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図面を書くだけが設計ではない!開発ステップで設計者が行うべき作業項目

投稿日:2024年12月06日

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設計の仕事は図面を作るのが仕事と思われがちですが、図面を描くのは設計作業のごく一部の仕事です。図面は後工程に情報を伝えるための手段にすぎません。

図面を作成する以外に多くの作業があり、図面作成以外の作業が製品の良し悪しを左右するほど重要なものとなっています。

ここでは、設計者が設計時に考慮すべき項目について解説します。

製品開発のステップ

製品開発のステップは一般的に表1に示したようなステップで行われます。表1からもわかるようにモデル、図面作成以外にも多くの項目があることが分かります。

表1製品開発のステップ例

ステップ 担当部署 実施項目
製品企画 設計 新商品のセールスポイントと売価の立案
構想モデル作成 設計 性能、耐久性、生産性、原価の机上評価
詳細モデル、図面作成 設計 モデル、部品図作成
試作 設計、製造 部品作成、組み立て
性能、耐久評価 設計、実験 評価計画、評価の実施
原価 設計、購買 原価確認
量産モデル、図面作成 設計、製造、品質保証 量産出荷
市場評価調査 営業 新商品市場調査

目標値の設定

製品設計では、目標値の設定が重要になります。目標値がなければ何も決められず製品はいつまでたってもできあがりません。目標値があって初めて製品はできあがります。

目標値は製品企画書に基づいて4つの目標を決めます。

  1. 性能
  2. 耐久性
  3. 原価
  4. 開発日程

開発日程は、関連部署が多くなるので事前に合意をとります。関連部署が多くなれば多くなるほど一度決めた日程を変更するのは損失が伴いますので慎重に行います。

日程がずれたために他部署、協力会社の仕事に穴があく、製品によっては製品を待っているお客さんの日程にも影響があるかもしれません。そうならないように決めたことは、守ることが大前提です。

開発ステップを書きましたが、会議体としてのステップはありますがこのステップを進めるためには、常に他部署との連携を図りながらフィードバックを繰り返して遅れがないようにします。

性能、耐久性、品質確認の検討

製品設計するには、性能や耐久性を満足するかの机上検討が必要です。その為に品質工学の手法を使ったり、3D-CADで解析したり精度と開発速度が上がってきています。

「試作を作ってみないとわからない」という博打のようなことはスケジュールの決まった製品設計では避ける必要があります。

どんないいアイデアでもそれが正しいかどうかを確認する手段がなければ絵に描いた餅です。設計する場合には、設計が正しいかどうかを検証する方法も検討しておきます。

品質確認は設計時に考えたことが正しかったどうかの確認作業です。よくわからないから試験するという考え方はありません。

机上検討であれば、コストも時間も最小で済みます。試作機を作ってからの再検討は時間とコストは膨大です。さらに、市場にクレームとなったら対策方法も限られてきますし、損失もさらに大きくなります。

机上検討の良し悪しが製品開発の良し悪しを大きく左右します。

原価検討

品質を満足したものを設計したから、購買部門や製造部門が原価目標に合うように購入、または生産するという考え方もあります。また、競合メーカと同じ図面を描いたのだから同じ原価でできるはずだと考えることもあるでしょう。

しかし、実際には自社や協力工場でつくることを考慮しなければ製品にすることはできません。各メーカには得意な作り方や設備をもっているため同じものとはなりません。

自社に合った設計に変更しなければ競合他社と同じ品質、価格で作ることはできないでしょう。もしできるなら、人件費の高い国は安い国にとって代わられてしまいます。

新しい部品、新しい製造方法の検討

設計するからには、新機能を盛り込むことは必要なことです。その為には新しい部品の採用、新しいメーカの採用が必要になります。

メーカ探しや新しい部品を探すのは購買の仕事と人任せでは良い部品は手にはいりません。購買と協力しながら新しい部品や新しい購買先を見つけます。

一般的には、外注するより内製したほうが外注間接費を負担しなくて済むので原価は下がり品質管理がシンプルになります。しかし、製造部門にとって新製品は厄介なものです。

今までと同じものを作っていけば多少現状困ったことがあったとしても、トラブルも起きにくく、安定して生産できます。

しかし、同じものを作り続けては新機能を盛り込んだり原価を下げたりすることは難しくなります。目標達成のためには製造部門の要望を盛り込んだり製造方法を提案したりしなくてはなりません。

まとめ

  1. 図面を作る作業の価値は相対的に低下している
  2. 目標値がないと製品はできない
  3. 机上検討が製品開発を大きく左右する
  4. 原価や部品選定、メーカ選定は購買と協力して行う。場合によっては製造に協力してもらう
  5. 製造部の協力を得て新しい作り方や生産性向上を実施する

上記のようなことが主な作業項目ですが、ISO、TSなどの認証制度に適合するための書類づくりも必要な作業となります。

このように設計は大変なのですが、作りたいものを作れるのは設計部署以外になく、設計がうらやましいという部署の人は結構います。購買、製造、品質保証は設計が終わったあと地味にかかわり続ける仕事で注目を浴びることはありません。

設計者は完成してしまえば賞賛されることが多い職場なので幸せな職場です。設計の仕事は図面を描くことではないことがご理解いただけたと思います。

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