3次元データの活用が製造現場に与えた変化

投稿日:2025年05月13日

今回から3回にわたって「CAE解析」に関するシリーズをお届けします。

先日のアンケートでも「CAEに関する講座を希望する」との声が多く寄せられ、
また、設計業務でのCAE活用が一般化する一方で、
「何から始めればよいか分からない」「思ったように使いこなせない」
といったお悩みも目立ちました。

そこで本シリーズでは、
3次元データの活用が製造現場や設計プロセスにどのような影響を与えているかを整理し、
CAE解析を含めた今後の活用の方向性について考えるヒントをお届けします。

初心者の方にも分かりやすく、実務とのつながりを意識した内容となっています。

【シリーズ内容】
第1回:3次元データの活用が製造現場に与えた変化
第2回:2D図面は完全になくせるのか? 3Dデータ活用の未来
第3回:現場でのCAE活用の課題とは?+アンケートご協力のお願い

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製造業の現場では、3次元データの活用が急速に進み、従来の「紙図面中心のものづくり」から大きく変化しつつあります。

かつて図面は、設計者にとって不可欠な存在でしたが、データ活用の広がりとともに、その役割や重要性も変化しています。

今回は、3次元データが製造現場にもたらした変化について、設計・製造の観点から整理してみます。

図面が作れない会社はダメな会社なのか?

ひと昔前、「海外では図面を作らずに製品を製造している企業がある」といった言葉を耳にしたことがあるかもしれません。

図面を作れない=技術力が低い、という見方から、揶揄のように語られることもありました。

実際、かつては紙図面が設計者にとってものづくりの基盤であり、図面なしでは成り立たない時代が長く続いていました。

しかし今、製造業の現場では、図面の役割そのものが大きく変化しつつあります。

設計現場では「紙 → 2D CAD → 3D CAD」へと進化

かつて、設計の成果物といえば紙図面が主流でした。
しかし、設計ツールの進化に伴い、

紙図面 → 2D CAD → 3D CAD

という流れで、設計の成果物も「紙」から「データ」へと移行しています。

2DCADは、設計者にとって紙図面のデジタル版としての役割を果たしてきましたが、3DCADの登場により、設計データの価値はさらに高まっています。

データが製造工程に与えた変化

製造現場でも、設計データの活用が進んできました。

・レーザー切断機の登場により、2DCADデータの活用が一般化
・3DCADデータが、機械加工機や3Dプリンタで直接利用される時代に

これにより、データをそのまま製造工程に反映できるようになり、飛躍的な効率向上が実現しました。

さらに、正確な形状情報がそのまま製造現場に伝わることで、紙図面では避けられなかった「解釈の違い」によるミスが削減され、品質の向上にもつながっています。

もはや、製造現場では「紙図面よりデータの方が重要」と言える時代になりました。

検査工程にも広がる3次元データの活用

製造工程だけでなく、検査工程でも3Dデータの活用が広がっています。

・3Dスキャナーの登場により、形状をデータ化し、正確な検査が可能に
・従来のノギスやマイクロメータによる測定から、デジタル検査へと移行
・3Dデータに公差情報を付加する試みが進み、データベース化が進展

これにより、従来は熟練者の経験に頼っていた検査工程が、データを基にした客観的な評価へと変化しています。

熟練者がいなくても、高精度な測定・品質管理が可能になり、さらなる効率化が進んでいます。

製造工程でのデータ活用ツールの低価格化と中小企業への普及

以前は、3DCADや3DCAM、解析ツールは高価で、大企業しか導入できませんでした。
しかし近年、製造工程で使われるデータ活用ツールが低価格化し、中小企業にも広がりつつあります。

・低コストのFEM解析ツールの登場
・使いやすく低コストなCAMツールの登場
・クラウド上でシミュレーションが実行できる環境の整備
・3Dスキャナーの価格低下と操作性向上

これにより、従来は大企業しか実現できなかった高度なデータ活用が、中小企業でも可能になってきました。

しかし、この流れに乗り遅れている企業もあります。

独立系・2次・3次協力工場の課題

大手企業の協力工場では、大手からの要求によりデータ活用が進んでいます。
一方で、独立系や2次・3次協力工場では、情報不足のためツールの導入が遅れ、効率化が進みにくいという課題があります。

大手企業:「データ活用を求められる → ツールを導入」
独立系・中小企業:「情報が届かない → 旧来の方法に依存」

このギャップが生じることで、企業間の競争力にも差が生まれています。

データ活用の進化がものづくりを変える

3DCADデータを中心にした製造プロセスは、今後ますます進化していくでしょう。

・設計データが直接製造や検査に活用される
・データの一貫性が向上し、品質管理が強化される
・熟練者の経験に頼らないものづくりが可能になる

かつて「紙図面が作れない会社はダメだ」と言われた時代から、
今は「データを活用できない会社は生き残れない」時代へと変化しています。

データを活用した効率化が進む中で、企業の競争力を高めるためには、最新のツールを活用し、変化に適応していくことが不可欠です。

まとめ:3Dデータ活用の流れをつかむ

・設計:紙図面→2DCAD→3DCADへと進化
・製造:3Dデータを直接活用し、精度・効率UP
・検査:3Dスキャナーで精密測定が可能に
・データ活用ツールが低価格化し、中小企業にも普及

今後、3Dデータ活用がさらに広がることで、製造業のあり方も変わっていくでしょう。

「3Dデータを活用する力」が、今後のものづくりのカギとなるのは間違いありません!

次回予告:「2D図面は完全になくせるのか? 3Dデータ活用の未来」

3DCADやCAM、3次元スキャナーの普及により、図面の役割が大きく変わってきました。
では、「2D図面は完全になくせるのか?」という問いにはどう答えられるでしょうか?

・紙図面がなくなれば、本当に効率化するのか?
・すべてを3Dデータで運用するには何が必要か?
・中小企業や現場では、何が障壁になっているのか?

次回のメルマガでは、図面の未来と3Dデータ活用の可能性・課題をわかりやすく整理します。
2D図面をなくすべきか?」に悩んでいる方にとって、ヒントになる内容です。

どうぞお楽しみに。