いまさら聞けないエアシリンダの基礎|種類・構造・速度制御について

投稿日:2025年03月24日

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エアシリンダは、圧縮空気を利用して直線運動を行う駆動装置です。産業用機械や自動化装置、ロボットシステムなど、あらゆる製造現場で幅広く活用されています。

電動アクチュエータと比較すると構造がシンプルで高速応答性や耐久性に優れています。特に振動や衝撃が多い環境でも安定して動作させやすい点が特徴です。

本記事では、エアシリンダの基本的な構造や種類、単動および複動エアシリンダの動作原理、さらに速度制御の方法について解説していきます。初心者から中級者まで、エアシリンダを選定・設計・メンテナンスする上で役立つ情報をまとめました。

このコラムを書いた人

機械設計のプロフェッショナル
製造業で10年以上にわたり機械設計に従事し、機械設計技術者試験1級を保有。基本設計から評価、量産までの工程を経験しています。若手技術者の育成や設計リーダーとしての役割も担い、幅広い業務での知見をもとに、実務に役立つ情報を発信することを目指しています。

エアシリンダの種類

エアシリンダは大きく分けて標準形(単動・複動)と特殊形に分類されます。用途や設置スペース、負荷条件に応じて最適なシリンダを選定することが重要です。

標準形エアシリンダ

標準形エアシリンダは、最も一般的に使用されるタイプで、空気圧を使ってピストンを往復させる基本的な構造を持ちます。以下の2種類に大別されます。

単動エアシリンダ

単動エアシリンダは、一方向に空気圧をかけてピストンを押し出し、復帰をスプリングや外部の力に依存する構造が特徴です。構造が非常にシンプルでコストを抑えられるうえ、エアの使用量を最小限にできるため省エネルギーにも優れています。

ただし、往復動の戻り側には空気圧がかからないため、復帰時の速度に制限が生じやすい点には注意が必要です。また、スプリングの弾性力が経年で低下すると、動作不良につながる可能性があります。

このような特性から、小型のピッキング装置やトグルスイッチのオン・オフといった軽負荷の押し込み動作でよく利用されています。

複動エアシリンダ

複動エアシリンダは、シリンダの前後に空気圧をかけることで往復運動をすべて空気圧だけで制御できる仕組みになっています。

スプリングを使わないため行程のどちらにも空気を利用でき、動作速度やストロークを調整しやすい点が大きな魅力です。また、スプリングの劣化に左右されず、高い耐久性と安定性を長期間維持しやすいことも特徴となっています。

ただし、単動タイプに比べると構造が複雑になり、前後それぞれにエア配管を行う必要があるため、設計や組付けには広めのスペースや配慮が求められます。複動タイプは、産業用ロボットなど、高精度かつ高頻度の動作を行う現場でよく利用されています。

特殊形エアシリンダ

標準形以外にも、設置スペースや負荷条件に対応したさまざまな特殊形シリンダが存在します。

ロッドレスエアシリンダ

引用元:SMC株式会社

ロッドレスエアシリンダは、従来のピストンロッドを持たず、シリンダ内部のピストンと外部のスライダをマグネットや機械的リンクで連結する構造を採用しています。

この構造により、同じストローク長でもロッドが外部に突き出ることがなく、装置全体をコンパクトに設置することが可能です。スペースに制約のある自動化ラインや、ワークを長距離搬送したい水平移載装置などで広く利用されています。

ガイド付きエアシリンダ

引用元:SMC株式会社

ガイド付きエアシリンダは、シリンダの動作軸と並行してガイド機構が付属しており、横方向からの荷重にも対応できる設計となっています。

このガイド機構により、ピストンロッドが横荷重を受けても曲がりや摩耗を抑えることができ、高い直進精度を維持します。そのため、工作機械のワーククランプ装置や、搬送装置において精密な位置決めが求められる工程など、正確な動作が必要とされる場面で特に効果を発揮します。

揺動エアシリンダ

引用元:SMC株式会社

揺動エアシリンダは、ピストンの直線運動を回転運動に変換する仕組みを持ち、ラックピニオン式やベーン式などの種類があります。

このシリンダは、エアシリンダのシンプルな制御で回転アクションを実現できるため、バルブ操作や旋回テーブルなどに適しています。

具体的には、自動車の組立ラインでドアや部品の回転・反転を行う装置や、各種バルブの開閉制御などの多様な場面で活用されています。

単動エアシリンダの構造と動作原理

単動エアシリンダは、片側から空気を供給し、スプリングの力でピストンを復帰させる方式です。装置を小型化しやすい一方で、負荷やスプリング特性に大きく左右されるため、用途をしっかり選ぶ必要があります。

単動エアシリンダの構造

シリンダ本体は圧縮空気を内部に封じ込める筒状の容器で、一般的にはアルミニウムやステンレス鋼が使用されています。シリンダ内にはピストンが配置されており、シールによって空気の漏れを防止しています。

