投稿日:2022年10月24日
金属の材料の記号をいくつ思いつくでしょうか?普段よく使っている材料は自然と覚えていくものですが、たまにしか扱わない材料は、その金属材料の記号を見ても「何の材料だろうか?」と思うのではないでしょうか?
そんななかなか覚えずらい印象の金属記号ですが、きちんとルールに基づいた金属記号で表されています。
業界によって使用される金属材料が違うかと思いますが、ルールを知っていると簡単に思い出せるようになるかと思います。
金属記号のルール
JISでは、金属材料を鉄鋼と非鉄金属の2つに分けて規格しています。
非鉄金属は様々な金属があるのでなかなか覚え辛いのですが、よく使用されているアルミと銅を指していると思ってください。(他にもたくさんあるので、少し強引ですが)
その為、JISで規定されている金属材料は、大まかに分類すると「鉄鋼」と「非鉄金属のアルミ・アルミ合金」と「非鉄金属の銅・銅合金」の3つのルールが存在していると考えれば分かりやすいかと思います。
鉄鋼はSS400やSUS304と言った一般的によく使う鉄鋼類が該当しています。
鉄鋼の金属記号ルール
では早速、鉄鋼の金属記号のルールについて説明を行います。
鉄鋼類の記号は3つの部分で構成されています。ただし、それぞれ1文字とは限りませんので注意が必要です。さらに同じ記号で2つの意味がある場合もあるのでややこしく感じるかもしれませんが、何の頭文字になっているかを知っていれば理解が深まります。
(1)最初の文字(表1)・・・材質を表します。(ローマ字読みの頭文字、又は化学元素記号)
(2)2番目の文字(表2)・・・規格、又は製品名称(ローマ字読みや英語)の頭文字を表す。
(3)3番目の文字・・・決められた数値や最低引張強さや耐力を表します。
(4)4番目の文字(表3)・・・ハイフン「-」を付けて形状製造方法を示す記号を示します。
ちなみに、最初の文字は鉄鋼材や非鉄金属も同じ記号を用います。よく見ると日本語のローマ字読みの頭文字から記号が決まっているものもありますね。
例えば、最もよく使用する鋼材SS400は以下の様なルールで記号が決まっています。
最初の文字:S(鋼 Steel)
2番目文字:S(一般構造用圧延材 Structual)
3番目文字:400(最小引張強さMPaの値)
又、一般的なステンレスで使用するステンレス鋼SUS304も同じルールで決められています。
最初の文字:S(鋼 Steel)
2番目文字:US(ステンレス Use Stainless)
3番目文字:304(オーステナイト系300番の連番)
その他を例にしてみます。
圧延鋼板のSPHCは、
最初の文字:S(鋼 Steel)
2番目文字:PH(熱間圧延鋼板 Hot-rolled steel Paltes)
3番目文字:C(一般用途※使用目的によってC~Fのどれかとなります)
配管用炭素鋼鋼管STPGに関しては、
最初の文字:S(鋼 Steel)
2番目文字:TP(配管用管 Tube Pipe)
3番目文字:G(圧力 General)
3番目の文字は他にも(T:高温配管 Temperature)(Y:アーク溶接 Tosetsu)(A:合金 Alloy)があり、高圧配管用鋼管のSTSは、2番目の文字がT(配管 Tube)、3文字目がS(特殊高圧 Special Pressure)となっています。
ここまで説明すると、3番目に当たる文字は数字だったり、アルファベットで有ったりとその材料によって様々なので、覚えるのは無理と感じるかと思います。
3番目や4番目の文字は、必要に応じて調べれば良いのです。こんな風に決まっているんだなと一度理解しておけば、すべて覚える必要は無いと思います。
しかし、機械構造用炭素鋼鋼材であるS10C,S25C,S45Cなどの「S ** C」は、このルールの例外となっていますので注意してください。
この機械構造用炭素鋼鋼材は、S(Steel)と炭素割合(数値)とC(Carbon)で表します。
例えば、S45Cの45は、炭素が含まれている割合が概ね0.45%含まれていることを示しています。
表1.材料名の記号(組み合わせで使用する1番目の記号)
※非鉄金属もこの記号を使用します
記号 | 名称 | 備考 | 記号 | 名称 | 備考 |
A | アルミニウム | Aluminium | PB | りん青銅 | Phosphor Bronze |
Mcr | 金属クロム | Metalic Cr | S | 鋼 | Steel |
Bs | 黄銅 | Brass | SCM | クロムモリブデン鋼 | Chromium Molybdenum |
C | 炭素 | Carbon | |||
