投稿日:2022年02月07日
「配管図を作成したいが、どのようなことに気を付けて書けばいいのか
「施工業者に伝えるための配管図の作り方が分からない」
「配管図を業者から渡されたけど、記号がよくわからない」
という人のために、配管図がどのように製作されているかについて解説していきます。
普段から配管図になじみのない人からすると、
「配管図は工事業者がさっと作って、その図面通りに施工するためのものなんですよね」
と考えるのではないかと思います。
しかし、危険な流体や高温高圧の流体を配管に通す場合、施工業者に丸投げすることはできません。
高温に対する熱膨張や圧力に対する強度の確認を行い、流体の腐食に対応する配管材質や管内の圧力損失を想定した配管サイズの選定が必要となります。
それらを考慮した配管図を配管設計者が製作するのです。
配管設計に未だ慣れないうちは、配管図を作る時に、施工業者にどのように伝えるか悩む人は多くいるはずです。
その為に、配管図とはこういうものだということを本記事で紹介します。
配管図の記号はオリジナルが多くあるのでややこしい
まず配管図で用いる記号は、全国統一のルールとしてJIS B 0011で決まっています。しかし、配管図を作製する会社によってその記号はバラバラであることを知っておいてください。
その為、配管図の凡例(レジェンドと呼ぶことが一般的)をあらかじめ独自に決めている会社がほとんどです。
といっても、ある程度の共通事項はありますので、その基本が理解できていれば、難なく配管図の読み書きが出来るようになります。
記載パターン紹介
例:アイソメ図と平面図の表示の違い(同じ配管を表現しています)
配管図にはアイソメ図と平面図(場合によっては立面図)があります。
その違いは見て分かるようにアイソメ図は水平方向を30°傾斜させて3次元的に配管を記載し、平面図は上から見下げた場合の配管を記載しています。
それぞれの特徴について説明します。
- アイソメ図:配管製作用に使用される図面である為、配管接続や配管の形状が分かりやすい。但し図面の縮尺は自由
- 平面図:主に配置検討に使用される図面である為、縮尺を併せて記載する
次に細かい配管図の記載パターンについて説明します。
①配管のラインナンバー記入は、配管図の他にフロー図などと対照が取れる様に番号を付ける
大抵の場合は「配管ラインナンバー」「配管サイズ」「配管材等のスペック」の3つから構成されたものを記載することになります。
(例)LINENo.***/SIZE ***A/SPEC***
通常は配管に沿わせて記載するのが一般的ですが、注釈線で配管を指して記載する場合もあります。又、ラインナンバーに流体名を表す記号を入れておくと、管内の流体名を配管図で確認できるようになるので大変便利です。
②寸法の記入は、配管の直管長さを記入する
配管図の寸法はストレート長さを記入します。主要な部分については正確な値を記入することが好ましいですが、配管製作では公差は10mm程度は平気でずれます。そのため、重要な寸法はみだりに分割して記載しないように注意が必要です。
又、配管の垂直方向の長さに関しては、基準点からの高さを表示することで割愛することができます。
③配管を表す線を1本線とするか2本線とするかについて
通常は1本線の実線で描く場合が多いと思います。2本線の実線で書く場合としては、配管径が大きく配管の干渉の恐れがある場合や複雑なルートを通す必要で視覚的に2本線にした方が図面解読しやすい場合などが挙げられます。
その為、2本線で書く場合は配管の外径寸法に合わせて書く必要があります。
④配管の接続に関する表示のルール
フランジ取合の場合はフランジであることを示す線を入れます。ねじ込みにて接続する場合は、一般的に注釈線でねじ込みサイズを記載することになります。
その他溶接にて接続する箇所は、突合せ溶接(配管を突合せ状態で溶接する場合)、隅肉溶接(配管を差し込んで溶接する場合)に分けて表現することが多いです。
その為、多くの場合はJISの溶接記号は用いずに「〇、×、ー」で溶接法を簡易表現するのが一般的です。
例:配管の接続表示
⑤傾斜している配管の表現法
傾斜している配管の多くは、流体が滞留せずに流れる様にする為に、勾配をつける場合がほとんどです。
表記法としては、「傾斜している配管の2点の高さを記載して傾斜を指定する場合」と「傾斜率(例⊿1/100)」を記載して指示する場合があります。
よく使われる記号の説明
JIS B 0011に記載がされている記号を用いるのが原則ですが、会社によって多少は異なるものと考えてください。その留意点についていくつか紹介します。
➀弁や計器に関して
バルブは一般的に三角2つの記号であらわすのが一般的です。
その他計器などの場合は、ある程度シンプルな形状に直して表記します。弁の種類(玉形弁、ボール弁、ゲート弁、ニードル弁等)の使い分けはバルブ記号に多少の違いをつけることで表現するのが一般的です。
配管図には、弁の接続フランジの面間や操作ハンドルのサイズ、取付方向や取付法(フランジ接続なのか、ソケット接続なのか等)を記載します。手動弁の形状はJISで規格されている為、面間やハンドルサイズは書かない場合もあります。
弁の記号に関して
又、計器の駆動シリンダーの干渉も考慮した配置としましょう。
流量計によっては、取付位置の前後に配管の直管長(ストレート部の長さ)を十分とる必要がある場合もあるので注意が必要です。
参考までに以下の表に記載します。
表内に配管内径Dの何倍の長さのストレート管が必要かを示しています。
直管長さ(上流側) | 直管長さ(下流側) | |
差圧式流量計 | 10×D | 5×D |
渦流量計 | 10×D | 5×D |
電磁式流量計 | 5×D | 2×D |
※D:使用する流量計を取り付ける配管の内径
➁配管材として使用する部材の名称について
配管サイズを変更するレデューサは「ER:偏芯レデューサ」と「CR:同芯レデューサ」を記載する必要があります。
これは水平配管の場合、この2種のレデューサによって液溜まりやガス溜まりを防止する目的で使い分けているからです。
レデューサの表記に関して
設計者はシンボルインデックスを作る
配管設計者は、より効率的に配管図を作製するために、あらかじめシンボルインデックス(レジェンドリスト)を作っておくことを強く勧めます。
シンボルインデックスとは、配管図で用いる記号一式をCAD図であらかじめ作製しておき、必要に応じてその記号をコピー&ペーストすることで高速に配管図を作製することができます。
又、設計チーム内でシンボルインデックスを共有することで、配管図での表現を統一することもできます。
このシンボルインデックスの内容を充実させておくと配管図をサッと作製することが出来る為、非常に便利です。
まだ配管図を見たことがない人は、なかなか見慣れない図面に見えるかもしれません。
しかし、配管設計の手抜きは工事業者の余計な手間を増やす原因になり、そのたびに工事費用が加算されるのはもったいないですね。
もしこれから配管図を書く予定の人であれば、慌てずに本記事で記載したポイントに気を付けながら作製し練習をしてみてください。