第1回:「なぜ設計の軸が定まらない?」要望を機能に変換できない問題とは

投稿日:2026年05月11日

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いつもMONOWEB通信をご購読いただき、ありがとうございます。

構想設計入門講座(機能設計編)のリリースに先立ち、
今回から全3回で特別メルマガシリーズをお届けします。

構想設計では、
基礎となる知識を身につけることも、
アイデアを生み出すことも大切です。
ただ、それだけでは設計を形にするところまでは進めません。

実際に必要になるのは、
お客さまの要望を整理し、
どのような働きが必要かを考え、
それを仕組みや形へとつなげていく視点です。

本シリーズでは、そうした
機能設計の考え方」をテーマに、
実務で役立つ形でわかりやすくご紹介していきます。

第1回となる今回は、
なぜ設計の方向性が定まりにくいのか
をテーマにお送りします。

設計がブレるのは、技術の問題だけではない

「仕様変更が多く、設計がなかなか固まらない」
「レビューのたびに方向性が変わってしまう」

そんな経験はありませんか?

多くの設計者が見落としがちなのは、
設計がブレる原因は“技術力不足”ではないということです。

本当の原因は、
要望を機能として整理できていないこと」にあります。

顧客の要望をそのまま形にしようとすると、
設計の軸が曖昧になり、
結果としてブレが生じてしまうのです。

よくある場面:「要望をそのまま形にしてしまう」

たとえば、こんなケースがあります。

顧客から
「もっとコンパクトにしてほしい」
という要望がありました。

そこで設計者は、
部品の配置を見直し、サイズを縮小する方向で設計を進めました。

しかしレビューでは、
「操作しづらい」「メンテナンス性が悪い」と指摘され、
結果的に大幅な手戻りが発生しました。

なぜこのようなことが起きたのでしょうか。

それは、「コンパクトにする」という要望の背景にある
本来の目的が整理されていなかったからです。

・設置スペースの制約なのか
・持ち運びやすさなのか
・作業性の向上なのか

この“意図”を機能として整理しないまま設計を進めると、
部分最適な判断の積み重ねになり、
設計全体が破綻してしまいます。

「要望 → 機能 → 構造」で考える

構想設計では、
要望をそのまま形にするのではなく、
一度“機能”に変換することが重要です。

1)要望
 顧客が求めていること

2)機能
 その要望を満たすために必要な働き

3)構造
 機能を実現するための具体的な仕組み

この順番で考えることで、
設計の軸が明確になります。

たとえば「コンパクトにしたい」という要望も、
「限られたスペースに設置できる」
「持ち運びやすい」
といった機能に分解すれば、

複数の設計案を比較・検討することができるようになります。

つまり、機能で考えることで、
選べる設計”になるのです。

機能で考えることで、設計は安定する

機能設計の本質は、
設計の“判断基準”をつくることです。

機能が明確であれば、

・どの案が最適か判断できる
・レビューでの議論が整理される
・設計変更の影響範囲が見える

といった効果が得られます。

逆に、機能が曖昧なまま進めると、
その場その場の判断に左右され、
設計の一貫性が失われてしまいます。

設計がブレるかどうかは、
初期段階で機能をどれだけ明確にできるかにかかっているのです。

ストーリー:中堅設計者・佐藤さんの気づき

30代の設計者・佐藤さんは、
新製品の小型化設計を担当していました。

顧客の要望に応えるため、
とにかくサイズを小さくすることを優先して設計を進めましたが、
レビューでは「使いにくい」「整備性が悪い」と指摘され、
設計は振り出しに戻ってしまいました。

そこで上司から言われたのが、
「その設計、本当に“何を実現したいのか”を考えているか?」という一言でした。

佐藤さんは改めて要望を整理し、
機能として分解してみることにしました。

すると、
「設置スペースに収まること」
「作業時に干渉しないこと」
といった具体的な機能が見えてきました。

その結果、単純にサイズを小さくするのではなく、
レイアウトを工夫することで問題を解決できることに気づき、
設計は一気に前に進みました。

佐藤さんはその経験から、
「設計は形から考えるものではなく、
 機能から組み立てるものなんだ」と実感しました。

“機能で考える設計者”へ

構想設計では、
「どう作るか」よりも前に、
「何を実現するか」を明確にすることが重要です。

要望を機能に変換できる設計者は、
設計の軸を持ち、ブレずに判断できるようになります。

そしてその力こそが、
上流工程で価値を生み出す設計者に求められるものです。

次回は、
「機能をどのように分解し、整理するのか」
その具体的な手法についてご紹介します。

設計を“感覚”だけに頼るのではなく、
“論理”で整理して進める。
その第一歩として、今回の内容を役立てていただければと思います。

ものづくりウェブ事務局