C | 銅 | Copper | SCr | クロム鋼 | Chromium |
C | クロム | Chromium | SMn | マンガン鋼 | Manganese |
DCu | りん脱酸銅 | Deoxidized Copper | SNC | ニッケルクロム鋼 | Nickel Chromium |
F | 鉄 | Ferrum | Si | ケイ素 | Silicon |
HBs | 高力黄銅 | High Strength Brass | SzB | シルジン青銅 | Silzin Bronze |
M | モリブデン | Molybdenum | T | チタン | Titanium |
M | マグネシウム | Magnesium | Ta | タンタル | Tantal |
Mn | マンガン | Manganese | W | ホワイトメタル | White Metal |
Ni | ニッケル | Nickel | W | タングステン | Wolfram |
P | りん | Phosphorus | Zn | 亜鉛 | Zinc |
Pb | 鉛 | Plumbun |
表2.製品名の記号(組み合わせで使用する2番目の記号)
記号 | 名称 | 備考 | 記号 | 名称 | 備考 |
B | 棒やボイラー用 | Bar,Boiler | P | 薄板 | Plate |
BC | チェーン用丸鋼 | Bar Chain | PC | 冷間圧延鋼板 | Cold-rolled steel Paltes |
C | 鋳造品 | Casting | PH | 熱間圧延鋼板 | Hot-rolled steel Paltes |
C | 冷間加工品 | Cold work | PT | ブリキ板 | Tinplate |
CMB | 黒心可鍛鋳鉄品 | Malleable CastingBlack | PV | 圧力容器用鋼板 | Pressure Vessel |
CMW | 白心可鍛鋳鉄品 | Malleable CastingWhite | R | 条 | Ribbon |
CMP | パーライト可鍛鋳鉄品 | Malleable CastingPearlite | S | 一般構造用圧延材 | Structual |
CP | 冷延板 | Cold Plate | SC | 冷間成形鋼 | Structual Cold forming |
CS | 冷延帯 | Cold Strip | SD | 異形棒鋼 | Deformed |
D | 引抜 | Drawing | T | 管 | Tube |
DC | ダイカスト鋳物 | Die Casting | TB | ボイラ熱交換器用管 | Boiler,Heat exchanger |
F | 鍛造品 | Forging | TP | 配管用管 | Tube Pipe |
GP | ガス管 | Gas Pipe | TK | 一般構造用管 | Tube Kozo |
H | 高炭素 | High carbon | TKM | 機械構造用管 | Tube Kozo Machine |
H | 熱間加工品 | Hot work | U | 特殊用途鋼 | Special-Use |
H | 熱入性保証構造品(H鋼) | Hardenbility bands | UM | 快削鋼 | Use Machinability |
HP | 熱延板 | Hot Plate | UP | ばね鋼 | Use Spring |
HS | 熱延帯 | Hot Strip | US | ステンレス | Use Stainless |
K | 工具鋼 | Kogu | UH | 耐熱鋼 | Use Heat-resisting |
KH | 高速度鋼 | Kogu High speed | UJ | 軸受鋼 | Use Journal |
KS | 合金工具鋼 | Kogu Special | V | リベット用圧延材 | Rivet |
KD | 合金工具鋼(ダイス鋼) | Daishu | V | 弁、電子管用 | Valbe |
KT | 合金工具鋼(鍛造型鋼) | Tanzo | W | 線 | Wire |
L | 低炭素 | Low carbon | WO | オイルテンバ―線 | Oiltemper Wire |
M | 中炭素耐候性鋼 | Medium carbonMarine | WR | 線材 | Wire Rod |
N | 従来より高品質 | New |
表3.製造方法を示す記号(組み合わせで使用する4番目の記号)
