【ものづくりの学び】技術を確実に継ぐために!見える化の重要性

投稿日:2025年06月10日

MONO塾では、ものづくりに携わる皆様に向けて、
新着コラムや設計に役立つ情報を月に数回お届けしています。

今回から3回にわたって「計画的な技術伝承」に関するシリーズをお届けします。

【シリーズ内容】
第1回:技術を確実に継ぐために!見える化の重要性
第2回:技術を見える化!経験や勘を言語化する方法
第3回:何から教えるべき?技術伝承の優先順位の決め方

シリーズを通して、技術の「見える化」と技術の「伝承」に役立つヒントをご紹介します。

ーーーーーーー

ものづくりの現場では、
技術を次の世代に伝えていくことがとても大切です。

長年の経験で身につけた技術は、
企業にとってとても大切な財産です。

しかし、今、その技術が適切に受け継がれている
企業はどれほどあるでしょうか?

昔ながらのやり方では、職人の感覚や経験に頼り、
実際に見て学ぶことが重視されてきました。

ですが、この方法では、
現代の製造業の変化に対応するのが難しくなっています。
新しい人材が成長しなければ、今後の技術力の維持が難しくなります。

本メルマガシリーズでは、
ものづくりに携わるエンジニア・技術者の皆さんに向けて、
計画的な技術伝承」をテーマにお届けします。

今回は、技術伝承の必要性と、
それを阻む課題について掘り下げます。

技術伝承の必要性と直面する課題

技術が次世代に伝わらないと、企業の競争力が低下し、
長期的な事業継続が難しくなります。

特に、製造業では経験が重要な技術が多く、
計画的な技術伝承が求められています。

ここでは、その必要性と直面する課題を見ていきましょう。

1. 少子高齢化がもたらす人材不足

機械設計の分野でも、熟練設計者の高齢化が進む一方で、
若手の採用が難しくなっています。

日本の機械メーカーでは、
平均年齢が50代を超えている職場も多くなっています。

経験豊富な設計者が減ることで、
技術の伝承が難しくなり、
設計の手戻りが増えたり、品質の確保が難しくなることがあります。

2. 伝承すべき技術の不明瞭さ

「どの技術を、どのように伝えればいいのか?」
と悩むことも多いです。

ベテラン技術者の知識やスキルは、多くの場合、言語化されていません。
「なんとなくやっている」「体が覚えている」といった暗黙知のままでは、
次世代へ正確に伝えることができません。

3. 教育の優先度の低さ

日々の業務に追われる中、
技術伝承に時間を割く余裕がないという現場も少なくありません。

特に中小企業では、
限られた人材で日々の生産を回すことが優先され、
体系的な教育が後回しにされがちです。

4. 経験依存と属人化のリスク

設計業務が特定の人に依存していると、
その人がいなくなった途端に
計画に支障をきたす恐れがあります。

その結果、納期が遅れたり、設計の品質が下がる可能性があります。

解決策:計画的な技術伝承の実践

技術伝承を成功させるためには、
具体的な対策を講じることが重要です。

では、どのようにしてこの問題を
解決すればよいのでしょうか?

属人化を防ぎ、技術を次の世代へスムーズに
受け渡すための方法について、以下に紹介します。

1. 暗黙知の形式知化

最初に取り組むべきことは、
経験や感覚に頼った設計ノウハウを言葉や図にして整理することです。

たとえば、

– 強度計算の判断基準や安全率の設定方法を「設計標準書」としてドキュメント化する

– デザインレビュー(DR)で指摘されやすいポイントをチェックリスト化する

– 切削加工、板金加工、樹脂成形など、加工法ごとに重要視すべき寸法特性や材料特性を整理する

といった形で「見える化」を行うことで、
ベテラン設計者の経験を体系的に共有できるようになります。

2. 教育計画の立案と継続的な支援

技術を伝えることは、一度きりの研修で終わるものではなく、
しっかり計画を立て、長く続けられる仕組みを作ることが大切です。

– OJTを実施し、実務を通じた学習環境を整える

– メンター制度を導入し、経験豊富な技術者が若手をサポートする

– eラーニングや動画教材を活用し、繰り返し学習できる仕組みを作る

技術伝承を進めるには、まず現状を整理し、
どの技術が重要で、どのように伝えるべきかを明確にすることが重要です。

暗黙知を見える化し、継続的な教育体制を整えることで、
技術の属人化を防ぎ、企業全体の競争力向上につなげることができます。

少しずつでも取り組みを進めることで、
次世代へのスムーズな技術継承が可能になります。

次回の予告

今回は、技術伝承の必要性とその課題、
そして基本的な解決策について解説しました。

次回は、「経験や勘を言語化する方法」をテーマに、
より具体的な手法を解説します。

技術をどのように言語化し、誰でも再現できる形にするのか?
実践的な手法を詳しくご紹介しますので、お楽しみに。

ものづくりウェブ事務局