「ボルトとナットだけで固定しても良さそうなのに、なぜワッシャーを挟む必要があるんだろうか？」

若手技術者は誰しもが思ったことがあるのではないでしょうか？

ただ単純に部品を固定するだけなら、ワッシャーは不要でいいかもしれません。しかし、機械設計における信頼性を考えると、ワッシャーの役割は無視できないのです。

分解整備やメンテナンスを普段から行っている技術者にとっては、「常識だろ！」と言われてしまうかもしれませんが、この記事を読んで、ワッシャーがどんな役割を果たしているのかを再確認してもらえればと思います。

ワッシャーの種類

まずワッシャーとは、ボルトとナットで母材を締結する際に、その母材との間に組み込む円状の穴の開いた薄い板部品を指します。

このワッシャーは、ボルト＆ナットと並び機械の締結部品として広く使用されており、その形状や素材、機能に応じて様々な種類があります。

平ワッシャーの役割

平ワッシャーは最も基本的なタイプで、一般に流通する座金のほとんどが平座金です。主に以下の目的で使用されます。

接触面の確保

ボルトやナットが材料に直接接触する場合、締結力が一点に集中しやすく、材料の変形や損傷の原因になります。平ワッシャーを介在させることで、荷重を均等に分散し、応力集中による変形を防ぎます。

表面保護

機械部品の接触面は、特に高価な部品や特殊素材の場合、傷つくことが望ましくありません。何度も繰り返し取り外すボルトナットの場合は、取り付けるたびに表面が傷つくことになります。

平ワッシャーを介して、締結することにより、直接ボルトナットが接触しないようにする役割を果たします。

不均一な面の補正

機械加工では完全な平面を作り出すのは難しい場合があります。平ワッシャーを挟むことで、締結面の不均一性を補正し、確実な締結が可能となります。

補足説明

ちなみに、平ワッシャーはJIS B 1256に“平座金”として規格化されており、形状と硬さが規定されています。製品の表示方法は、対応するボルト呼び径×ワッシャー外径×厚みで表示されていますので、購入時はこの３つの数字を確認しましょう。

また、締め付けトルクの管理が必要な箇所に、ワッシャーを使わなかった場合、締め付け方によって、ボルト軸力と締め付けトルクに違いが出てしまうことがありますので、トルク管理が必要な箇所では、ワッシャーを入れ忘れないようにしてください。

余談ですが稀に、管締結時に使用する銅やアルミ製のパッキンをワッシャーと間違えて使用してしまう場合がありますので、ワッシャーの保管場所に他の物を一緒に入れないように注意しましょう（経験談です）。

スプリングワッシャーの役割

スプリングワッシャーは、緩み防止に特化したワッシャーで、以下の役割を持ちます。

緩み抑止効果

ばね弾性力がボルトの軸力に付加的に作用する為、ねじ部の摩擦抵抗が増し、ボルトやナットの緩みを防ぎます。

締結力の維持

締結部が緩むと、部品同士が摩耗したり破損したりするリスクがある装置に対して、弾性力で締結部の応力を一定に保つことで機械寿命を延長させる効果を発揮します。

スプリングワッシャーはJIS B1251に規格化されており、重荷重用途と軽荷重用途に区分されています。

スプリングワッシャーの役割については以下の記事もご覧ください。

それ以外のワッシャーの役割

その他、特定の用途向けに設計されたワッシャーも数多く存在します。その代表例を紹介します。

皿ばねワッシャー

皿型ばね形状のワッシャーを押しつぶすことで緩み防止ができます。スプリングワッシャーと異なり、面全体に均一にばね弾性力が働くのが特徴です。

経験的に振動が比較的少ない環境で、変形や熱による緩みを防止したい場合などに使用されます。

皿ばねワッシャー

引用元:モノタロウ

歯付ワッシャー

菊座金（キクザガネ）と呼ばれ、滑り止め効果を高めるために歯を外側又は内側につけて、緩み止め効果を高めるために用いるワッシャーです。

振動や回転により緩むリスクが高い場所（ポンプなどの回転機内部）に空回りを避けるために用いられることが多いです。

歯付ワッシャー（内歯型）

回転機の主軸などで用いられる歯付ワッシャー

ロックワッシャー

締結部の緩みを防ぐ為に、ワッシャーの接触面に溝等をつけたものを指します。一般的に材質は平ワッシャーに比べて硬度が高いものが使用されており、様々なメーカから特徴のあるワッシャーが流通しています。

生産性を高めるために長期運転を行わないといけない２４時間運転の製造装置では、運転中の増し締めができない為、緩みによるトラブルを防止するためにロックワッシャーが使用されることが多いです。

リブドロックワッシャー

リブドロックワッシャーは、ボサード社が製造しているロックワッシャーです。

ワッシャー外周側が最厚となる台形断面をした皿バネ状のワッシャーで、その両面には溝（リブ）がついています。

その溝がボルト座面と母材に食い込むことで、振動による緩みを防止できるようになっています。

リブドロックワッシャー

引用元:ボサード社HP

ノルトロックワッシャー

ノルトロックワッシャーは、ノルトロック社が開発した２枚1組で使用するワッシャーです。この２枚の間は、カム構造となっており、ボルトが緩もうとすると軸力が働いて、緩む方向に回転できないようになっています。

p>さらに、ボルト座面と母材に接触する面には溝（リブ）がついているので、ボルト座面や母材に食い込むことで、ボルトや母材に接する面でも滑らない構造となっています。

引用元:ノルトロック社HP

ナットやねじにワッシャーが組み込まれているもの

木材や石膏ボードに使用するタッピングねじや小ねじは、ワッシャーをいちいち付けていると非常に手間であり、外れる煩わしさがある為、初めからワッシャーがねじに組み込まれているものを使用することが多いです。

ねじに組み込まれているワッシャーもJIS B 1257で規格化もされています。（小ねじ側はJIS B 1130で規格されています）

座金組込み小ねじ

引用元:通販サイト「ネジクル」

又、ナットと一体になったフランジ付き六角ナット（座金付きナットとも呼ばれる）もよく使用されており、組み立て時の部品点数や組立工数の削減を行えるようになっています。

フランジ付六角ナット

引用元:通販サイト「MISUMI」　フランジ付六角ナット（セレート付）

まとめ

ワッシャーは、一見すると小さく地味な部品ですが、その役割は極めて重要です。平ワッシャーが接触面の保護し、安定した軸力が掛かるようにする一方で、スプリングワッシャーは振動や回転による緩みを防止することに特化しています。

使用する対象機器の特徴や運転方法や環境に合わせて適切にワッシャーを選定・使用することで、機械の信頼性や寿命を大幅に向上させることができるのです。

改めてワッシャーの役割を見直し、最適な締結を心掛けていきましょう。

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