潤滑油を選定して使用する際の注意事項

投稿日:2022年05月13日

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新しい装置を導入した時に、これまで使っていた潤滑油とは違う銘柄を、装置メーカーから推奨されて困った経験はありますか?

「新しく装置を購入するたびに、潤滑油の種類が増えて、置く場所もないし、在庫も増えるばかりでもう管理できない!」

装置メーカーの推奨銘柄を、言われるがままに購入していると、いずれ倉庫に保管しているオイル缶の種類が増えて、備品管理が困難になってしまいます。さらに予備品として購入する費用も多くかかってしまいます。

その為、賢い製造現場では、ある程度汎用的に使える油種に限定させて、在庫を最小限にしています。

時には、装置メーカー推奨のオイルではなく、ユーザー側で判断して、汎用的に使っている油種を使う場合もあるのです。

もしメーカー推奨品が自社で抱えている油種と違う銘柄であった場合どうしますか?

この記事では、メーカー推奨の油種を自社の所有している油種に変更できるかの判断を、どのようにすべきかについて説明します。

当然、メーカ推奨品を使用しないことになるため、誤った油種選定をすると、装置寿命を減らすだけでなく、焼き付きによる故障の原因になるため細心の注意が必要であることを理解してください。

潤滑油オイルには何が入っているのか?

そもそも潤滑油には、どのような添加物が含まれているかを知っておく必要があります。

潤滑油には、以下の表の添加剤を調合して目的の機能を備えた潤滑油を作っているのです。具体的な成分については、多くの物性名がでてきますが、特に覚えておく必要はありません。

表.潤滑オイルに含まれている添加剤の種類

添加剤 目的
酸化防止剤 潤滑油が高温になる際に、空気中の酸素と反応してスラッジ(劣化した固形物)を生成しない様に抑制する。
洗浄分散剤 潤滑油は使用していると劣化が進みますが、劣化したスラッジ等が沈殿したり、集合しない様に分散させる。
耐荷重添加剤

荷重がかかる面に油膜を作り出す為の添加剤

以下3つの作用を担う添加剤が存在する。

➀油性向上剤(ギヤ油、金属加工油等)

➁摩擦防止剤(作動油、エンジンオイル)

③極圧添加剤(圧縮機用ギヤ油、自動車用ギヤ油)

粘度指数向上剤 粘度の温度変化を抑制する。エンジンオイル、変速機オイルや作動油に使用される。
流動点降下剤 低温使用時の流動点(凝固する手前の状態)温度を下げる。
さび止め剤 油膜を安定させることで、金属面が空気に触れず、さび付かないようにする。
乳化剤 水溶性潤滑油に使用される。これがないと油と水分が分離してしまう。切削研磨油等に使用する。
防腐剤 乳化剤とセットで添加されていることが多く、水溶性オイル内でカビ等の発生を押さえる必要がある。

潤滑油オイルの油種変更はどのように判断すべきか

それでは、潤滑油オイルが適用できるかどうかを判断する方法について説明します。
まず、オイル適用可能かの判断は以下の4つで判断をします。

  1. オイル種:使用目的「ギヤオイル」「エンジンオイル」「タービンオイル」等
  2. 使用温度:使用温度範囲(使用するオイルの温度)
  3. オイル適性粘度:潤滑を維持できる粘度
  4. 接触部の周速:安定した油膜を形成し、泡立ちを防止する

この4つがマッチしていない潤滑油は使用してはいけません。

もし装置メーカから潤滑油が推奨されている場合は、その推奨銘柄の「オイル種」「使用温度」「粘度」「周速」を確認してください。

上記すべての条件が合致している潤滑油があれば、代用が可能だと判断できそうです。

潤滑油には相性がある

装置をメーカから購入した際に、すでに潤滑油が機器内に入っていることがよくあるのですが、違う銘柄で似た性能の潤滑油をつぎ足しても、問題ないでしょうか。

答えはやめておくべきです。先ほど述べたように、潤滑油には様々な添加剤を混ぜている為、その性能が混ざることによって相殺されてしまうことがあるからです。

その為、必ず古い潤滑油を全量抜き取ってから、新しい潤滑油を注油するようにしてください。

オイルを混ぜた場合の相性の良し悪しについては、添加剤の性能の詳細が分かっていても判断が難しいので、違う銘柄の潤滑油の混合は極力控えた方がよいです。

油種変更後の潤滑油使用上の注意

選定した油種に変更した後で、必ずやっておかなければいけないことがあります。

選定した潤滑油で本当に問題がなかったのかを確認しておく必要があるのです。

問題がある場合は、オイルの温度が想定以上に高くなったり、金属接触が起こり摩耗片が多く発生することになります。

その確認法について、以下の表にまとめておきますので参考にしてください。

表.選定したオイルで問題ないか確認する方法(例)

確認項目 確認事項 想定される異常
オイルの温度 オイル温度が上昇することで、粘度が低下し、油膜が保てなくなることで金属接触が起きていないかを確認する。

・金属接触摩耗や焼き付きが起きる。

・ベアリング寿命の低下。

・オイルの劣化が早まる。

オイルの液面レベルが高くないか オイルが多すぎると流体内の摩擦熱が発生し、オイル温度が高くなる。 ・温度が高くなり、オイルの劣化がすすみやすくなる。
オイルの鉄粉濃度 定期的にオイルをサンプリングし、オイル内に含まれる鉄粉を測定。 ・金属接触摩耗が発生している。
オイルの色 白濁:空気を巻き混んでしまっている為、周速が適合していない。 茶褐色:オイルが酸化劣化している。 ・運転してすぐに色が変色する場合は、周速が想定より早くなっている可能性がある。

もし何か異常がみられる場合は、装置を停止してベアリングやシリンダー、ギア部の摺動部を点検し、金属摩耗が起きていないか点検を行うようにしてください。

まとめ

潤滑油は様々な銘柄があり、どれが最適化が判断しづらい為、どうしてもメーカが指定した銘柄を使用した方が無難だと考える人は多いと思います。

それに、潤滑油の在庫が問題にならないのであれば、メーカが保証する潤滑油を当然使うべきです。

しかし、機器の台数が多い工場では、在庫の問題から潤滑油の統一をしたいという課題が発生するかと思います。

なかなか潤滑油を変更しずらいという場合は、機器が新しいうちはメーカ指定の潤滑油を使用して、使い慣れた装置から汎用品に入れ替えていくのがよいのかもしれません。

様々な銘柄の油種の在庫を抱えている職場は、ぜひ油種統一の検討をしてみてはいかがでしょうか?

初めのうちは油種メーカと相談しながら、検討してください。

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