投稿日:2024年11月11日
「モノづくりに興味がある」
「3DCADを使って、自分がイメージしたものをカタチにしたい」
モノづくりの要である金型業界に興味がある人は、このように希望を抱いている人もいるでしょう。
「金型設計の仕事って、何か資格を取っておくと有利かな…」
中にはこのように考えている人もいるかもしれません。
私自身、未経験で金型業界に飛び込み、設計に従事して25年。長く経験してきたことを踏まえて思うことは結論、資格は不要です。
本記事では、3Dの金型設計においてCADの資格は不要である理由と、資格よりも大切なことについて解説していきます。
「これから3Dの金型設計者になりたい」と考えている人は参考にして頂けたら幸いです。
CADの資格とは?
そもそもCADの資格はどのようなものがあるのでしょうか。特に、金型設計者に関係する資格試験の代表的なものとして、
- 2次元CAD利用技術者試験
- 3次元CAD利用技術者試験
の2つが挙げられます。
2次元CAD利用技術者試験の対象となる人は2Dの金型設計者です。つまり、メインは2次元で加工する人のために図面を描く人のことを指します。
2Dを担当する人は、金型によっては、数十以上の様々な金型部品の図面を描くこともあり、骨の折れる仕事です。
取引先独自の決めごとがあれば、その決めごとをしっかりと設計に反映させる必要があります。また、一般的な設計標準であるJIS(日本産業規格)に則って設計する必要もあるため、幅広い知識が求められます。
汎用的なスキルを証明する意味で、2次元CAD利用技術者試験に合格するための勉強は一定の価値はあるでしょう。
3次元CAD利用技術者試験の内容と金型設計との関連性
一方で、3次元CAD利用技術者試験で問われる内容はどのようなことでしょうか?
また、試験の内容と実務にはどのくらい関連があるのでしょうか?
以下に、最初に受けられる2級の試験範囲と内容を公式サイトより一部抜粋します。
3次元CAD利用技術者試験2級の試験分野と内容
試験分野 内容 3次元CADの概念 3次元CADとは、3次元CADの活用、3次元CADの歴史、3次元モデルのデータ構造、3次元モデルの構成、表示技術 3次元CADの機能と実用的モデリング手法 3次元CADによる設計、モデリング機能、実用化の事例、複合化したコマンド、検査・計測・解析の方法、モデリング手法、アセンブリモデリング、実用上の注意点 3次元CADデータの管理と周辺知識 プロジェクト管理、PDM、コンピュータシステムの構成、CADとネットワーク知識、情報セキュリティ 3次元CADデータの活用 CAE、CAM、CAT、CG、3Dプリンター、DMU、コラボレーション、3次元CADデータの応用例
具体的にどのような問題が出ているかを確認すると、実務に直結する知識や技能を問う問題はいくつかあります。
ただ実際のところ、「この内容は知識として知っておくと、役立つときがあるかもしれない」程度のレベルの問題も含まれています。私自身、初めて聞く用語も問題として取り上げられていました。
ここで、試験勉強を通して得られる知識・技能をまとめると以下の3点です。
- 基礎的な3次元モデリング技術の習得
- 3DCADを扱う上で出てくる用語と、その意味の理解
- 2D図面を読み解き、3Dにするための想像力
以上のように、3次元CAD利用技術者試験は、金型設計に直接関係する知識を問われる試験ではありません。ただ、実務において、2D図面から3Dにする仕事は往々にしてあります。
このような問題は、想像力を養う意味で良い頭脳トレーニングになると感じました。
それでも、未経験から金型設計者としてやっていくことを見据えた上で、「時間をかけて勉強する価値はあるか」という点で考えるとやはり、不要であるというのが結論です。
金型設計者にとって大切なのは現場の声とOJT(On the Job Training)
ここで改めて、この業界で25年やってきた経験をもとにお伝えしたいことは、
「資格の勉強よりも、実務を通して勉強しよう」
ということです。
実務を通して学ぶとはどのようなことでしょうか?
それは、現場や先方からの生の声を聴き、それをいかにしてCAD上で形にしていくかを考えることです。
これが一番の勉強です。また、OJT(On the Job Training)が大切で、ノウハウをまずは先輩方から素直に教わることが重要です。
資格をとるための勉強は極論、「道具の使い方」を学べるだけに過ぎません。むしろ、道具(CAD)の使い方は仕事をしなければ覚えられません。
これから設計者になろうとしている人は「自分には何もないから」という考えは捨てて下さい。そして、やる気を持ち、思い切って飛び込んでみてください。
先にも述べましたが、実際私自身もその一人です。より良くしようと熱意をもって仕事をすれば、必ずいい設計者になれます。
まとめ
本記事では、資格の概要と、特に、3Dの設計者には資格は不要であることについて述べてきました。
資格を取れば自分に箔が付き、自信をつけることもできるでしょう。設計者としての準備運動にもなるかと思います。しかし、即実務に活かせるかといえば難しいのが現実です。設計者として成長するためには、若いうちから早く実務を経験することが近道です。
以上、これから3Dの金型設計者として仕事をしていきたいと考えている人へ参考になれば幸いです。
ここまでお読み頂きありがとうございました。