記号 | 名称 | 備考 | 記号 | 名称 | 備考 |
-R | リムド鋼 | – | -A | アーク用溶接鋼管 | Arc Welding |
-A | アルミキルド鋼 | – | -A-C | 冷間仕上アーク溶接鋼管 | Arc WeldingCold |
-K | キルド鋼 | – | -D9 | 冷間引抜等級IT9 | Drawing |
-S-H | 熱間仕上継目無鋼管 | Seamless Hot | -RCH | 冷間圧造用線材 | Rod by ColdHeading |
-S-C | 冷間仕上継目無鋼管 | Seamless Cold | -WCH | 冷間圧造用線 | Wire by ColdHeading |
-E | 電気抵抗溶接鋼管 | Electric Resistance Welding | -T8 | 切削等級IT8 | Cutting |
-E-H | 熱間仕上電気抵抗溶接鋼管 | Electric Resistance Welding Hot | -G7 | 研削等級IT7 | Grinding |
-E-C | 冷間仕上電気抵抗溶接鋼管 | Electric Resistance Welding Cold | -CSP | ばね用冷間圧延鋼帯 | Cold Strip Spring |
-E-G | 電気抵抗溶接ままの鋼管 | Electric Resistance General | -M | 特殊磨き帯鋼 | Migaki |
-B | 鍛接鋼管 | Butt Welding | |||
-B-C | 冷間仕上鍛接鋼管 | Butt Welding Cold |
非鉄金属の銅・銅合金の金属記号のルール
銅や銅合金の金属のルールは、必ず1文字目が「C」になっている為、その後の2文字目からルールにしたがって決められています。
2文字目:主要添加元素によって決まる数値1~7(表4参照)で表します。
3、4文字目:数値が入ります。
5文字目:形状を表す記号が入ります。(P:板、B:棒、R:条、W:線)
表4.銅・銅合金の主要添加物と2つ目の記号
記号 | 合金成分 / 用途 |
C1*** | 純Cu,高Cu合金 / 導電材、耐食材 |
C2*** | Cu-Zn系 / 装飾具、ネームプレート、絞り加工品、 |
C3*** | Cu-Zn-Pb系 / 時計部品、歯車等の切削材 |
C4*** | Cu-Zn-Sn系 / 熱交換器 耐食材 |
C5*** | Cu-Sn系、Cu-Sn-Pb系 / ばね材、摺動部軸受、打楽器 |
C6*** | Cu-Al系、Cu-Si系/ 耐食材、楽器用 |
C7*** | Cu-Ni系、Cu-Ni-Zn系/ 装飾具、溶接管、高温仕様の電子機器 |
非鉄金属のアルミ・アルミ合金の金属記号のルール
アルミやアルミ合金の金属のルールは、銅と非常に似ています。
必ず1文字目はアルミを表す「A」がついており、その後の2文字目(下表5参照)から以下ルールにしたがって決めてられています。
3、4、5文字目に関しては、銅・銅合金と同じ様に定められています。
表5.アルミ・アルミ合金の主要添加物と2つ目の記号
記号 | 合金成分 / 用途 |
A1*** | 純Al / ブスバー、反射板、照明器具、化学工業タンク |
A2*** | Al-Cu-Mg系 / 航空宇宙機材、熱処理合金 |
A3*** | Al-Mn系 / 建築資材(ドアパネル、カラーアルミ)、電球口金 |
A4*** | Al-Si系 / ピストン材 |
A5*** | Al-Mg系 / 飲料缶、圧力容器、自動車ホイール |
A6*** | Al-Mg-Si系/ ボルト材、スキー |
A7*** | Al-Zn-Mg系/ バット用材、航空宇宙機材 |
A8*** | 上記以外の合金 / 装飾材、包装材等 |
まとめ
記号のルールは、本記事を読めばほぼ理解出来たことになります。
いかがでしょうか?
覚えることが多くて、なかなか覚えきれない、、と思った人がほとんどだと思います。しかし、この普段からこのルールを意識して、金属材料を扱うようにしていれば、自然と頭に入ってくるようになりますので、本記事の内容を何度も見返す様にしましょう。
次第に、図面にある見慣れない材料記号を見たときに、きっとこういう材料だろうと予想することができるので、早めに理解しておくことをおススメしておきます。
あなたが使用している材料記号が、本記事のJISルールに当てはまっているかぜひ確認してみてください。
あなたにおすすめ
- 【材料選定の考え方、加工方法を動画で学ぶ!全9章(300分)】
金属、アルミ、プラスチックとあらゆる材料の種類が理解できる