ピストンに接続されているのがピストンロッドで、ピストンの動きを外部に伝達します。ピストンロッドは摩擦や錆を抑えるために表面処理が施されており、長期間にわたってスムーズに動作するよう設計されています。

さらに、ピストンを元の位置に戻す役割を果たすスプリングが組み込まれており、負荷やストロークに応じて適切なバネ定数が選定されています。

圧縮空気をシリンダ内部へ導入する入口としてポート(空気供給口)が設けられており、ここから圧縮空気が供給されることでピストンの動作が開始されます。

単動エアシリンダの動作

動作としては、まず圧縮空気が供給されると、ピストンが一方向に押し出され、ピストンロッドが外部へ伸びます。この押し出し動作により、外部の機械部分が駆動します。その後、供給された空気が抜かれると、スプリングの弾性力によってピストンが元の位置に戻る仕組みです。

複動エアシリンダの構造と動作原理

複動エアシリンダは、シリンダの両側(前後)に空気を供給できるため、往復動のどちらも空気圧で制御可能です。戻り速度やストロークを細かく調整しやすい点が大きな魅力です。

複動エアシリンダの構造

複動エアシリンダは、シリンダ本体、ピストンおよびピストンロッド、前後に配置されたポート、そして複数のシール類から構成されています。

シリンダ本体には前後二つのポートが設けられており、これらを通じて空気が供給されます。内部の圧力をしっかりと保持するために、シールが使用されており、空気の漏れを防いで効率的な動作を支えています。

ピストンはシリンダ内を前後に動き、その動きをピストンロッドが外部に伝達します。ピストンロッドには摩擦抵抗を抑えるためにグリースなどの潤滑剤が施されており、長期間にわたってスムーズに動作するよう設計されています。

シリンダの前後にはそれぞれ一つずつポートが配置されており、どちらからも空気の入出が可能な構造となっています。シール類にはピストンシールやロッドシール、エンドカバーシールなどが含まれ、これらが空気の漏れを防ぐ役割を果たしています。

複動エアシリンダの動作

動作は、まず伸長動作が行われます。ロッド側の前側ポートから空気が供給されると、後側の空気が排出され、ピストンが前方に押し出されます。これによりピストンロッドが外部へ伸び、装置が駆動されます。

次に縮小動作では、後側のポートから空気が供給され、前側の空気が排出されることでピストンが後方に戻ります。ピストンロッドも引き込まれ、元の位置に復帰します。

このように、複動エアシリンダは前後両方向からの空気圧制御により、精密かつ安定した往復運動を実現します。

メーターインとメータアウトによる速度制御の違い

エアシリンダの動作速度を調整する際には、主に「メーターイン方式」と「メータアウト方式」という2つの手法が用いられます。どちらの方式を採用するかは、負荷変動や精密度、初動の安定性などを考慮して選ぶ必要があります。

項目 メーターイン方式 メータアウト方式
方式 シリンダに供給される空気の流量をスロットルバルブで制限し、速度をコントロールする シリンダから排出される空気の流量をスロットルバルブで制限し、速度をコントロールする
メリット ・比較的簡易な場面に適している。
・押し出し側の速度を安定させやすい。
・負荷変動に対して安定した速度を保ちやすい。
・細かい速度制御が必要な場合に向いている。
デメリット ・負荷が大きく変動する環境では、速度が不安定になる場合がある。
・高速応答が必要な場面では、流量制御が難しい。
・動き始めで急激な加圧がかかるため、シリンダへの衝撃やブレが生じやすい。
・バルブの調整がシビアになる場合もある。

メーターインの仕組み

メーターイン方式では、シリンダに供給される空気の流量をスロットルバルブ(スピコン)で制限することで速度をコントロールします。この方式は、軽負荷の動作や短いストロークでの押し込み動作など、比較的シンプルな場面に適しています。

また、押し出し側の速度を安定させやすいという利点があります。しかし、負荷が大きく変動する場合、速度が不安定になる可能性があり制御が難しくなる場合があります(スティックスリップ現象)。

メータアウトの仕組み

一方、メータアウト方式では、シリンダから排出される空気の流量をスロットルバルブ(スピコン)で制限して速度を調整します。この方式は、負荷が変動しても安定した速度を維持しやすく、細かい速度制御が必要な場合に特に有効です。

例えば、精密な位置決めが求められる自動化装置や高精度な機械加工現場などでの使用に適しています。しかし、初動時には急激な加圧がかかるため、シリンダに衝撃やブレが生じやすく、バルブの調整がやや難しいというデメリットもあります。

まとめ

エアシリンダの基礎を理解することで、装置設計や既存システムの改善に役立てることができます。高速・高頻度の動作が求められる現場から、コンパクトに動作させたい小型装置まで、活用シーンに応じた適切な機種選定と速度制御を行いましょう。

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