから、どんな場合でも使用できるの?」
「装置に取り付けるバルブはとりあえずボール弁でいいかな?」
弁を選定する際に、設計者はどんな弁を付けるべきか悩んだことはないでしょうか?
図.様々なバルブの形状
流体をせき止める為の弁には、ボール弁や玉形弁(グローブ弁)、ゲート弁、ニードル弁など様々な形状があり、用途に合わせてその特徴を活かして使用することが必要です。各弁の主な特徴を以下の表でまとめてみました。弁を選定する設計者はこの特徴をよく理解しましょう。
表.各形状の弁の特徴
弁形状 | 特徴 | シール部の構造 |
ボール弁 | ボール状の弁体を回して開閉させる構造。 流体の圧力損失が非常に小さい。 |
ステム部:Vリング等 |
玉形弁 (グローブ弁) |
流体の圧力を弁棒が受ける構造となっているので閉める力が大きい弁。流量調整が可能。弁の圧力損失が大きい。 | ステム部:グランドパッキン 弁体:金属接触シール |
ゲート弁 | 弁体がゲート板になっており、その板を上下させて開閉する。 全開と全閉のみで使用し、弁開度で流量を調整することは出来ないが流路を大きく取れる為、抵抗が少ない |
ステム部:グランドパッキン 弁体:金属接触シール |
ニードル弁 | 弁体がくさび型であり、流量をコントロールしやすい弁 | ステム部:Vリング等 弁体:金属接触シール |
ダイヤフラム弁 | 接液部がエラストマーであり、耐食性に優れている弁。その樹脂で出来た流路を機械的に潰して開閉する | 弁体もエラストマー製 |
バタフライ弁 | 弁棒と一体となった板状の弁体が回転することで開閉する構造。弁の面間寸法を薄くしコンパクトな取り付けが可能。ガスに対してのシール性は弱い。 | ステム部:グランドパッキン 弁体:金属接触シール |
操作性に優れたボール弁
様々な弁の中でもハンドルを90度ひねるだけで開閉できるボール弁は操作性に非常に優れており、バルブを選定する際は、他のバルブに比べてボール弁が選ばれる傾向は高いです。
さらに、シール性においてもハンドルの閉め加減によらず誰が操作しても一定である為、誰でも簡単に流体の閉め開け操作ができるというメリットがあります。
ボール弁の構造を知っておこう
ボール弁の構造について説明します。
ボール弁はボールと呼ばれる球体に穴が空いており、その穴が流路になっています。その穴の向きをステム(軸)とハンドルで90°回転させることで開閉が出来る構造です。
さらに、0°から90°までの間で弁の開度を調整して、流量を調節することもできます。
又、その穴のサイズが接続する配管の内径と同じであれば「フルボア」、配管の内径より小さければ「レデュースボア」と呼ばれています。
ボール弁のデメリットってあるの?
操作性が優れているボール弁ですが、弱点が2つあります。
その1つの弱点は、弁シール部が摺動してしまうため、摩耗してしまう点です。
その摩耗対策にボール弁では以下の対策を取っています。
➀シール部の摺動部には樹脂(PFA等)やカーボン類を使用している。
➁ボール表面にはシール製を向上させるためにグリスを塗布している。
図.ボール弁の摺動部リングの取付場所
ボール(赤色)とリング(赤色)の間で摺動する
この➀と➁の対策は、経年劣化によってシール性が損なわれ、弁体の洩れにつながらない様にする工夫なのです。一度でもボール部のシール面に摺動傷が付いてしまった場合は、その傷が洩れの原因になってしまいます。
そしてもう一つの弱点は、流体温度が高温(100~200度以上)になると、摺動部のリングの強度が落ちてしまう点です。シール部に樹脂を使用している為、仕方がないことですが、高温になるとその樹脂が圧力に耐えられなくなってしまいます。
その為、流体の温度が高い場合は、摺動部に使用される樹脂材質がその温度で耐えられるかを確認する必要があります。
その確認方法が不安な場合は、バルブメーカにそのバルブの圧力・温度のレーティングを確認してもらってください。
クリーンなガスを通す際の注意事項
ボール弁を使用する場合に、意外と忘れがちですが、ボールに塗布された潤滑用グリスがプロセスに混入する可能性があります。グリス成分がわずかでも、内部流体に溶け込んでしまうことがあるのです。
しかし、グリスは、(メーカーによって違いますが)フッ素系やシリコン系を使うことが多い上に、かなり微量で塗布されている為、特殊な状況で無ければほぼ問題ないと考えてよいでしょう。
グリス成分の混入が問題になるのは、不純物のないクリーンなガスを流す場合が当てはまります。
たとえば、ガスクロマトグラフィー試験機のガス供給ラインや、半導体製造のプロセスガスラインは、グリス成分がわずかでも許容できない場合があるので注意してください。
グリス無しのボール弁をつかう場合
どうしてもグリスを塗布しない禁油仕様でボール弁を手配し、取り付ける際は以下2つの注意点があります。
➀潤滑のグリスが塗布されないので、ハンドル操作が硬くなる。
➁潤滑がない為、摺動部の樹脂リングがハンドル操作によって欠損しやすい。
取り付ける場合は、4,5回程度弁を開け閉めすると➀と➁を確認してみてください。
グリス無しのボール弁の代替は?
上記のように禁油仕様で弁を使用したい場合は、他の形状の弁を検討したほうがいいかもしれません。
その際、弁内に液やガス溜まりができないようにしたい場合は、「ダイヤフラム弁」で代替できる可能性があります。(流体温度が高温でないことが条件です)
まとめ
ボール弁は非常に操作性に優れている為、バルブを選定する設計者が、ボール弁を好む人は多いです。
しかし、場合によっては、ボール弁が向いていない流体や条件もあるので、使用方法や流体仕様を確認してから選定するようにしましょう。